タワーレコードはみなさんご存じのとおり古今東西のあらゆる音楽を扱っていますが、実は書籍も多数取り揃えているんです。そこで、音楽家のみなさんが好きな本、影響を受けた本を知りたい!という興味から、新連載〈My Favorite Books〉をスタートさせました。毎回、1人の音楽家が設定したテーマと、それにもとづく3冊以上の選書を記事化。〈あの人がこの作家を好きだったんだ〉という発見や、音楽と書籍とのクロスオーバーを楽しんでもらえたら幸いです。記念すべき初回には、執筆活動も行うシンガー/ソングライターの見汐麻衣さんが登場。 *Mikiki編集部
大河小説
選書によせて
大河小説を読んでいると至極原始的な、「人間をするということ、生きるということ」の根本が壮大な物語の中に凝縮されており、毎回読み終えることが惜しくなってしまうのは私だけでしょうか。時間と我を忘れ没入した読後の余韻がいつまでも消えることのない大作、お薦めの3冊です。
ミン・ジン・リー、池田真紀子(翻訳)「パチンコ」
四世代にわたる在日コリアン一家の苦闘を描いた大作。生まれ落ちる国や場所、時代はなにひとつ自分で選ぶことはできません。
生まれるということ、死ぬということ。このふたつはこの世で生きる人間に平等に与えられたものですが、世の中には平等なものなど無いに等しいと生きていれば誰でもふと痛感することがあるのではないでしょうか。本作には生きるための選択を繰り返す中で個の尊厳を守ることの尊さや厳しさが通底しており、戦争や移民に対する差別など様々な問題が内包されています。ページを捲るたび、面白さが加速していくので途中で栞を挟む暇がありません。
五木寛之「青春の門」
1969年6月、週刊現代で連載が始まり、1994年4月まで断続的に掲載されていました。2017年に連載が再開されたそうです。福岡県筑豊に生まれた主人公、伊吹信介が少年から青年になり大人になっていく、とても壮大な物語です。信介の波乱に満ちた人生の始まり、まずは信介が小学校時代から東京の大学に進学するまでの「筑豊篇」を読んでみるといいのではと思います。信介の周りにいる大人達は現代ではもう見かけなくなった気質を持った人が多く出てきます。戦前、戦中、戦後を生き抜いた大人達の気性が荒くも懐の深い人間味のある立ち振る舞いや言動は現代を生きる若い世代からはどう見えて、どう感じるのでしょうか。当時の時代の空気、生きている人間の性根がよくわかる一冊でもあるのではないかと思います。
吉田修一「国宝」(上:青春編)(下:花道編)朝日新聞出版
2017年元旦から2018年5月まで朝日新聞で連載されていた本作。極道の家に生まれた喜久雄、梨園の家元で生まれ育った俊介。長崎〜大阪、高度成長期後の東京を舞台にふたつの才能、2人の人間が歌舞伎という世界、役者という生き方を通し、人生の辛酸も甘美も舐めながら芸を極めていくその頂きには何があるのか。本作を読みながら徐々に激しくなる慟哭を自身の生(なま)の人生で味わったことがあっただろうかと真剣に考えていました。ものごとの本質には常に死ぬ(絶える)ことが組み込まれていることを本能で理解しているからこそ本来人は烈火の如く生きる術を、エネルギーを秘めており、自分という人間をまっとうする為に身を費やし極めることができるものを見つけ、継続することが可能な人間には人生の何処かで〈咲き時〉が必ず訪れるのだと思います。
LIVE INFORMATION
2024年10月26日(土)東京・神保町 試聴室
開場/開演:19:00/19:30
料金:3,800円(別途1ドリンク)
出演:Mai Mishio with Goodfellas/motoki tanaka (band set)
予約:http://shicho.org/1_241026/
BOOK INFORMATION
⾒汐⿇⾐エッセイ集「もう⼀度猫と暮らしたい」
価格:2,000円(税込)
仕様︓四六判変形上製本192ページ
デザイン︓横⼭雄
編集︓花井優太(Source McCartney)
発売元:Lemon House Inc.
詳細:https://lemonhouse.official.ec/items/74409249
暮らしの中のなんの変哲もない⽇々のことや、台所にて思い耽ることや、家族のこと。偶然出会った名前も知らない⼈たちとの会話や⽇々の些事……。彼⼥が丁寧に繋ぐ⾔葉によってリズムが⽣まれ、物語が紡ぎ出された35篇のエッセイを収録。推薦⽂を⼩泉今⽇⼦さん、巻末にノンフィクションライター橋本倫史⽒による寄稿エッセイも収録。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2023年7月26日
価格:1,870円(税込)
品番:HR7S282
TRACKLIST
SIDE A:夏の顔たち The Faces Of Summer
SIDE B:夏の顔たち The Faces Of Summer (instrumental)
メンバー:見汐麻衣(ボーカル/エレキギター/コーラス)、池部幸太a.k.a墓場戯太郎(ベース)、坂口光央(キーボード/シンセサイザー)、光永渉(ドラム/ボンゴ他)
リリース日:2023年9月27日
価格:1,870円(税込)
品番:HR7S284
TRACKLIST
SIDE A:短い手紙 Short Letter
SIDE B:短い手紙 Short Letter (instrumental)
メンバー:見汐麻衣(ボーカル/エレキギター/コーラス)、池部幸太a.k.a墓場戯太郎(ベース)、坂口光央(ピアノ/シンセサイザー/オルガン)、光永渉(ドラム他)
リリース日:2023年11月29日
価格:1,870円(税込)
品番:LHEP004
TRACKLIST
SIDE A:無意味な電話 Pointless Phone Calls
SIDE B:無意味な電話 Pointless Phone Calls (instrumental)
メンバー:見汐麻衣(ボーカル/エレキギター/コーラス)、池部幸太a.k.a墓場戯太郎(ベース)、坂口光央(キーボード/シンセサイザー)、光永渉(ドラム他)
PROFILE: 見汐麻衣
シンガー/ソングライター。埋火(うずみび)のボーカル、ギタリストとして2001年より活動を開始。2014年に解散後、同年より、石原洋プロデュースによるソロプロジェクト、MANNERSを始動。その他ミュージシャンのプロジェクトに参加する一方、CMナレーションや楽曲提供、エッセイ・コラム等の執筆なども行っている。2023年5月、初のエッセイ集「もう一度 猫と暮らしたい」(Lemon House Inc.)を発売。同年3枚の7epを発売。Mai Mishio with Goodfellasとしても活動している。
HP:https://mishiomai.tumblr.com/
X(旧Twitter):https://twitter.com/mishio_mai
Instagram:https://www.instagram.com/mai_mishio/
note:https://note.com/19790821/
shop:https://lemonhouse.official.ec/