(左から)Dex、夢咲みちる、那倉太一

2018年に結成され、夢咲みちる(ボーカル)、コジマアツヲ(ギター/ボーカル)、石肉(ギター/ボーカル)、taga(ベース/ボーカル)、Dex(ドラムス/ボーカル)、岩本雪斗(ノイズ/ボーカル)の6人で東京を拠点に活動中のmoreru。〈トゥルーパンクバンド〉と呼ばれる彼らが、ニューアルバム『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』をリリースした。エクストリームな面を残しつつ、よりポップで開けた本作は、〈アンダーグラウンドで注目を集めるバンドの新作〉という形容を易々と超える快作になっている。今回は、メンバーと親交があるミュージシャンの那倉太一(ECLAT/RAMPS/TOKYODIONYSOS/SLAVEARTS®︎)に夢咲とDexへインタビューしてもらった。 *Mikiki編集部

moreru 『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』 ミュージックマイン(2025)

 

カジュアルに降りかかる受難

那倉太一「この度、moreruが4枚目となるアルバム『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』をリリースするということで、みちるくんとDexさんにお話をうかがいたいと思います。お2人ともよろしくお願いいたします」

夢咲みちる・Dex「よろしくお願いいたします」

那倉「解体新書的なインタビューは他に任せるとして、特定の領域において最も解像度の高いインタビューにできればと思っています。

みちるくんは歌詞を書いているわけですから、ある程度言葉のひとであると言うのは周知のことかと思いますが、こと〈舌鋒鋭い〉というイメージで言いますと、私はDexさんにそういった印象を持っています。わざわざ言わなくても自然とわかることかとは思いますが、読者の方はそういった点にも注目していただければと思います。

また、アジアツアーから帰国されて、これからニューアルバムをリリース、それに伴う国内ツアーを控えた時分でのインタビューです※。みちるくんはツアーの直前に車に轢かれていましたが、あれも〈持っている〉というか、カジュアルに受難が降りかかる感じも非常に良かったと思います。怪我の加減はいかがですか?」

※編集部注 取材は2025年10月14日におこなった

夢咲「お陰様で……。あの時はお見舞いに来ていただいて」

那倉「あれは事故の次の日だったのでしょうか?」

夢咲「次の日に秒で来ていただいて。お見舞いに来たのは那倉さんだけでした」

那倉「家が近いですからね。お見舞いには豚NOVA(ラーメン屋)のチャーシューを持って行って。2人で並んでゴダールの『イメージの本』を観てね。あと、『モザイクジャパン』も観ましたね。あれから何か他に観ましたか?」

夢咲「『魂のゆくえ』を観ました。素晴らしかったです」

那倉「ポール・シュレイダーの映画ですね。あれは凄いですよね」

夢咲「『わたしは最悪。』も観た。あと、ヤクザ映画の『新・仁義の墓場』も。最高でした」

那倉「銃を撃っているシーンで流れている音楽が何なのかって話がよく浮上して、まことしやかにG.I.S.M.だと言われていましたが、あまりそういう感じはしないですね。

それはそうと、ツアーの話をうかがわせてください。ソウル、上海、杭州、成都という中国の大都市と台北、韓国に出向いたわけですが、あちらの若者たちの受容、反響はいかがでしたか? また、よく〈そもそもエクストリームミュージックのシーンがない〉〈縦割りのシーンがない〉と言われますが、その点はいかがでしょう?」

夢咲「そうですね。歴史はないけど、ソウルはバンドが台頭しつつある感じです」

Dex「ただ、バンドはいるけどシーンがあるかっていうと……」

夢咲「だから、自分は歴史の問題として考えてる。ソウルでは、先輩はいないけど若い奴らがいっぱい活動していて、それはそれで独自のものがあると思いました」

 

アイアン・メイデンを発見した

那倉「なるほど。それでは、ニューアルバムの話をうかがいたいと思います。まず、私は、今回の作品はより具象度が上がったと思います。これまで、歌謡性、激情、グラインド、青春パンク、ノイズといった特定のジャンルをあらわす用語は嫌というほどあてがわれてきたかと思いますが、今回、特に私的に目についたのが〈メタル〉です。〈メタル〉としか言いようのないリフがここぞというところで出現しますよね。しかも、デフヘヴンやノックト・ルースといった近年のデカメタルバンドと戦う用意ができているような構えを見せながら、その優等生的な流暢さを唐突に、それこそNWOBHMのアイアン・メイデンやエンジェル・ウィッチのようなリフによって転倒させてしまうやり口には舌を巻きました。これはやはりアツヲくんとか石田くん(石肉)から提出されて、〈いいね〉となったものなのでしょうか?」

