20世紀後半に一世を風靡したスメタナ四重奏団の名盤が、ハイレゾ化で鮮やかに復活!

 20世紀後半に一世を風靡したチェコの名団体、スメタナ四重奏団全盛期の名盤が最新技術によりハイレゾ化され、SACDハイブリッド盤で復活した。曲目は彼らの極めつけ、シューベルトの“死と少女”、ドヴォルザークの“アメリカ”(2種)、スメタナの“わが生涯より”&第2番である。

SMETANA QUARTET 『ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」(1978年録音)、シューベルト:弦楽四重奏曲第14番「死と少女」、弦楽四重奏曲第10番より第4楽章』 COLUMBIA X TOWER RECORDS/The Valued Collection Platinum(2025)

 1枚目(TWSA1190)は1978年来日時のライヴ録音でまとめられている。1曲目の岐阜公演での“アメリカ”は意外にも今回が初CD化である。というのも、彼らは80年神戸公演で同曲を再録音しており、CD化も80年盤が優先されたからである(今回の2枚目TWSA1191に収録)。彼らが出来映えに満足していたのは80年盤と伝えられるが、第1楽章や第4楽章は78年盤の方がノリが良く、拍手を除いた演奏時間も速い。対して80年盤は、全体に表情が落ち着いており、第2楽章では望郷的な旋律をじっくりと歌わせた良さがある。ともに魅力的な演奏であり、実際、両方の録音がリリースされていたLP時代の批評家の評価は拮抗していた。興味のある方はぜひ聴き比べていただきたい。

 一方、シューベルトの“死と少女”は、緊密なアンサンブルと美しいハーモニーを駆使して楽曲に真正面から切り込んだ名演である。〈運命動機〉が多用される第1楽章での彼らの演奏はベートーヴェン的で、ウィーンの団体が見せる甘さが無い。第2楽章の悲愴美も実に格調高く、迫真のアプローチは涙を誘うほど感動的だ。

SMETANA QUARTET 『スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」、同第2番、ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」(1980年録音)』 COLUMBIA X TOWER RECORDS/The Valued Collection Platinum(2025)

 2枚目(TWSA1191)のスメタナの2曲は、その名を冠したスメタナ四重奏団による1976年プラハ録音で、同年度のレコード・アカデミー賞を獲得した定評ある名盤だ。今回のハイレゾ化により音質が著しく改善され、合奏の明晰さと響きの美麗さが増し、歴史的名演が眼前に生々しく展開されるようになった。スメタナの楽曲自体が美しいメロディとドラマティックな展開に満ちた、激しい表現性をもつものだけに、名曲・名演・名録音としてクラシック・ファン以外にも大いにおすすめしたい。