「カウボーイビバップ」が25周年!
アニメ音楽の歴史に燦然と輝くクールでジャジーなサントラの魅力を再発見しよう!!
天衣無縫にして色彩豊かな音楽
90年代の日本製アニメの金字塔的作品「カウボーイビバップ」(98年)が、TVシリーズの放送から25周年を迎えた今年、ふたたび注目を集めている。「サムライチャンプルー」(2004年)、「坂道のアポロン」(2012年)、「キャロル&チューズデイ」(2019年)などで知られる渡辺信一郎監督の出世作となった本作は、宇宙開拓が進んだ近未来の太陽系を舞台に、通称〈カウボーイ〉と呼ばれる賞金稼ぎを生業とする元マフィアの主人公・スパイクと、元警官の相棒・ジェットたち〈ビバップ号〉一行の活躍を描くSF作品。ハードボイルドを軸にアクションやコメディー要素も盛り込んだ基本1話完結型のヴァラエティーに富んだストーリー、映画や音楽への造詣も深い監督の趣味嗜好が反映されたスタイリッシュな作風が話題となり、日本のみならず海外でも人気を獲得。2001年には完全新作となる劇場作品「カウボーイビバップ 天国の扉」が公開された。
そんな本作において大きな役割を果たしたのが、作曲家・菅野よう子が手掛けた音楽だ。渡辺監督の初監督作品となったOVA「マクロスプラス」(94年)で、初めてアニメ作品の劇伴制作に携わった彼女は、そこでイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団との録音も交えながら、テクノや宗教音楽の要素も採り入れた唯一無二の音楽性を発揮。同作の手応えをふまえ、渡辺監督がふたたび菅野に声をかけてタッグを組んだのが「カウボーイビバップ」になる。菅野は監督から提示された〈ジャズ〉というキーワードや設定資料などを元に、アニメの完成に先行して音楽を制作。レコーディングは日本、NY、パリ、ワルシャワほかで行われ、その結果出来上がったのが、ジャズだけでなく、ブルース、ファンク、ロック、クラブ・ミュージックなどあらゆる方面へと広がりを見せる、天衣無縫にして色彩豊かな音楽だった。渡辺監督は出来上がってきた楽曲を聴いたうえで、絵コンテなどに手を加えることもあったそうで、映像と音楽がお互いを高め合うようなセッションと融合こそが、「カウボーイビバップ」という作品を特別なものにした要因のひとつと言えるだろう。
TVシリーズのために作られた楽曲は、サウンドトラック3作品とミニ・アルバム1作品にまとめられ、アニメのサントラとしては異例のヒットを記録。なかでもサントラ第1弾『COWBOY BEBOP』は、第13回日本ゴールドディスク大賞の〈アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤー〉を受賞した。さらに99年には渡辺監督主導のもと、4ヒーローやルーク・ヴァイバート、イアン・オブライエンら当時のクラブ・シーンの最前線で活躍するアーティストたちが参加したリミックス集『Cowboy Bebop Remixes “Music For Freelance”』がリリース。菅野は映画の音楽も続投し、2001年には同作のシングルとサントラの2タイトルがリリースされた。
25周年の目玉として用意されたのが、それらの音源のアナログ盤化企画。当時のCD作品7タイトルをコンパイルした11枚組仕様のLPボックス『COWBOY BEBOP LP-BOX』と、菅野が各テーマに合わせてみずから選曲・編集した新たなコンピレーション盤3タイトル(詳細は別掲のディスクガイドを参照)が登場した。音源を聴いて改めて感じたのは、25年を経たいまもなお、まったく古びていないどころか、タイムレスな魅力が詰まっているということだ。