大人っぽくも甘酸っぱい、カクテルみたいなポップソングを召し上がれ。フレッシュな10代トリオが才気溢れる制作陣と練り上げた『Freedom』は、進歩の止まらぬバンドの軌跡を鮮やかに記録している!!!
冒険みたいなワクワク感
どこか初々しいヴィジュアルからも伝わる通り、弱冠19歳(ドラムスのこたは5月で20歳)のメンバーから成るギターレス・バンドのココラシカが、メジャー初のミニ・アルバム『Freedom』を完成させた。こうきのオリジナル曲を形にするべく誕生したこのバンドの原点は、軽音楽部で有名な都立鷺宮高校で3人が出会ったところまで遡る。
「僕の両親はどちらも音楽をやっていて、母はヴァイオリンの演奏をしているし、父も以前はピアニスト兼ヴォーカリストでバンドをやってて、それがブラック・ミュージックをルーツにしたポップス――いまの僕と近いサウンドだったり。自発的に音楽を聴きはじめたのは中学の頃で、藤井 風に衝撃を受けてジャズとかいろんな音楽を掘り下げていったんです。自分の曲を演奏するバンドを組みたくて鷺宮高校への入学を決めました」(こうき、ヴォーカル/キーボード)。
「私の母親も音楽好きで、幼少の頃から韻シストやiriさんとかのライヴに連れていってもらってました。ベースは小学校6年生から始めて」(らな、ベース)。
「自分もバンドがやりたくて軽音楽部のある高校を調べたら、鷺宮高校が近所にあった。聴いていた音楽はロックが多かったですけどボカロや歌い手さんにもハマってて、メガテラ・ゼロさんとかMr.FanTastiCは小中学校とずっと好きだったし、星野源さんとかも聴いてたり。軽音に入ったところ、ドラムに回された結果、こうきが声を掛けてくれて、一緒にやってみたいなって」(こた)。
カクテルのニコラシカをもじったバンド名を冠した3人は高校に通いながらライヴを重ね、さまざまなコンテストや大会にも積極的に参加。そこでの評価が現時点で11万回再生を超える“恋よ、踊りだせ”のリリースに結実し、高校卒業後にバンド活動を本格化していまに至るわけだが、インディーズ時代に3人のプロデューサーと制作した配信曲も含む本作は、いわば〈ネオ・シティ・ポップ〉を掲げて真摯に音楽を送り出してきた彼らの成長の記録だ。そのなかで最初に発表されたのは横山裕章(agehasprings)との“最後の花火”。甘酸っぱい2人の物語を演出するユーモラスなシンセの導入など、バンドにとっての〈初めて〉が多く散りばめられている。
「この曲、実はアナログ・シンセしか使ってないんですよ。あと、スタジオで試してみたもののほとんどが入ってる。2番での花火の打ち上がる音もその場で音を作っていったもので、冒険みたいなワクワク感がありました」(こうき)。
そして、3人が次に組んだのはSEKAI NO OWARIやOffcial髭男dismの楽曲で知られる保本真吾。ゆるファンクなサマー・ソング“溶けないで”と、ドラマ主題歌にもなったピアノ・バラード“花瓶”を共に作り上げている。
「“溶けないで”は山下達郎さんの“SPARKLE”っぽい感じを鍵盤でやりたいって話を保本さんにしたら、〈ココラシカにしかできないシティ・ポップを作ろうよ〉と言ってもらって。フュージョンみたいな感じもあって、グルーヴィーでもあるし、そこに歌謡曲的なメロディーが乗ってくるという、僕らに無かったものを提供してもらえた感じがありますね。ダフト・パンクの“One More Time”と同じヴォコーダーを使うとかおもしろいことをたくさんしたがる方で、すごく勉強になりました。“花瓶”はドラムだけ聴くとヒップホップみたいにタイトな音なんですけど、だからこそ歌に集中できる。〈こういうバラードの作り方もあるんだ〉と知れた曲になりました」(こうき)。
続いて迎えたプロデューサーは小西遼(CRCK/LCKS)。共同作業で管弦をふんだんに使用した麗しいミディアム“Q”が完成した。
「“Q”は小西さんと制作できる日が来たらやりたいって温めていた曲です。〈多様性を受け入れられない人だっているんじゃないか〉という考えから始まった曲なんですけど、小西さんと踏み入ったところまで話をして、そのうえでどう解釈するかお任せししたら、こんなに幻想的なアレンジにしてくださいました」(こうき)。