ヘッカーの凛とした歌心・構築性に魅了された。ヘルムヘンの安定した詩情あるピアニズムとの方向性も一致したショスタコーヴィチ、シュニトケ、ストラヴィンスキー、ヴァインベルク、プロコフィエフ、ラフマニノフという旧ソビエト体制に翻弄された作曲家のチェロ・ソナタ(ストラヴィンスキーはイタリア組曲のチェロ版)を存分に味わえる。前衛、古典、皮肉、絶望が交錯するそれぞれの作品を客観視して組み立てる。両者のチェロとピアノ掛け合いは例えばショスタコーヴィチのラルゴ楽章で緊迫した空気と繊細さに優れている。ストラヴィンスキーとプロコフィエフの歯切れが良い音楽も聴きどころだ。