
よく生きて帰ってこられたな
──凄すぎる行動力。そして、その後帰国して今に至る、と。
「そうなんですけど、帰国してからも色んなことがあって……。プライベートでめちゃくちゃたくさんのことがあって、帰る家がなくなったんです。それで、住み込みの仕事をすることになったんですよ。青森、日光、北陸とかを転々として、最後に北海道で働いて。札幌のSPIRITUAL LOUNGEという場所でライブもやりました。
本当なら今も北海道在住で、札幌と東京を行き来して活動する予定だったんですけど、北海道でやってた農業の仕事がなくなっちゃって。計画が崩れて東京に帰ってきたんです」
──そんな生活を送ってたんですね……。曲を作るどころではなかったのでは。
「プライベートが大変すぎて、正直曲作りどころじゃないって感じでした。北海道では、孤独で死ぬかもしれないって思った。本当に、よく生きて帰ってこられたなと思います。
でも、その頃の経験や気持ちはまだ曲になってないんです。“SAI IS KING”はまだその前で、やってやるぞー!って燃えてた頃(笑)。歌詞もボースティングっぽいし」

根っこにある〈やってやる!〉のマインド
──今また改めて東京に戻ってきて、音楽活動を再開しようというタイミングということですね。SAIさんほどDIYで自分の活動をどんどん切り拓いてる人ってなかなかいないと思うんですけど、そのパワーの源泉ってどこから沸いてきてるんでしょう。
「自分でやってやるぞ!というのは、子どもの頃からずっとあるかもしれない。高橋歩さんの『人生の地図』という本が好きで、小学校の頃から影響を受けているのと、ライオットガールからの影響も強いのかな。
あと、Taigen(Kawabe)さん(BO NINGEN)とアキコ(・マツウラ)さん(コマネチ)の対談インタビューからの影響も受けてますね。アキコさんは『ストレンジャー・シングス(未知の世界)』のチャーリー(・ヒートン)と昔バンドを組んでいたり、パワーが強い人同士って惹き合うんだなって。
うーん……でもやっぱりハードコアパンクからの影響はかなり大きいと思います。誰かがやってくれる、っていう姿勢がめちゃくちゃ嫌いだから。ガツガツしないと生き残れないじゃないですか、音楽シーンなんて。そのマインドは、ヒップホップにも通じるものを感じています。フィメールラッパーのラップを聴いて、〈やってるぞ!〉って思うから。いつも励まされてますね。ジャンルは違うけど、根っこにある〈やってやる!〉の感じは同じ」
──海外の現場を見たうえで、日本のシーンに戻ってきた時に思ったことはありますか? 音楽コミュニティの違いというか。
「海外は、熱量さえあればけっこう受け取ってくれます。ハングリー精神に対して〈面白いね〉って思ってもらえる。でも、日本の場合はそれを見せてもけっこうスルーされる。〈ライブさせてください!〉って言っても、〈一度ライブを見てから検討いたします〉みたいな」
──海外の方が、フットワークが軽いということですね。しかし、SAIさんのフロンティア精神は本当にすごい。
「自分みたいな人、あまりいないかもしれないですね。あ、でも春ねむりさんはそうやって自力で開拓されてきている印象があります。ジャンルの居場所がないなら、自分で居場所の作り方を実践していくしかないというか」