夢咲「いや、NWOBHMの要素は全て彼(Dex)によるものですね」

那倉「えっ! じゃあ、リフは口寄せですか?」

Dex「俺が弾いてます」

那倉「なるほど! 〈これを弾け〉と」

Dex「そうそう」

那倉「それはヤバいですね。リフをひとに弾いてもらう用事が最近私もあったんですが、口で伝えるのに近い感じでやったんですけど。moreruのリフはダイレクトなNWOBHMからの影響じゃないですよね?」

夢咲「ないっす。けど、そういう音楽を結構聴いてた時期があって」

Dex「このアルバムを制作してたころ、示し合わせたかのようにどっちもNWOBHMにハマって」

夢咲「そうそう。〈アイアン・メイデンを発見した〉って言うんですかね」

那倉「いわゆる日本のローカルな歴史のなかでの昔の言い方で〈メタルコア〉もリフ的にはNWOBHMになるでしょう? でも、お2人は、G.I.S.M.とかZouoといったバンドを通して得たのではなくて、普通にアイアン・メイデンを発見したわけですか」

夢咲「そうですね。直接発見しました。昔の音楽を参照するタイミングで、メタルも参照したくなってきて」

那倉「なるほど。てっきりローカリズムとしての〈メタルコア〉を参照したのかと思っていましたが、NWOBHMがダイレクトに降り注いだと」

Dex「制作過程としてそういうのが多いですね。〈今これを聴いてるから、これをやろう〉みたいな」

那倉「世代論と言うのも失礼ですが、情報の重要さがフラットな感じがしますよね」

Dex「そうですね」

 

おニャン子クラブで終わり、moreruが始まる

那倉「ジャンルのなかの関係性として、巨大な先輩がいて、自分たちは後輩で、というものものしさがあると、特定の意匠がその先輩の身体性に張り付いて優位性をまとってしまうということが起きますよね。そういえば、先ほどのソウルのシーンに関しても〈先輩の不在〉ということをおっしゃっていました。

そういった〈先輩〉を感じながらの身振りではないかと思いますが、本作では如実に温故知新と言ってよい姿勢がところどころに見て取れると思います。例えば、歌謡性の話。歌謡曲を掘り起こすという話題はいかがでしょうか?」

夢咲「それは一貫してやっていたんですけど、もうちょっと意識的になってきた感じかな」

那倉「具体的にこのシーズンは、どういうものを好んで聴きましたか?」

夢咲「それこそ70年代後半から80年代のおニャン子クラブくらいまでのアイドル昭和歌謡は、時系列がリアルタイムじゃなさすぎて肌感覚でピンときてないんですけど、サウンドの変容について考えていました。バンド演奏だったところに、ちょっとデジタルな音が入ってくる頃の昭和歌謡とか。他には、単純に歌のメロディーも意識しました」

那倉「今回は“あのね”で、楽曲レベルでそういうことをやっていますね。リスナーとして、おニャン子で終わるというのも象徴的だと思います。そこからmoreruが始まるとも言えるといいますか、そこから秋元康の〈ゲーム〉として学校空間が開けるということですね。明朝体を多用するとか、それをグリッチさせる手法も、今で言う櫻坂46とかに見られる学校空間のアレンジですよね。

また、温故知新とはある種の逆の身振りとして、Dexさんには新しいビートを持ってくるメンバーという面もあるのでしょうか? 今回はジャージークラブのビートがありますよね?」

Dex「どこにあります?」

那倉「ありません? 最後の方の曲で」

夢咲「“せーの、死”だ。でも、あれは……」

Dex「無意識。ってか、ジャージークラブって理解してない。あのビートって昔からありましたよね」

 

自分たちの後ろに広がっているものを連結させる

那倉「Dexさんは、好んで新しいものを聴くわけではありませんか?」

Dex「そうっすね。どちらかと言うと、moreruは基本的に〈新しいものを作ろう〉というより、昔からある、後ろに広がっているものをツギハギしまくって、最終的に自分たちのフィルターを通して出力する感じですね。それが、結果的に新しいものに聴こえることがあるという」

