
アナログ・サウンドで描く、スピリチュアルな音楽的世界観
ニューヨークのジャズ・シーンで独自の存在感を放っているクリス・チーク(テナー・サックス/ソプラノ・サックス)のニュー・アルバムは、ビル・フリゼール(ギター)、トニー・シェール(ベース)、ルディ・ロイストン(ドラムス)のフリゼール・トリオとの共演で、ディープでスピリチュアルな音世界を、探求している。

アルバム・タイトルの『Keepers Of The Eastern Door』は、かつてヨーロッパからの入植者が、北米大陸を西へと移動する中で、ネイティヴ・アメリカンのイロコイ連邦の最東端に住み、侵略者からの防衛役を担ったモホーク族を、指している。チークは、アルバム全体を通して現在へと続く「自然と調和して生きようとする人々と、自然を搾取の対象とみなす人々との対立」を、描いている。「自然の中で過ごしたセントルイスでの少年時代と、ボストンやニューヨークでの都市での生活を経て、自然と、高度に工業化された社会の断絶を感じるようになった。このアルバム・タイトルを、物質主義を超え、環境を尊重するような伝統的価値観を守ろうとする人々の、生き方のメタファーとして考えている」と、チークは語る。この暖めていたアイディアを、唯一無二のオルガニックなサウンドを誇るビル・フリゼールとともに、音楽へと昇華させた。
ラインナップには、オリジナルと、ミュージカル曲のカヴァー、レノン/マッカートニー、現代音楽のメシアン、バロックのヘンリー・パーセルと、多彩なカヴァーが並ぶが、チークのサックスと、ブリゼールのギター・サウンドの対比と調和を核に、一つの世界観に統一されている。
そのサウンドを捉えるために、レーベルのアナログ・トーン・ファクトリーは、1/2のアナログ・テープに76cm/秒で2chダイレクト録音を行い、レコーディングのセッションの空気感、微妙なサウンドのニュアンスの変化を、余すところなく捉え、アナログ・マスタリングのLP、192kHz/24bitのハイレゾ・フォーマットでもリリースする。録音のテクニカル・サイドでも、伝統と革新の融和を、具現化している。