他者に会い、他者と考える場を求めて
実験的芸術表現と社会の新しい関係を探り続けてきた〈KYOTO EXPERIMENT〉。16回目の今年は10月4日~26日に開催されるが、そのキーワードとして掲げられたのは〈松茸や知らぬ木の葉のへばりつく〉という松尾芭蕉の俳句である。松茸に松ではない知らない木の葉がくっついている様を詠んだこの句からは、なるほど〈見知らぬものの違和感や他者との差異は、ともすれば世界を引き裂く分断の理由となるが、こうした状況にある現代だからこそ、実験的な舞台芸術を通して違和感やノイズを肯定的に捉え、我々を覆う分断へのささやかな抵抗としたい〉という主催者たちの強い思いが伝わってくる。他者への憎しみの言葉が氾濫する今、まさにジャスト・ミートだ。
関西地域を表現者の視点からリサーチし今後の創作基盤につなげていくためのプログラム〈Kansai Studies〉、実験的な舞台芸術の公演を楽しむ〈Shows〉、ワークショップやトークによる〈Super Knowledge for the Future [SKF]〉など今回のプログラムも超盛りだくさんだが、ここでは〈Shows〉から音楽ライヴ〈Punk and Beyond〉を紹介しておく。
Marjinal(マージナル)は知る人ぞ知るロック大国インドネシアのジャカルタで約30年前に結成されたパンク・バンドで、急速な経済成長の歪が生み出す貧困や政治的抑圧などに対し果敢にコミットする社会活動家として世界的に注目されてきた。2014年には、日本人女性監督によるドキュメンタリー映画も公開されている。
近年アジア諸国では、パンクやハードコアの女性ミュージシャンが増えているが、2012年に結成されたシンガポールのRadigals(ラディガルズ)もその注目株の一つだ。リッチで平和なあの国のイメージからは想像できない超ハードコアなサウンドに乗せて、女性解放や自己肯定を歌い続けている。
そして日本からは、永山愛樹(ヴォーカル/ギター)と竹舞(ヴォーカル/韓太鼓)の男女デュオ(+α)ALKDO/アルコド。愛知県豊田市を拠点とする彼らは、パンクと民謡を合体させた汎アジア的コレクティヴ、タートルアイランドの中心メンバーであり、2012年から続いてきた闇鍋型無料音楽フェス〈橋の下世界音楽祭〉の首謀者でもある。そのアナーキーかつ土俗的表現の根底に一貫して流れているのは、健全なコミュニケイションの場の創造に対する希望だ。これらのライヴは、他者に会い、他者と考える場にほかならない。
LIVE INFORMATION
KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2025
2025年10月4日(土)〜2025年10月26日(日)ロームシアター京都、京都芸術センター、CLUB METRO ほか
Punk and Beyond
2025年10月16日(木)、18日(土)19日(日)CLUB METRO
[上映会&トーク]
2025年10月16日(木)17:00〜21:30
[ライブパフォーマンス]
2025年10月18日(土)16:00〜19:00(予定)
2025年10月19日(日)18:00〜21:00(予定)
■ライブ出演者(10月18日、19日共通)
ALKDO/アルコド[豊田(日本)]
MARJINAL[ジャカルタ(インドネシア)]
Radigals[シンガポール]