優れた詩人とは平凡で退屈な人生の瞬間から劇的な言葉を紡ぎだし、劇的なものへと演出してしまう錬金術師のような存在なのかも知れない。益々艶っぽさが増している魅惑的で蠱惑的な歌声(トム・ウェイツか?と錯覚する瞬間あり)。そんな歌声に彩を添える華やかな3人の女性コーラスの効果も素晴らしい。ブルージーさとエキゾチックさを湛えたサウンド・プロダクションもコーエンの錬金術師ぶりを鮮やかに浮彫りにしており見事だ。キャリア半世紀近くにして13作目。寡作の人、という印象も強いが前作からは二年半ぶりの新作だ。もしかすると今が創造力ピークなのか?(おそるべし)。