タワーレコードは古今東西のあらゆる音楽作品を扱っていますが、実は書籍も多数取り揃えています。そこで音楽家のみなさんが好きな本、影響を受けた本を知りたい!という興味から、連載〈My Favorite Books〉をスタートさせました。毎回、1人の音楽家が設定したテーマと、それにもとづく3冊以上の選書を記事化。〈あの人がこの作家を好きだったんだ〉という発見や、音楽と書籍とのクロスオーバーを楽しんでもらえたら幸いです。第3回に登場するのは関取花さんです。 *Mikiki編集部

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選書によせて

いつからでしょう、読書に理由を求めるようになったのは。大人になってから、気づけば何かを得るために読書をしている自分がいました。私たちが少年少女の頃、読書は目的のない旅でした。本はいつだって新しい扉で、ページをめくれば世界は色を増しました。それだけでよかったんです。あの頃夢中になった少年文庫、今こそ読んでみませんか。

 

今こそ読みたい少年文庫

バラージュ, 徳永康元 『ほんとうの空色』 岩波書店(2001)

母親と二人暮らしのフェルコー少年は、絵を描くのが得意。でも貧しい暮らしをしていたため絵の具がなく、同じクラスのカリに貸してもらうことにしました。ところが空を描こうした時、あい色の絵の具がなくなってしまいます。かわりに彼は青い野花の汁を使うことにしました。するとどうでしょう、その色で塗ったところには太陽が雨が月が浮かんで、ほんとうの空のように輝き出したのです! 絵の具の秘密を分かち合う子供たちの友情、小さな冒険、淡い恋。みずみずしさの中にどこか成長と共にきっと薄れていく儚さも漂う名作です。〈ほんとうの空色〉は、今も私たちのそばにあるのかもしれません。それは例えば、あなたの瞳の中かもしれませんよ。

 

モーリス・ドリュオン, 安東次男 『みどりのゆび』 岩波書店(2002)

とある裕福な家に生まれたチト。美しく心やさしい彼は、どこにでも花を咲かすことのできる特別な〈みどりのゆび〉を持っていました。どこか心配事や寂しさの漂う場所を、チトはその指で次々と彩り明日への希望を宿して行きます。そんなある日、遠くの砂漠で戦争が始まり、チトは自分が裕福である理由を知ります。お父さんの工場では武器を製造していたのです。小さな彼にできることはただひとつ、花を咲かせることでした。詩的な中に真理がきらりと光るこの物語は、戦争に限らず争いやむなしさというものの根源を解決するのに必要なことを教えてくれます。何度読んでもまるで子供の目のように私の心をじっと見つめてくる、忘れられない一冊です。

 

フィリパ・ピアス, 猪熊葉子 『まぼろしの小さい犬』 岩波書店(2020)

ロンドンで暮らすベンは犬を飼うことばかり考えていました。ある時ベンのおじいさんが、今度の誕生日には犬をあげようと言ってくれたからです。しかしベンの元に届いたのは犬が刺繍された一枚の絵でした。それから彼は想像の犬をまぶたの裏に飼い始めました。大胆で勇敢な、まぼろしの小さい犬を。ベンは四六時中犬と一緒でした。あまりにも夢中になり、ある日ベンはとある出来事を起こしてしまいます。現実との対話をせねばいけないタイミングがやってきたのです。不器用に、時に孤独に、心の成長痛を伴いながらも彼なりの方法で少しずつ今を受け入れていくベンの様子はとてもリアルで、ついかつての自分の姿を重ねてしまいます。

 


RELEASE INFORMATION

関取花 『わるくない』 NOKOTTA(2025)

リリース日:2025年5月7日(水)
品番:NKT-10001
価格:2,500円(税込)

TRACKLIST
1. わるくない
2. VRぼく
3. いつかね
4. 空飛ぶリリー
5. 安心したい
6. 二十歳の君よ
7. 会いたくて

 

EVENT INFORMATION
「わるくない」発売記念イベント@タワーレコード渋谷店

2025年5月9日(金)東京・タワーレコード渋谷店 5F イベントスペース
開演:20:00
詳細:https://towershibuya.jp/2025/04/25/212936

 

LIVE INFORMATION
弾き語りツアー「ひとりぼっちもわるくない」

2025年5月24日(土)京都 someno kyoto ※SOLD OUT
2025年5月25日(日)愛知・名古屋 TOKUZO ※SOLD OUT
2025年6月7日(土)香川・高松 SUMUS café
2025年6月8日(日)愛媛・松山 MONK
2025年6月14日(土)福島・郡山 フォーク酒場6575 ※SOLD OUT
2025年6月15日(日)宮城・仙台 カフェモーツァルトアトリエ
2025年6月28日(土)石川・金沢 もっきりや
2025年7月5日(土)北海道・札幌 musica hall café
2025年7月19日(土)広島 Live Juke
2025年7月20日(日)岡山 城下公会堂 in KOTYAE ※SOLD OUT
2025年8月2日(土)兵庫・神戸 グッゲンハイム邸 ※SOLD OUT
2025年8月3日(日)大阪・梅田 Soap opera classics ※SOLD OUT
2025年8月9日(土)福岡・天神大名 ROOMS
2025年8月23日(土)東京・浅草 雷5656会館 ※SOLD OUT
チケット・詳細はこちらから:https://www.sekitorihana.com/news/2038

 


PROFILE: 関取 花
1990年生まれ、神奈川県出身のシンガーソングライター。幼少期はドイツで過ごす。小さな体から発する包み込むような歌声と平易な言葉ながら優しさだけではない歌詞は、デビュー15周年となる現在も唯一無二の存在感を放ち続けている。2017年にリリースした楽曲“もしも僕に”は、その決して綺麗事だけではない歌詞と朴訥としたサウンドが徐々に口コミで広がり、いわゆる〈バズり〉こそないものの現在MVの再生数は870万回を超え、今もなお伸び続けている。2025年2月、所属していたレーベルと事務所を離れ、独立して活動していくことを発表。5月7日、自身のレーベルNOKOTTA RECORDSからニューアルバム『わるくない』をリリース。愛嬌たっぷりの人柄、独特の感性とおしゃべりっぷりからエッセイの執筆やラジオ、テレビ出演など活動は多岐にわたり、音楽以外の場所にもたまに出没する。ちなみに関取花は本名だが、先祖はお相撲さんではないとのこと。