オーガニックなサウンドとハイブリッドな音楽性でヒップホップのイメージを更新してきたパイオニア、アレステッド・ディヴェロップメントがBillboard Liveに登場。12月28日(金)に大阪公演が、30日(日)および31日(月)に東京公演が行われ、31日にはカウントダウン・ショーも開催。今年最後の注目公演となっています。

ここでアレステッド・ディヴェロップメントの歩みを簡単に振り返っておきましょう。彼らの出身地はアメリカ、ジョージア州アトランタ。結成は88年。いまやトラップの聖地と化している同地ですが、やはりNYが中心だった当時、アトランタはヒップホップ不毛の土地だったとか?

そんな土地から飛び出してきたアレステッド・ディヴェロップメントは、92年のデビュー・アルバム『3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of...』をスマッシュヒットさせます。いまでも90年代を代表する名盤のひとつに数えられていますが、ここ日本でも邦題〈テネシー(遠い記憶)〉として多くのリスナーの関心を集めました(国内盤にはスパイク・リー監督の映画『マルコムX』に提供した“Revolution”などを収録したボーナス・ディスクが付いていました)。

92年作『3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of...』収録曲“Tennesse”のライヴ映像
 

ギャングスタ・ラップが幅を利かせつつあったシーンにおいて、ア・トライブ・コールド・クエストらネイティヴ・タンとも共振するような彼らのアフロセントリズム思想、そして独自のスピリチュアリズムは異色で、ある種のオルタナティヴであったと言えるでしょう。バンドの中心人物であるラッパー、スピーチことトッド・トーマスのほか、スピリチュアルな面でバンドを支えるババ・オジェ(残念ながら今年10月に逝去)という古老のメンバーがいるなど、とにかくユニークなグループです。

デ・ラ・ソウルのように親しみやすく、ひねりが効きつつもアフリカン・アメリカンの音楽の歴史に深く根差したサンプリングは、彼らの音楽的な魅力のひとつ。一方で、90年代当時は珍しかったバンド編成であることも重要なポイントで、彼らが現在に至るまでライヴ・バンドとしてパワフルな活動を続け、多くのファンを魅了してきた事実もひとえに〈バンドであること〉によるのではないでしょうか。

近年のケンドリック・ラマーのライヴ・セットやアンダーソン・パークとそのバンド=フリー・ナショナルズのように、ヒップホップの世界では生バンドとの融合が重要な音楽的トピックとなっているわけですが、アレステッド・ディヴェロップメントはそれを先駆けていたというわけです。それはきっと、今回の来日公演でも実感できることでしょう。

92年作『3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of...』収録曲“People Everyday”のライヴ映像
 

さらには、デビュー当時から女性メンバーが複数参加していたことでも知られています。ローリン・ヒルがいたフージーズやファーギーがいたブラック・アイド・ピーズに、ヒップホップの世界で活躍するための門戸を開いたとも言われています。まさに、さまざまな点でイノヴェイターだったわけですね。

さて、『3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of...』からはシングル“Tennessee”“People Everyday”“Mr. Wendal”がいずれもヒット(もちろん、これらの代表曲は彼らの十八番なので予習必至)。翌93年のグラミー賞では新人賞など2部門で受賞するという快挙を成し遂げます。その後96年に一度解散後、2000年には再結成。以降、精力的な活動と旺盛な創作意欲で多数の作品を生み出し続けています。

今年10月には新作『Crafts & Optics』も発表しており、オーガニックなフィーリングはそのままに、グルーヴやサウンドの面では現在にチューニングされた、見事な快作となっています。新作からの楽曲は、今回の来日でも聴けるかもしれません。

2018年作『Crafts & Optics』についてスピーチらメンバーが語るインタヴュー映像
 

ソウルフルでグル―ヴィーなサウンドと愛を歌い上げるメッセージ性豊かなラップ――彼らのアツくて豊穣な音楽を年末に浴びれば、きっとこの一年がいいものだったとハッピーな気持ちになれるはず。アレステッド・ディヴェロップメントとともに2018年を締め括りませんか?

 


LIVE INFORMATION
アレステッド・ディヴェロップメント
2018年12月28日(金)Billboard Live OSAKA
1stステージ:開場 17:30/開演 18:30
2ndステージ:開場 20:00/開演 21:30
サービスエリア 10,800円/カジュアルエリア 9,800円(1ドリンク付き)
★詳細はこちら

2018年12月30日(日) Billboard Live TOKYO
1stステージ:開場 15:30/開演 16:30
2ndステージ:開場 18:30/開演 19:30
サービスエリア 10,800円/カジュアルエリア 9,800円(1ドリンク付き)

2018年12月31日(月) Billboard Live TOKYO
1stステージ:開場 17:30/開演 18:30
サービスエリア 10,800円/カジュアルエリア 9,800円(1ドリンク付き)
2ndステージ(COUNTDOWN SHOW):開場 21:00/開演 22:30
サービスエリア 12,800円/カジュアルエリア 11,800円(いずれもグラスシャンパン付き)
★詳細はこちら

■メンバー
スピーチ(トッド・トーマス/ヴォーカル)
ワン・ラブ(スペンサー・ラヴ/ヴォーカル)
ラターシャ・ラレイ(ラターシャ・コンウェイ/ヴォーカル)
ジェイ・ジェイ・ブギー(ジェイソン・ライヘルト/ギター)
ファリーダ(ファリーダ・アレーム/ダンス)
エリック・ドジィアー(キーボード)
ウィリアム・モンゴメリー(ベース)
コーリー・レイモンド(ドラムス)