耳に美味しいファースト・アルバムがいよいよ登場!

 例えばリナ・サワヤマからメイ・シモネスに至るまで日本の血を引くアーティストが海外から登場してくる例は、さまざまなフィールドにおいて近年ますます増加しているような気がする。そのこと自体に過剰な親しみを覚える必要はないとしても、文化的なバックグラウンドが音楽性に影響を及ぼすことを考えれば、さまざまな要素がユニークに配合されたミクスチャーな音楽が生まれてくる可能性のおもしろさというものは確実に存在する。ここで紹介するミソ・エクストラは、英国人の父と日本人の母の間に香港で生まれ、日本で暮らした時期も経て現在はロンドンを拠点としている日系英国人のシンガー/プロデューサーだ。名前の由来は味噌……ではなく、差別的な発言を投げられた際にアジア人はおとなしいという固定観念を覆すべく〈Me So Extra(私をやりすぎにする)〉というフレーズから生まれたのだそうだ。

MISO EXTRA 『Earcandy』 Transgressive/BIG NOTHING(2025)

 日本語と英語を併用したラップで注目された彼女はトランスグレッシヴと契約し、このたびフル・アルバム『Earcandy』をリリースしたばかりだ。共同プロデュースを務めたのはエンジニアのリッキー・ダミアン(エズラ・コレクティヴ、ジョルジャ・スミス、サンファ)で、メトロノミーやDJボーリング、ミシェルらもフィーチャー。NewJeansとCHAIにインスパイアされたというハイパーポップの“POP”を筆頭に、K-PopやUKガラージ、R&B、エレクトロ、ニューウェイヴなどさまざまな要素が出入りしたキャッチーなトラックの楽しさが用意されている。一度耳にしたら忘れられないであろうこの名前と楽曲にここから注目しておきたい。

ミソ・エクストラの日本編集盤『MSG + Great Taste』(BIG NOTHING)