北山宏光の約1年ぶりの新作にしてセカンドアルバム『波紋-HAMON-』は、管楽器が入った華やかかつ重厚なアンサンブルと一体感のあるコーラス、お経のようなラップ、デスボイス、口笛といったさまざまな要素がミックスされたリードトラック“波紋-HAMON-”をはじめ、アグレッシブな楽曲が並ぶ。北山はほとんどの楽曲の作詞に加え、作曲とアレンジのディレクションも担当。一音一音にこだわりが感じられる力作だ。“波紋-HAMON-”では誰かの正論に惑わされずに自分の意志や感性を大切にし、炎を燃やし続けるという想いが描かれているが、アルバムを通して随所に聴き手に気付きを促すようなメッセージが宿っている。そんなアルバム『波紋-HAMON-』のこと、ものづくりへの想い、活動のビジョンなど、さまざまなことを北山に聞いた。

北山宏光 『波紋-HAMON-』 TOBE MUSIC(2025)

 

ロックを縦軸に、最初と最後が円環をなすアルバム

――昨年リリースしたファーストアルバムの『ZOO』は、まさに動物園のような賑やかで多彩な作品になっていましたが、『波紋-HAMON-』は『ZOO』よりフォーカスを絞りつつ、さらに攻めている印象がありました。どんなアルバムを目指したのでしょう?

「『ZOO』はリリースの後のツアーでやりたい演出があって、それを軸に入れる楽曲を選んでいったんですよね。今回は、演出のことは多少考えていますが、ロックを縦軸に据えた上で曲を選ぶことを大事にしました」

――1曲目の“Drippin’ Overture”でしずくが垂れるような音像が展開された後、タイトルトラックの“波紋-HAMON-”に突入する流れからしてコンセプチュアルですよね。

「元々違う曲から始まる予定だったのですが、最後の13曲目に入ってる“Drippin’”でアルバムが終わる構想がまずあって、それに付随して絞り出したエネルギーの最後の一滴みたいなイメージで“Drippin’”の音を使い、“Drippin’ Overture”を作って1曲目にしました。

宇宙人が中央に向かって何か呪文を言っていて、そこからいろんなものが生まれ、それが抽出されてしずくになって落ちていくというイメージが僕の中にあったのですが、それを口頭で説明するのがすごく難しくて。〈ポチャンっていうしずくじゃなくて、スライムみたいなところにドボンって落ちたような音なんです〉とか言っていました(笑)。波紋が広がっていくようなイメージですね。あと頭の中でお経みたいな声が浮かんだので、それも入れて」

――確かにお経のような声が聞こえます。

「そうそう。神秘的なんだけど少し怖い精神世界のイメージがありましたね」