ピアニストで作曲家の伊佐津さゆり、ジャズ・イリゼの活動でも知られている彼女を中心に、長野県内外で活動してきたユニット・信州ジャズ。2012年の1stアルバム『Field』から始まり、これまでに4タイトルのアルバムを発表していて、活動休止期間を挟んで、7年ぶりとなる新作『FROM HERE』を2026年4月11日(土)にリリースする。
今回から大幅にメンバーが交代して、伊佐津さゆり(ピアノ)、平石カツミ(ベース)、坂上領(フルート)、帆足彩(バイオリン)の4人編成になっている。あれドラムがいないぞ、という興味深い編成だ。しかも、このうちの坂上領と帆足彩は、並行してチャランガぽよぽよというユニットでも活動している。そんな信州ジャズにインタビューした。参加したのは伊佐津さゆり、坂上領、帆足彩の3人になる。

バイオリンを加え、サウンドも大きく変えた新たなチャレンジ
――前作『山岳幻想曲』から約7年ぶりの新作『FROM HERE』ですが、この間にメンバーが現在の4人に変わりましたよね。この編成に至った経緯からお話しいただけますか。
伊佐津さゆり「2019年秋以降、活動を休止していたのですが、どこかのタイミングで再開させたいと思っていて、坂上さん、彩さんとやりとりするなかで、〈是非やりましょう〉という返事をもらったのがきっかけになりました」
坂上領「松本でのイベントのお話をいただいて、久しぶりにさゆりさんの曲を僕らで演ってみたら、これってやっぱり信州ジャズじゃない!?という感じでした」
伊佐津「それが2年前頃で、このまま復活させたいってワクワクしました。その時のメンバーがこの4人。ベースの平石カツミさんは、2014年のアルバム『Gift』から、フルートの坂上領さんは、結成メンバーだったんですが、一度脱退されて復帰を。バイオリンの帆足彩さんは、坂上さんとチャランガぽよぽよというユニットで25年一緒のメンバーで、今回新たに参加することになりました」
――ドラムがいない編成ですよね。
伊佐津「前作まではプロデューサーを兼ねていたドラムの人がいたんですけれど……」
坂上「さゆりさんから相談を受けて、新しくやるなら方向転換というか。そもそもトランペットやサックスのようないわゆるジャズなサウンドではなく、フルートという独自のサウンドだったので、今回は弦楽器を入れて室内楽っぽい要素を加えたら、サウンドが大きく変わるだろう。ピアニストの負担が増えるけれど、新しいチャレンジとしていいんじゃないかって。それで一番信頼しているバイオリニストの帆足さんに声を掛けたんです」
4人の役割が自由に入れ替わる理想的なアンサンブル
――この4人で演奏した時の感触は、いかがでしたか?
伊佐津「まず、私のイメージする〈これぞ信州ジャズ!〉という坂上領さんのフルートに感動し、〈そうそう、これこそ信州ジャズだった!〉という平石カツミさんのベースに心が躍り、そして、色彩豊かな帆足彩さんのバイオリンに新しい信州ジャズを感じ、胸が高鳴りました。特に、坂上さんのフルートの音色に信州の風景を重ねて聴いていた初期の信州ジャズを思い出し、再びこうして奏でてもらえることになったのが夢のようでした。感慨深いです。
今回編成が変わり、音楽的にドラムに任せていたこともピアノが担わなくてはいけないので、とても勉強になります。ドラムなしでもこんな音楽が出来るんだなって。曲によってはオーケストラのような迫力もあって、このメンバーで本当に良かったと思っています」
坂上「初期のレパートリーもどんどんリアレンジしていますし、さゆりさんが次々に書いてくる新曲の手応えが最高なので、この編成の可能性を感じています。アレンジは、僕がたたき台となる原案を考えるのですが、ドラムのリズムの要素をみんなでローテーションで出来るようになったらおもしろい。全員が並走しているような感じのアンサンブルが出来たらいいなと思っています」
帆足彩「バイオリンもメロディを弾いたあと、バッキングでリズムを刻んだり。その試行錯誤もおもしろいし、こういう作業もアンサンブルも大好きなので、喜びを感じながら演奏しています」
坂上「サッカーで喩えると、フルートやバイオリンはフォワードの点取り屋で、その後方でリズム隊が守っているとなりがちなところ、なんならフルートの僕もキーパーをやります。ベースの平石さんも前線に上がって点を取りに行くし、全員のフォーメーションがこんな風に自由にローテーションするアンサンブルって理想的かなと思っています」