那倉「では、元々の源流にあるものの具象レベルが変わらないままコラージュされているという」

Dex「そうですね」

那倉「境界線が溶けた自分たちの音楽を作ろうというよりは、グチャグチャにならずに、境界線が曖昧にならず、ハッキリしているミクスチャーだという。歌詞もそうですもんね」

夢咲「はあ」

那倉「新しい音楽を作る場合って、境界線が曖昧なものを自分たちでこさえなきゃいけない場合も多々あるじゃないですか? そういうことを実は、moreruはやっていない。凄く冷静に構成しているバンドだと思うんです」

夢咲「曲のレベルでは……」

Dex「無茶苦茶そうだし、曲が変わった方が面白いですよね。変わらないと飽きるし。やっぱ、〈面白いじゃん〉みたいなものが好きなんで」

那倉「楽しませたい?」

Dex「ビックリさせたいですね」

夢咲「俺も、色々なフォーマットを使ってても、境界線はハッキリと〈こっからここまではこれ〉って引いてる」

那倉「〈連結させる〉という印象を強く受けます」

夢咲「〈連結させる〉感じは凄くある」

那倉「歌詞でも、実は、みちるくんが自身のほとばしるパトスに任せて書いている感じではない印象を如実に受けます。演劇空間をどうアレンジするかの構成要素がハッキリしていて、そのなかで役柄とキャラクターと実存を同時に演じるという」

夢咲「歌詞は、推敲・編集の作業が凄くあるので」

Dex「それは、やっぱDTM世代っていうのがデカいと思います。グリッドがちゃんとあるっていう」

夢咲「そう。詞作においても、(酒を)飲んで書いて、冷静になってから編集するっていう」

那倉「歌詞にも、DTM的な制作が及んでるっていうことですね。それで、アントナン・アルトーと三上寛が繋がっていたり」

 

これは伝統的なロックのアルバム

那倉「あと、今回はノイズが減りましたね」

夢咲「減ったっすね! だから、那倉さんがガッカリするかなって……」

那倉「やめてよ(笑)」

Dex「ノイズは、ミックス的にエフェクティブに使うというか、聴かせどころをちゃんと設定して、そこでしっかり鳴らすみたいな使い方に変わったかな。ノイズで埋め尽くすのは散々やったから、もういいかなって」

那倉「それは、今話してきたベクトルとも一致しますよね。境界線を曖昧にすることから距離を置いたということですね」

夢咲「このアルバムでノイズを使うところだけで使ったというのには理由があって、それは、いわゆる伝統的なロックのアルバムだと思って作ったからなんです」

那倉「ジャケにもその感じが出ていますね」

Dex「ジャケからスタートしてます」

那倉「〈誰々の何枚目〉みたいな?」

夢咲「色んなひとの4枚目を聴きましたね。でも、意外と〈誰々の何枚目〉とか、パッと一致しないんですが」

那倉「それは、自分たちが作ってきたものを大事にしてるということでもありますね。確かに、そういった色々な思いも、このデザインは封じ込めている感じがします。そういう意味でも、エクストリームミュージックの話より邦楽やJ-ROCKのサイドから話をする方が妥当なバンドになってきた面もあると思います。エクストリームミュージックのなかでの細分化というより〈編曲・アレンジがエクストリームミュージック〉と言いますか」

Dex「どれほどポップスっぽくなっても、結局ブラストと絶叫――絶叫って言っても、技巧的なスクリームじゃなくて発狂の絶叫ですが、そこにエクストリーム性を引き受けさせれば、エクストリームミュージックたり得るのかなと」

那倉「モチーフ、最小単位としてのエクストリームミュージックですね」

 

絶叫で台無しにすることで、メロディーがより美しくある

那倉「他のエクストリームミュージックではない部分のエッセンスに関してはいかがでしょう。例えばJ-ROCKとか?」

Dex「それはメロディーとかですか?」

那倉「例えば、僕は〈承認資本系J-ROCK〉〈自意識系J-ROCK〉と呼んでいるんですが、大森靖子とか神聖かまってちゃんなどとの距離感はいかがでしょうか?」

Dex「それは、バンドとしてどうこうというより、みちる個人の方が距離は近いんじゃないかな」

夢咲「これはどこまで話していいんだか……。 恥ずかしいってわけじゃないけど……」

那倉「バンド全体としては、みちるさん個人の歌はどのように措定しているのですか?」

Dex「やっぱり、いいメロディーがあった方がいい曲だとシンプルに思っています。こいつ(夢咲)はいいメロディーを作れるから、それを乗せてるっていう。さっき言ったノイズの聴かせ方も、よりメロディーを効果的に聴かせられるように、このアルバムではそうしていると思うし。

