「僕たちはそれぞれいろんなジャンルの音楽をプレイしてきた経験があるからね。それに、大学の内外でヨーロッパや世界各地のさまざまな人たちと一緒にプレイする機会に恵まれていたこと、そして何よりロンドンという文化の坩堝にいることが、僕たち全員に多大な影響を与えていると思う。おかげで僕たちは音楽に対してとにかく好奇心旺盛でオープンマインドなんだ。僕自身も新しく出てきた音楽は何でも聴いて、刺激を受けて、吸収して、それを自分の表現に活かしたいという気持ちを常に持っている。そんな姿勢が僕たちの音楽に繋がっていると思うんだ」(アンソニー・ボートライト)。

 ロンドンを拠点とする4人組のインスト・バンド、ユーフ。かのグラス・ビームスにも通じる、言葉を持たずしてさまざまなイマジネーションを喚起する音楽性は、英国、スイス、デンマーク、フランス出身だという個々のバックグラウンドと、各々の接してきた多彩な音楽の自然な結晶だ。それぞれの好みを挙げていけば、その範囲は中東や北アフリカの音楽から、モリコーネやザ・ルーツ、日本のtoeやMIZにまで及ぶ。万人に共通のプラットフォームが用意された世界にあって、もはやそうしたリスニング遍歴やリファレンスの振り幅を持て囃したりする必要はないとして、そうした世代らしい屈託のなさがバンドという軸に結え付けられることで個性を創出しているのは確かだろう。そんなユーフの曲作りはスタジオでのジャムから4人で発展させていく例が多いそうだ。

 「僕たちそれぞれが楽曲に対して強い影響力を持っていて、誰か一人でも欠けたら作れないと感じているよ。本当に曲がひとつの生き物のようで、一緒にいるとそれぞれが自分の役割を持つようになる。それが僕たちの曲作りにはとても大事なことなんだ」(ヒューゴ・コッツ)。

YUUF 『Alma’s Cove / Mt. Sava』 BEAT(2026)

 そんな一体感を備えたバンドが、「形作られていく過程というか、誕生の瞬間というか、そんな感じがあって、完成しきっているというよりは、どこか好奇心に満ちている」(アンソニー)という2024年の初EP『In The Sun』に続き、ニンジャ・チューン傘下のテクニカラーと契約して2025年に届けたのが、〈精神的な姉妹作〉だという連作EPだ。それらがこのたび日本独自にカップリングした『Alma’s Cove / Mt. Sava』としてCD化される。

 「最初はひとつの曲から始まったんだ。まず、“Iman”という曲のアイデアが生まれて、そこから強烈な静けさや自然の感覚が湧いてきて、その気持ちが自分たちをどこへ連れて行ってくれるのかを想像しはじめた。それが〈入り江(cove)〉のような雰囲気を形作っていったんだ。同じ頃に“Ørken Bloom”と“Mesa Mesa”も書いていて、その2曲の感覚もとても気に入ったんだけど、そちらはかなり違う雰囲気で、対照的な印象だったんだよね。それで、自分たちが持つ二面性のようなものをどちらも探求してみたいと感じたんだ。それらを同じ作品に詰め込むのではなく、互いを補完し合うような形にしたかった。聴いた時にまったく違う感覚を味わえる、でも根っこの部分は同じ。それが今回のような体裁に繋がったんだと思う」(オリヴァー・オーヴァーガード)。

 「まさに、その〈精神的な姉妹作〉という考え方に繋がるんだけど、『Alma’s Cave』は水や水域、トロピカルな雰囲気を強く表している。一方の『Mt. Sava』はその正反対で、水の不在……つまり、砂漠のような乾いた土地を表現しているんだ。基本的なコンセプトはそのへんにあるね」(ヒューゴ)。

 幻想的な自然の輝きが静かに広がるような『Alma’s Cove』と雄大かつ躍動的な『Mt. Sava』は、いずれもクルアンビン以降のサイケデリックな情緒を濃密に湛えながら、2作を通してユーフという陶酔的な異世界の音風景を印象付けるに違いない。「できれば行ったことのない国にも行ってみたい」(アンドリン)という彼らだけに、近いうちの来日公演にも期待を膨らませたくなるのは当然だろう。

 


ユーフ
オリヴァー・オーヴァーガード(ドラムス/パーカッション)、ヒューゴ・コッツ(ギター)、アンソニー・ボートライト(ベース)、 アンドリン・ハーグ(パーカッション/ハンドパン)から成るインスト・バンド。ロンドンを拠点に2022年頃から楽曲を発表し、2024年の初EP『In The Sun』を経てテクニカラーと契約。2025年に入ってEPの連続リリースで注目を集め、それらをコンパイルした日本独自盤『Alma’s Cove / Mt. Sava』(BEAT)を2026年1月16日にリリースする。