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時代の寵児ならではの輝き

 ソングライティングは全曲をソンバー自身が手掛け、プロデュースも本人+曲によってはトニー・バーグと共同で行っている。トニーはギタリストとしての活動を経てプロデューサー及びレコード会社の重役になった人で、プロデューサーとしてはマイケル・ペンからファントム・プラネット、フィービー・ブリジャーズやボーイジーニアスまでを手掛け、ソンバーとは2023年のEP『In Another Life』から一緒に制作。トニーと組むことの多いショーン・エヴェレット(ストロークスのジュリアン・カサブランカスやマイリー・サイラスの最新作をプロデュース)がミキシングを担当し、マット・チェンバレン(パール・ジャムやトーリ・エイモス)、ウェンディ・メルヴォワン(ウェンディ&リサ)といったヴェテラン・ミュージシャンが協力。さらにソンバー自身もギター、ベース、ドラムス、キーボード、ピアノなどを演奏し、多才なところを見せる。

 もともとNYの芸術系名門校であるラガーディア高校では声楽を学んでいたソンバー。父親も元ミュージシャンで、著名人やセレブを招いたパーティーやチャリティ・イベントを主催する会社のCEOを務め、母親もフィールドで活躍。クライアントには、ユニセフからエルトン・ジョン、マドンナ、レオナルド・ディカプリオらの財団までもが含まれている。そんな恵まれた家庭環境や人脈も、彼の豊かな音楽性やスター性に寄与しているのは間違いないだろう。

 先述のEP『In Another Life』の時点では、ジェフ・バックリィを生き写しにしたかのような繊細でメランコリックなヴォーカルと音作りが印象的だった。が、そこからわずか2年足らずの間に自分らしいサウンドを開拓し、ファースト・アルバムでここまで完成させてしまっている事実には驚かずにいられない。驚異的なスピードで成長するソンバー。時代の寵児ならではの輝きを、しっかり堪能させてくれるのがこのアルバム『I Barely Know Her』ではないかと思う。もちろんこの先、彼がどこへと向かうのか、どんな音楽を切り拓いていくのかもいまから気になって仕方がない。 *村上ひさし

文中に登場するアーティストの作品を一部紹介。
左から、1975の2013年作『The 1975』(Polydor)、レディオヘッドの95年作『The Bends』(Parlophone)、ジェフ・バックリィの94年作『Grace』(Columbia)、ボーイジーニアスの2023年作『The Record』(Interscope)

ソンバーの日本盤シングル『back to friends/undressed』(ワーナー)