『山田花子』はエクストリーム一辺倒というか、〈暗黒〉みたいな感じで、『呪詛告白初恋そして世界』くらいから自分がミックスするうえで意識が変わって。それを今回も受け継いで、演奏でブラストや絶叫も聴かせつつ、通っている芯が歌のメロディーなんです」

那倉「それは、Dexさんもそう強く欲望しているということでしょうか?」

Dex「そうですね。自分もソロプロジェクト(that same street)をやっていて……」

那倉「ちなみに、あの叫び声を出せるドラマーとバンドをやるのは辛くないですか、みちるさん」

夢咲「そうそう。他のメンバー、みんな俺より声量あるし……」

Dex「自分のソロをやっている上でも似た意識があって、つまり、〈絶叫とメロディー〉なんです。絶叫で引き立てるというか、台無しにするイメージなんですね。台無しにすることで、メロディーがより美しくあるというか」

那倉「エクストリームミュージックのイメージのなかで歌を隆起させていることは、that same streetの作品と並べてみるとわかりやすいですね。歌のメロディーのポイントに全部絶叫をあてて考えているというか、頂上に絶叫を配置させていて、本作の拡散しているイメージをキュッとまとめあげて引っ張っている感じと言いますか」

Dex「そうそう。その方が強度が増すんです」

 

全ての風景をファスト風土にできたら

那倉「楽曲とはまた別のアレンジメントについての話題となりますが、moreruの様々な断面から学校空間、スクールカースト空間を転移させるというテーマが見て取れます。ジャージの着用率の高さもそうですし、“仰げば尊し”“蛍の光”に似た、学校の節目で歌われる合唱や唱歌を意識したカノン進行に近いコードの循環進行、歌詞も呪詛に満ちた〈卒業生の言葉〉のようです。

学校空間をモチーフにする意図はやはり、同じものが社会においても再生産されていると感じているからだと思います。その再生産されているものに固着しながらも、否定の身振りを見せて、リスナーに意識を向けさせ、〈考えろ〉と促す姿は、先ほども言ったように啓蒙的な側面があると思います。

ここまでの話は散々、言われてきたことなので、それらを前提としながら、Dexさんが以前Xで〈全ての風景をファスト風土にできたら、きっと素晴らしい世界になる〉と投稿していたことから展開しつつ、紐解いていきたいと思います」

Dex「ああ、それはそう思います」

那倉「それは三浦展の『ファスト風土化する日本』から来ている概念だと思うんですけど、いわゆる文化資本の蓄積を無効化させる志向性の発露だと思うんですよ。〈全てイオンにしちまえ〉ということですから。学校の話にどう繋がるかというと、義務教育の場って表向きは〈出発点が平等〉みたいなツラをしていますが、文化資本の蓄積と偏在が常に既にあるわけじゃないですか。しかも、毎年新しい子どもを迎え入れることでこの構造を再生産しているし、それを送り出しもする。だけど、この構造って、わからないひとにはわざわざ言わないと案外見えづらいものじゃないですか」

Dex「そこは、俺とみちるでは考え方が違うと思うんです」

夢咲「俺は路地や商店街の居酒屋が潰れたりしてほしくないな。そういう意味では結構保守。それはなんでだろうって、振り返って気づいたけど、俺は山とか川がめっちゃ好きなんすよ。月とか雲とか空とか」

那倉「私、若い時に言われたことがありますよ。〈花鳥風月を愛でるようになったら人間おしまいだ〉って。それは保守化だからダメだと」

夢咲「だから、自分のなかにある〈学校性〉からも逃げていかなきゃとは思ってるんですよ。そういう意味で自分は、結構保守的だよなって思います」

那倉「それは、昭和アングラ教養主義が関係している?」

夢咲「そうかもしれません。俺は80年代の日本の文化から始まっていて、Dexは90年代の洋楽から始まっていて、それは2人の圧倒的な差異だと思うんだけど」

Dex「そうだね。自分はそんなに日本のロックにルーツがないから」

夢咲「ニルヴァーナから始まってるからね」

Dex「グランジキッズだったから」

那倉「そうか。じゃあ、グローバリゼーションの恩恵って言い方もできるのか。現代的な考え方としては先端的に思えちゃいますね」

 

