2018年に結成され、夢咲みちる(ボーカル)、コジマアツヲ(ギター/ボーカル)、石肉(ギター/ボーカル)、taga(ベース/ボーカル)、Dex(ドラムス/ボーカル)、岩本雪斗(ノイズ/ボーカル)の6人で東京を拠点に活動中のmoreru。〈トゥルーパンクバンド〉と呼ばれる彼らが、ニューアルバム『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』をリリースした。エクストリームな面を残しつつ、よりポップで開けた本作は、〈アンダーグラウンドで注目を集めるバンドの新作〉という形容を易々と超える快作になっている。今回は、メンバーと親交があるミュージシャンの那倉太一(ECLAT/RAMPS/TOKYODIONYSOS/SLAVEARTS®︎)に夢咲とDexへインタビューしてもらった。 *Mikiki編集部
カジュアルに降りかかる受難
那倉太一「この度、moreruが4枚目となるアルバム『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』をリリースするということで、みちるくんとDexさんにお話をうかがいたいと思います。お2人ともよろしくお願いいたします」
夢咲みちる・Dex「よろしくお願いいたします」
那倉「解体新書的なインタビューは他に任せるとして、特定の領域において最も解像度の高いインタビューにできればと思っています。
みちるくんは歌詞を書いているわけですから、ある程度言葉のひとであると言うのは周知のことかと思いますが、こと〈舌鋒鋭い〉というイメージで言いますと、私はDexさんにそういった印象を持っています。わざわざ言わなくても自然とわかることかとは思いますが、読者の方はそういった点にも注目していただければと思います。
また、アジアツアーから帰国されて、これからニューアルバムをリリース、それに伴う国内ツアーを控えた時分でのインタビューです※。みちるくんはツアーの直前に車に轢かれていましたが、あれも〈持っている〉というか、カジュアルに受難が降りかかる感じも非常に良かったと思います。怪我の加減はいかがですか?」
夢咲「お陰様で……。あの時はお見舞いに来ていただいて」
那倉「あれは事故の次の日だったのでしょうか?」
夢咲「次の日に秒で来ていただいて。お見舞いに来たのは那倉さんだけでした」
那倉「家が近いですからね。お見舞いには豚NOVA(ラーメン屋)のチャーシューを持って行って。2人で並んでゴダールの『イメージの本』を観てね。あと、『モザイクジャパン』も観ましたね。あれから何か他に観ましたか?」
夢咲「『魂のゆくえ』を観ました。素晴らしかったです」
那倉「ポール・シュレイダーの映画ですね。あれは凄いですよね」
夢咲「『私は最悪』も観た。あと、ヤクザ映画の『新・仁義の墓場』も。最高でした」
那倉「銃を撃っているシーンで流れている音楽が何なのかって話がよく浮上して、まことしやかにG.I.S.M.だと言われていましたが、あまりそういう感じはしないですね。
それはそうと、ツアーの話をうかがわせてください。ソウル、上海、杭州、成都という中国の大都市と台北、韓国に出向いたわけですが、あちらの若者たちの受容、反響はいかがでしたか? また、よく〈そもそもエクストリームミュージックのシーンがない〉〈縦割りのシーンがない〉と言われますが、その点はいかがでしょう?」
夢咲「そうですね。歴史はないけど、ソウルはバンドが台頭しつつある感じです」
Dex「ただ、バンドはいるけどシーンがあるかっていうと……」
夢咲「だから、自分は歴史の問題として考えてる。ソウルでは、先輩はいないけど若い奴らがいっぱい活動していて、それはそれで独自のものがあると思いました」
