
ジャズ・イリゼの音楽をともに奏でる心強い4人のメンバー
――今回も尺八の渡辺淳さんが参加されていますが、演奏によって尺八がフルートのように聴こえます。これは、意図的にそういう吹き方をされているんでしょうか。
渡辺「尺八は、吹き方によってフルートに似せる場合もあります。一方で、昔から伝わっている古典では竹の音を出す、音味(ねあじ)というものが求められます。今の尺八奏者は、両方出来ないと、なかなか活動が難しいかと思います。
もちろん江戸時代から伝わっている古典、純粋な邦楽だけを演奏している方もいらっしゃいます。渡辺淳の場合は、洋楽器と共演することも多く、五線譜で曲が演奏出来たり、コードを勉強して理解しているので、洋楽器とのコラボが出来るのだと思います」
――では、ここでレコーディングに参加したメンバーをご紹介いただけますか。
伊佐津「ベースの中島仁さんは安曇野の方で、普段はご自身のトリオで活動しながら他のユニットとの共演にも積極的なので、私たちジャズ・イリゼもいろいろとご一緒させてもらっています。
ドラムの河村亮さんは、サックスの太田剣さんのバンドで活動されている方で、剣さんにご紹介いただきました」
――その太田剣さんとのお付き合いは? メジャーデビューもされているサックスプレイヤーですが。
伊佐津「ここ13年くらい私は、〈信州ジャズ〉というコンセプトのユニットで活動しているのですが、剣さんは途中からメンバーになっていただきました。その流れでジャズ・イリゼでもお世話になっています。
実は、クレジットなど表には出ていませんが、演奏のみならず、隠れエグゼクティブプロデューサー的な存在でして、アルバムジャケットのデザイン、動画制作なども手懸けてもらっています。曲順も私たちだけだと迷って、なかなか決めらないので、それも剣さんに相談しましたし、ミックスダウンなど曲の仕上がりにもいろいろご提案をいただいています」
伝えたい感動があるから演奏する
――そうだったんですね。ゲストプレイヤーかと思っていました。ところで、今回のサブタイトルに“スカボロー・フェア”を選んだのはどういう理由からですか?
伊佐津「ここも迷いました。他に“ピンク・パンサーのテーマ”や『パイレーツ・オブ・カリビアン』の劇中歌も候補になりましたが、“スカボロー・フェア”は伝統的な曲ですし、ジャズ・イリゼに一番合うということで決めました」
渡辺「私の若い頃、サイモンとガーファンクルの歌、特にあのハモリは一回聴いたら忘れられないものでした。このCDを聴く方もおそらく同世代が多いと思うので、そういう印象を持っているんじゃないかなと……」
――完成されたアルバムは聴かれましたか? そのうえでどんなところに注目して欲しいと思われますか。
渡辺「バリエーションがあるので、そこも楽しんでいただけるかなと思います。箏に関しては、“ピンク・パンサーのテーマ”の弾き方におもしろいところがあるのと、曲の後半でサックスと演奏が重なっているのですが、そのあたりを注目していただけると嬉しいです。そして、“風のささやき”での渡辺淳の尺八もすごくいい感じになっていると思います」
――“ピンク・パンサーのテーマ”の演奏をもう少し具体的に教えていただけますか。
渡辺「箏は左手で絃を押したり離したりすることで半音あげる楽器です。その手法を使って五線譜でタタン、タタンとなっているところをツーツーツーと弾くと、雰囲気がすごく変わるんですが、こういう演奏法は洋楽器にはないんですね。
こんなサウンドにならないかなといろいろ試すのですが、そこに洋楽器が加わると、また別の響きに包まれることがあります。箏は、余韻が少ない楽器で、弾くと数秒で音が消えてしまうんですが、サックスが入ってくると、その音をもっと盛り上げてくれるので、弾いていて心地好いです。そういうことからも洋楽器とのコラボはすごく気に入っています」
――前作でのインタビューでもグリッサンド奏法を駆使することなく、メロディーを丁寧に弾きたいと言われていましたが、今回はさらにメロディーを弾く箏の音が際立っていますよね。
渡辺「箏は、タッチによって音が強くも弱くもなるんですが、弱い音であっても〈通る音〉を目指しています。それによって心に残る音が生まれると思うので。まだまだ未完成ですけれども、生涯かけて、メロディーラインの音色、その節がどのように人に伝わるかを追求していきたいと思っています」