再生産された学校空間しかない日本社会という地獄

夢咲「僕は全然、何にも追いついてないと思います。それこそ現代思想の概念を頭に入れたりする時に、自分は全然ダメだと感じる。そういう『(賭博黙示録)カイジ』とか『最強伝説 黒沢』的な惨めさが多分に内面化されてて、一方でカタめの本読んだりするっていう」

那倉「難しい本の話題も〈中卒無双〉という言葉のなかに入っていると思います。つまり、中卒だけど難しい本も読めるという。実際、そういう気分にはならないのでしょうか?」

夢咲「読めているのかどうかは怪しいです。100%読めているってことはないと思うので」

那倉「まあ、ないですよね。個人で反省するとそうなんだけど、例えば玉野勇希さん(ZENOCIDE/UNCIVILIZED GIRLS MEMORY)のことなんかを思い出すと、集団的に中卒無双状態とも言えるような」

夢咲「〈中卒無双〉というクルーがあるかどうかはさておき、学校空間における階級闘争みたいなものですね。アルバムの1曲目のタイトル(“初恋と戦争の準備”)に繋がるけど、人間は人格形成の時期において初恋とか戦争とか労働とかの準備を学校でさせられて、そこには先生がいて、あとはスクールカースト的な階級闘争がある。これが無限に続く地獄、資本主義の地獄の始まりだと考えてるんです。それが、小中高と続く学校空間のなかで再生産される。つまり、〈学校空間の再生産イズ地獄〉みたいな」

那倉「それは、学校を出て、普通に生きていても同じようなことがあるってことですよね?」

夢咲「それしかないんです。むしろ、その外部があんまりない」

那倉「日本人って、凄くスクーライジングされている民族だと言われることがあると思います」

夢咲「日本人って学校が好きなんですよ」

 

厨二病じゃなくてどうすんだよ

那倉「また、過去のインタビューでSNS上での〈学生の頃に出会いたかった〉という意見について〈気になった〉とおっしゃっています。これは、moreruの音楽が、実際のガキに実効的に届いているのかどうかが疑問だということかと思うのですが」

夢咲「はい。気になりますね」

Dex「つか、そういう意見は普通にウザいっすよね」

那倉「凄い距離感ですよね。それを言っている人たちって、人間的に仕上がっているってことですもんね」

夢咲「インタビューで〈厨二病ですよね?〉って訊かれて、〈うあー、なんて答えていいかわかんねー!〉ってなって」

那倉「私はみちるくんとのお付き合いを通して、厨二病という印象はあまり受けませんね」

夢咲「どうなんですかね。でも、〈厨二病じゃなくてどうすんだよ〉って思います。厨二病って、イタい奴のことですよね。〈ククク。気づいちゃったよ、世界の真実に〉みたいな態度のことですよね。俺はそういうことを確かにしているかもしれないけど、逆に〈なんでお前らはしないんだよ〉って思う」

那倉「厨二病状態って、加虐性と被虐性がぐちゃぐちゃになってて整理できてない状態を、自身の意識水準を高いと思っているひとが〈やられているのかやっているのか、わからなくなっていますよね〉と評している状況という言い方もできるかなって。ことmoreruにまつわることで言うと、そう思います。先に攻撃されたのかこっちが先に攻撃しかけたのか、わからなくなっちゃっているという」

夢咲「それはめちゃ詰め込んでるっす。だから、歌詞を読み返すと恐ろしくなる」

Dex「そういうのは俺たちじゃなくて、アウトプットされたものに対して言ってほしいですね。俺たちの身体性を超えて出来上がったものが、結局出力されたものだから。1つの単位としての身体とは違うものが出力されてるからさ」

夢咲「そう、それ以上のものですよ」

 

パンクであること

那倉「さっき言った加虐性と被虐性の混合という点から歌詞を読み返して思ったのは、どちらかと言うと加虐の方はフィクショナルだけど、何よりも身の潔白や清廉性を切実に訴えかけていると感じました。〈悪いことはしていません〉ってよく言うじゃない?」

