年末年始はライブシーンが熱気を帯びる季節である。ビルボードライブも今年の年末から来年始めにかけて、世界的なアーティストたちの公演が目白押しだ。ヒップホップからブルース、ニューウェイヴまで、多彩なジャンルのアーティストが来日し、音楽ファンを熱く楽しませてくれるだろう。ここでは、そのなかでも特に注目すべき3組の来日公演を紹介したい。


 

アレステッド・ディベロップメント

アレステッド・ディベロップメントが新作を引っ提げて来日

まず今年の年末に90年代オルタナヒップホップを象徴するグループ、アレステッド・ディベロップメントがビルボードライブに登場する。2025年12月26日(金)に横浜、29日(月)に大阪、30日(火)と31日(水)に東京で公演を行う予定だ。

90年代ヒップホップシーンにおける金字塔として今も聴き継がれるデビュー盤『3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of...』(1992年)に触れずして、彼らを語ることはできない。米ビルボードのR&B/ヒップホップチャートで首位を獲得したアンセム“Tennessee”のほか、“People Everyday”“Mr. Wendal”といった強力なヒットチューンを収録した同作を契機に、彼らは1993年のグラミー賞でヒップホップアーティストとして初めて最優秀新人賞を受賞する。

アレステッド・ディベロップメントは、当時全盛だった過激なギャングスタラップとは一線を画し、前向きで平和的なメッセージとゴスペルやソウル由来の温かなサウンドで人気を博した。アフリカンアメリカンの歴史に根差したスピリチュアルなメッセージを掲げ、ラップと歌、ダンスと生バンド演奏が渾然一体となる彼らのライブは、観る者すべてに唯一無二の高揚感をもたらすだろう。

ちなみに、彼らは今年7月に『Adult Contemporary Hip Hop』と題した新作をリリースしたばかり。リード曲であるブーンバップ調の“Pack It Out”を筆頭に、最新アルバムからの楽曲も披露してくれるにちがいない。

 

ボビー・ラッシュ

ブルース界のレジェンド、ボビー・ラッシュが14年ぶりに日本へ

2026年を迎えて早々には、ブルース界の生ける伝説ボビー・ラッシュがビルボードライブ東京のステージに立つ。1月5日(月)、6日(火)の日程で2014年のフジロック以来、約14年ぶりとなる来日公演が実現する。

御年91歳にしてなお現役であり続けるボビーは、グラミー賞に3度も輝いた稀代のブルースマンであり、ブルースだけでなくR&Bの殿堂入りも果たしたまさに偉人と呼べる存在だ。

その圧倒的な存在感とユーモア溢れるパフォーマンスは年齢を微塵も感じさせず、70年以上におよぶキャリアのなかで築き上げたエンターテインメント性で観客の心を掴んで離さない。シカゴ仕込みの濃厚で泥臭いブルースに、観客は存分に酔いしれるはずだ。

代表曲の“Chicken Heads”をはじめ、83歳のときにグラミーを初受賞したアルバム『Porcupine Meat』(2016年)のナンバーなど聴きたい曲は山ほどあるが、直近のセットリストをチェックするに、今年発表したケニー・ウェイン・シェパードとの共演盤『Young Fashioned Ways』の楽曲がライブの軸になると思われる。来日時には92歳を迎えているボビーの混じりっ気のないブルース魂を、ぜひ直接肌で感じてもらいたい。