スリーピース・バンド、Ms.Machineのヴォーカリストで、2019年よりソロ活動も開始したSAIによる初のフル作。AIWABEATSや東金B¥PASSのsostone、ドイツに拠点を置くLucra400、Bo NingenのTaigen Kawabeといった面々による不穏で時にメロウネスが滲むビートの上で、ラップとモノローグの間で引き裂かれたようなスタイルのヴォーカルが紡がれる。メランコリーと不機嫌にまみれた日常を詩的に昇華せず、醒めた視点で淡々と綴ったリリックが孕む、どこかECDにも通じる歪さが美しい。先鋭的かつクールといった形容だけで片付けられない切実さに裏打ちされた、それゆえに特別な輝きを放つ作品だ。