Dex「〈悪いことをしていないのにこんな酷い目に遭っている〉という意識はあるんじゃない? そういう自意識の過剰さというか」

夢咲「自意識の過剰さからくる謝罪ですよね。神、崇高なるものに対して、〈とにかくほんと許してください〉という気分に実際なるし。許されたら許されたで、そのちゃぶ台をひっくり返しちゃうという」

Dex「まあ、逆張りっすね」

夢咲「それは、パンクロックって言っていいんじゃないかと思うけどね。パンクであるってことだと思った。反動の反動の反動っていうか、逆の逆の逆の逆の逆みたいな、無限後退していく感じ。我思う故に我思う故に我思う故に……」

那倉「〈自己批判のススメ〉と言いますか」

夢咲「地獄が終わらないからそうなるんですよね」

那倉「そこで出てくるのが〈絶滅〉のモチーフだと思うのですが」

夢咲「そうですね。それに対して圧倒的な断絶というか、一番先に見えるものが〈絶滅〉というのはあります。生き物は絶滅するし、自分も死ぬし、宇宙も死ぬし、その果てにあるもの、一番超越的なものが死、終わり、終焉みたいな。だから、それは終末論的な美学でしかないんですが」

那倉「加えて、ブラシエ的な〈人間的な思考抜きの絶滅〉を含めても、moreruの音楽はその手前というか、始まりとしての、Dexさんの言うファスト風土化のサウンドトラックという印象を受けます」

Dex「灰色の街のね」

那倉「その街に独特なグローバリズムの雨を降らせているというか」

 

具合が良いのがおかしい

那倉「こういう言い方はしたくないけど、ある種の享楽の問題ですよね。享楽のレベルを上げないといけないというか。

エクストリームミュージックは、そこを置いてけぼりにしている面があるじゃないですか。〈エンジョイメント〉ということで〈笑顔でやる〉とか〈楽しい〉というイメージと連結しやすいから、エクストリームミュージックは享楽を排してきたけど、機能性を上げながらも、ある種の悪癖として〈楽しくないですよ〉という感じをいかにキープするかという課題もあるかと思います」

Dex「〈嫌々ながら〉ですね」

那倉「そうなった時に健康でないとできない人もいるし、〈不健康でないとさまにならない〉と考えるひともいると思うんです。〈楽しいだけでいいじゃん〉ってやるわけにもいかないし」

Dex「そこは難しいですね。音源にすると、必然的にある程度は楽しくなっちゃうし」

夢咲「実存とか身体のレベルで言ったら快楽を感じるけど……。ってか、俺はそもそも不可能性にぶち当たってしまうので、具合が良くなることはないですね。〈それってひどくない?〉〈ひどいよ〉ってことをずっと言ってるわけで。俺は今、産後うつみたいな状況にある。だから、一生こういうことをやってくのかなって。やめたら〈死〉みたいな感じだから。まあ、具合が悪いことをもうちょっと自分のなかで肯定したいけどね」

Dex「お前らがおかしいんだってね」

夢咲「〈大体、具合が良いのがおかしい〉ってことを言うしかないけど……。俺さ、ヤバいことを言ってるよね」

Dex「でも結局、そこにはリスナーが存在する訳で⋯⋯」

那倉「まあ、それは、1年半前のインタビューからここまでの間に身に染みたというか」

Dex「もうそれは、自分らの手を離れていますからね」

夢咲「まあ、僕は曲を作るしかないです。曲を作ってないからこうなっているので。ずっと楽しかったのに、〈ミックス終わり!〉ってなった瞬間に他者が入り込んで、乖離が起きちゃうから」

那倉「アルバムをパッケージしてリリースするまでは、それはあまり感じないのですか?」

Dex「リリースするまでは、まだ自分たちの手中にあるというか」

夢咲「〈まだ変えられる〉って状況の時が一番楽しいですね」

Dex「結局、作品が出ちゃうとどうしようもないんだよね」

夢咲「もう変えられないからね」

 


RELEASE INFORMATION

moreru 『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』 ミュージックマイン(2025)

