「もしバンドだけで作っていたら、そういう音楽を好きな人には届く、いなたさが魅力のギター・ロック・アルバムになっていたと思うんですけど、この作品はより間口の広いものになった。聴きやすくて現代的な音になったのは、Gotch(後藤正文)さんとエンジニアのtaiyaki~▲≡さんのおかげです」(Dai Saito)。
そうメンバーが語るように、Jurassic Boysの6年ぶりとなるセカンド・アルバム『On The Way Back Home』は、リプレイスメンツやレモンヘッズらを想起させるビートの効いたロック・サウンド、佐野元春マナーの滑らかな歌い回しなど持ち前の魅力を減らすことなく、演奏や音作りの面で端正さを纏った作品になっている。後藤はマスタリングと一部楽曲のプロデュースを担当し、彼の主宰するonly in dreamsがリリースを引き受けた。
「ピアノを入れたり、アレンジの幅が広がったので、Gotchさんにプロデュースをお願いしたんです。やりとりしている流れで、〈うちから出す?〉と言ってくれて」(Yutaka Yanagisawa)。
後藤は、“KOOL KID KEITH”と“遊水池”をバンドと共同プロデュース。スクエアなビートの上で2本のギターが掛け合いながら疾走する前者、4つ打ちのリズムにメランコリックな鍵盤とアコギを重ねたダンサブルな後者――本作での進化を象徴する2曲だろう。
「“KOOL KID KEITH”は、まず曲名が浮かんで、その名前のミュージシャンを空想したんです。グラム・ロッカーというかドラァグクイーンっぽい見た目で、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』みたいな雰囲気かなと。居場所のない男の子がラジオから流れる〈KOOL KID KEITH〉を聴いて、繋がりを感じる。その音楽にエンパワーされて、自分らしくいられるようになる、というストーリーを描きました」(Ryusho)。
「“遊水池”については、制作当初は平坦に進んでいくイメージだったんです。でも、ちょっと踊れる感じにもしたくて、ノリを意識したベースを弾きました」(Masafumi Soneda)。
「くるりの“ハイウェイ”とかが“遊水池”のリファレンスに出てたかな」(Yanagisawa)。
2024年にSonedaがベーシストとして加入し、3ピースから4人体制になったこともアンサンブルを多彩にした。ポップ・パンク調のギターを豪快に鳴らす“Paper Driver”で幕を開けるアルバムは、サム・フェンダーと共振するハートランド・ロック“On The Way Back Home”、「メロディーがエリオット・スミスっぽくてこの曲名に」(Ryusho)という内省的な“エリオット”、爽快なカントリー・ロック“Mint”など、曲ごとの芳醇な演奏が味わえる。
「いままでよりも〈歌〉を中心に据えた作品にしたいと思っていたんです。Gotchさんが歌のディレクションを細かく出してくれて、すごく勉強になったし、楽しかった。〈とにかくリズムが揃っていないと気持ちよくないよ〉とか」(Ryusho)。
前作から6年という短くない期間でバンドに起きたライフステージや人生観の変化も、このアルバムには刻まれている。
「“Paper Driver”のなかの一節〈君らしくないって⾔わないよ ブラザー僕らは何にでもなれる〉が好き。コロナ禍もあったし、バンドを続けていくのがしんどいかもと感じていた時期に、Ryushoくんから〈Dai坊、なんか変わったな〉と言われたことがあった。それが心に引っかかっていたんですけど、このフレーズは人の変化を賛美していると感じて、嬉しかったんですよね」(Saito)。
そんなアルバムの幕を閉じるのは、アンセミックな“9 AM Superstar”。〈今⽇は何か起こりそうさ そんな気がしてんだ今⽇は〉とラップ調で語りかけて終わるのが感動的だ。
「この曲の歌詞に出てくる〈MJ〉はマイケル・ジャクソン。昔、地元の工場で働いていたんですけど、落ち込んで駐車場にいたとき、“Rock With You”がカーステから流れて、彼の孤高さや寂しさに触れた感じがした。そのとき、俺がいま感じている悲しみって、別に本当の悲しみじゃないと思えたんです」(Ryusho)。
Jurassic Boys
Ryusho(ヴォーカル/ギター)、Dai Saito(ギター)、Masafumi Soneda(ベース)、Yutaka Yanagisawa(ドラムス)から成る4人組バンド。2019年にKiliKiliVillaから発表した初作『Jurassic Boys』が高評価を受け、2020年にASIAN KUNG-FU GENERATION主宰の公開収録ライヴに出演。後藤正文をプロデュースに迎えた先行曲“KOOL KID KEITH”“遊水池”が話題を集めるなか、このたびセカンド・アルバム『On The Way Back Home』(only in dreams)をリリースしたばかり。