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
伊佐津「ジャズ・イリゼとしては4作目になります。だいぶこのユニットの音楽の世界観が集約されてきたというか、理想とする音楽のカタチが出来てきたかなという感想を持っています。
ただ弾くのではなく、伝えたいものがあるから演奏する。音楽で感動を伝えられたら最高だという思いでアルバムを作りました。それが少しでもみなさんに届いたら幸せだと思っています」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2025年10月6日(月)
品番:JZIR-004
価格:3,000円(税込)
TRACKLIST
1. スカボロー・フェア
2. ノクターン
3. 彼こそが海賊
4. ロミオとジュリエット
5. ピンク・パンサーのテーマ
6. シング・シング・シング
7. エデンの東
8. 風のささやき
9. 踊り明かそう
10. 追憶
■Jazz Irise
伊佐津さゆり/Piano
渡辺邦子/箏 -Koto-
■support musicians
中島 仁/Bass
河村 亮/Drums
渡辺 淳/尺八 -Shakuhachi-
太田 剣/Saxophones
2025年 松本/横浜録音
LIVE INFORMATION
“年の瀬の“
ジャズ・イリゼ特別演奏会2025 〜【和楽器 × 洋楽器 】丁々発止のコラボレーション〜


2025年12月21日(日)長野・松本 信毎メディアガーデン 1Fホール
出演:渡辺邦子(箏)、伊佐津さゆり(ピアノ・編曲)、渡辺淳(尺八)、太田剣(サックス)、中島仁(ベース)、河村亮(ドラムス)
演奏曲:アランフェス協奏曲/ゴリウォーグのケークウォーク/民謡の旅メドレー“ソーラン節”“五木の子守唄” ほか
ご予約・お問い合わせ:ジャズ・イリゼ事務局 090-8871-5419
チケット取り扱い:(窓口)信毎メディアガーデンまちなか情報局 0263-32-1150(平日9:00~18:30)/(WEB)信毎メディアガーデンWebショップ/(店舗)琴光堂和楽器店 0263-32-3255
主催:信毎メディアガーデン
■信毎メディアガーデン
住所:長野県松本市中央2-20-2
TEL:0263-32-1150
オフィシャルサイト:https://www.shinmai-mediagarden.jp/
PROFILE: 渡辺邦子
松本市出身/在住。生田流正派邦楽会大師範山口雅将へ入門・師事。正音楽院第8期卒業。1994年リレハンメル冬季オリンピックでの演奏はか、海外公演も多数、正派音楽院卒業生による〈箏カプリース〉での活動でも知られる。和楽器と洋楽器との融合など多彩な活動を続けている。
PROFILE: 伊佐津さゆり
安曇野市出身/在住。武蔵野総音楽大学器楽学科ピアノ専攻卒業。クラシックは北川子、ジャズは古川初穂に師事。2012年、デビューCD『Field』をリリース。信州長野の風景を描く音楽〈伝州ジャズ〉のCD諸作も好評を博している。
PROFILE: 渡辺 淳
松本市出身、19歳より尺八を宮田八朗に師事。2000年、第3回尺八新人王決定戦優勝。NHK邦楽橋能者育成会47期修了。古典から代邦楽、洋楽器とのアンサンブルで尺八の可能性を多岐にわたって追求している。ピアニスト金益研二とのユニット〈うみがめ〉主宰。
PROFILE: 太田 剣
早稲田大学でロシア文学を専攻する傍らジャズを習得し、国内ジャズシーンで活躍。2006年にユニバーサルよりデビューCD『Swingroove』を発表。ジャズ以外にも矢沢永吉、中村あゆみ等、ロック・ポップスのサポートなどジャンルを問わず幅広く活動している。
PROFILE: 中島 仁
安曇野市出身。コントラバスを西嶋徹、安ヵ川大樹に師事し、自身のグループでヨーロッパ系ピアノトリオサウンドを追求している。2018年リリースの第1作『Pioggia』は日本プロ音楽録音質の優秀賞を受賞。第2作『Mirror of the Mind』を2024年にリリース。
PROFILE: 河村 亮
岐阜大学教育学部音楽科で器楽奏法と音楽理論を学び、和泉正憲に打楽器を、黒田和真にドラムを開事。グレース・マーヤ、後藤浩二、紗理、高木里代子、noon、M.S.T.、牧野竜太郎、太田剣らのライブやレコーディングに参加。ジャズやポップスなどその活動は多岐にわたっている。