リリース日:2025年10月22日(水)
配信リンク:https://ultravybe.lnk.to/YYouMMe

TRACKLIST
1. 初恋と戦争の準備 / First Love, Ready for War
2. ROCKSTAR
3. 3songs
4. 中卒無双 / Chusotsu Warriors
5. 虐殺水泳 / Pool of Slaughter
6. マリア様に大変な懺悔 / Jesus Christ (Fuck You)
7. 乙女座最終日 / The Last Day of Virgo
8. せーの、死 / One, Two, Death (feat. STOMACH BOOK)
9. 絶滅によろしく / Zetsumetsu
10. 完全他殺マニュアル / Perfect Tasatsu Manual
11. 討死!/ JIG-AI!
12. あのね / Anone
(JP title / EN title)

 

LIVE INFORMATION
moreru 4th Album Release Tour
霊霊障障新新感感染

■仙台編
2025年10月31日(金)宮城 SENDAI BIRDLAND ※終了
w/braqkotone、童子 and The Exorcists

■弘前編
2025年11月1日(土)青森 HIROSAKI KEEP THE BEAT ※終了
w/Is Survived By、ATHLETIX

■横浜編
2025年11月14日(金)神奈川 YOKOHAMA B.B.STREET
w/House Of The Blood Choir、5000、ANALSKULLFUCK

■イビル編【evilspa】
2025年11月22日(土)東京 SHIBUYA WWW & WWWβ

■名古屋編
2025年11月28日(金)愛知 NAGOYA HUCK FINN
w/天国注射、Climb The Mind

■京都編
2025年11月30日(日)京都 KYOTO METRO
w/odd eyes、Kiima Kariis

■大阪編
2025年12月1日(月)大阪 NAMBA BEARS
w/KK manga、TIVE

■広島編
2025年12月5日(金)広島 HIROSHIMA ALMIGHTY
w/Sugar、おそロシア革命

■熊本編
2025年12月6日(土)熊本 KUMAMOTO Django
w/safmusic、浅井幹人

■福岡編
2025年12月7日(日)福岡 FUKUOKA UTERO
w/HAERERE、herside、ROFLEN

■最終編【oneman live】
2025年12月25日(木)東京 SHIBUYA clubasia

 

EVILSPA 9
-moreru 4th Album Release Party-

2025年11月22日(土)東京・渋谷 WWW & WWWβ
開催時間:20:00~5:00

U23:3,000円/ADV:3,500円/DOOR:4,000円(All+1 Drink)
Over 20 only・Photo ID required
20歳未満入場不可・要顔写真付ID

■SPECIAL GUEST
JOHNNASCUS(US)

■ACT(A to Z)
ANALSKULLFUCK 
Akane
CNG Squad
DC
DIV⭐︎
Efeewma
Kanon
KRUELTY
Mayhem Squad (Egomania × KYLE MIKASA)
moreru
Rosa
NEGATIVE SUN vs Wolf Creek
Slumza
Super Structure
SMAP
Taro Aiko (M.A.S.F.)
VMO
Weed b2b NIKEGUCCI420
YUNGSTAお仲間
042ghxst
小腸分裂
拒絶666
春麗
豚化粧
コスプレシンガーホーリー
谷利沙紀
+Secret Guest “Σ”

■POP UP
choningen clothing

■FLYER
コジマアツヲ

TICKET:https://t.livepocket.jp/e/20251122www

 


PROFILE: moreru
東京を拠点とするトゥルーパンクバンド。2018年結成。メンバーは夢咲みちる(ボーカル)、コジマアツヲ(ギター/ボーカル)、石肉(ギター/ボーカル)、taga(ベース/ボーカル)、Dex(ドラムス/ボーカル)、岩本雪斗(ノイズ/ボーカル)の6名。2019年に『itsunohinikabokunokotowoomoidasugaii そして……』、2022年に『山田花子』とアルバム2作を発表。自主企画〈evil spa〉〈霊障〉を主催するなど精力的にライブをおこなう。EP 3作のリリースを経て2023年に初の全国流通盤となる3rdアルバム『呪詛告白初恋そして世界』を発表。2024年のEP『闇の軽音楽で包丁を弾く』に続き、4thアルバム『ぼぼくくととききみみだだけけののせせかかいい』を2025年10月22日に発表した。

PROFILE: 那倉太一
2006年、ENDONを結成。ノイズミュージックとエクストリームメタルと絶叫が混交するスタイルを急進的に推し進めた。同バンドは2025年に解散。現在はECLATとRAMPSにてボーカルを務める。クリエイティブコレクティブTOKYODIONYSOS主宰。ANGRY WAVES所属。アパレルブランドSLAVEARTS®︎ディレクター。