2023年に開催された〈KYOTOPHONIE〉でのライヴはまさに夢心地で、未だ思い出してはその余韻に浸っている。本作は何とその来日時にホテルの一室で録音されたそうで、来日だけでも奇跡なのに、まさか日本で新作が誕生してしまうとは! マンディンカ語で〈部屋の中で〉と名付けられた本作は、ンゴニやパーカッション、ジュリア・サールのコーラスなどが控えめに加わるものの、サリフにとって初のギター弾き語り作品と言える。年月を経て黄金から深い飴色となった歌声、ギターから爪弾かれる柔らかく素朴な煌めきをまとった音色。このシンプルな演奏こそがサリフ・ケイタという音楽家の本質なのではないだろうか。