
60歳を前にロックなハートが蘇ってきた
――端的に言うと、“ボーイズ・オン・ザ・ラン”“スタートライン”“君はレースの途中のランナー”とか、青春の残り火を燃え上がらせるような大人の応援歌が、一番届くということですか。
「そういう曲は、ライブで歌うとお客さんも自分もアドレナリンが出ているような状態になって、一緒に高まるっていう感じがあって、そんな感動は今まで経験したことがなかったんです。腹の底から自分が思っていることを歌って、反応が返ってきた時には本当に力を感じて、〈このために音楽はあるんだな〉と思いました。
ただ、そういう興奮状態を継続させていくことの難しさも感じますし、30代、40代、50代へと、どんな歌を歌っていくべきか、今も手探りで続けているところです」
――それが、近年の曲作りのテーマになっていると。
「そうですね。50歳になる頃に、50代の男性シンガーは何を歌うんだろう?って、すごく考えたんですよ。30代後半から40代は、〈まだまだ頑張ろう〉というメッセージを中心に歌ってきたんですけど、50代になっても〈未来に向かって〉というメッセージが刺さるのか?と思った時に、お客さんの中に〈それよりも、もうちょっと楽しみたい〉という空気を感じたんですよね。
そこでスターダスト☆レビュー、杉山清貴さん、佐藤竹善さんのような、その時間を楽しんで家に帰るような、そういうコンサートのあり方がすごく参考になったんです。それまでの自分は、〈さぁ行こうぜ!〉って、気持ちはロックで、燃え尽きて終わるみたいな感じだったんですけど、みなさんがやっているような上質なエンタテインメントが、当時の自分にとって大事なヒントだったんですね」
――その感覚は、2018年にリリースしたコラボアルバム『ステップ・バイ・ステップ』によく反映されていますね。『ALL TIME BEST 1996-2025 風の中のアイラブユー』にも、数曲がピックアップされています。
「まさにそうで、“同じものを見ていた Collaboration with 根本要(スターダスト☆レビュー)”(2018年)や“No.1 Collaboration with 杉山清貴”、そしてKANさんと一緒に作った“スマホになりたい Collaboration with KAN”の歌詞も、僕一人では絶対に書けないですし、全てKANさんのせいにして(笑)、ちょっとはみ出すことができたので。
お客さんも実は、僕のダイレクトすぎるコミュニケーションを、息苦しいと思っていたところがあったかもしれないし、〈もっと遊んでいいよ〉という空気も感じていたので、みなさんとのコラボレーションをすごく楽しんでくれて、新しい発見がありました」
――これからの50代、60代の応援歌には、いい意味で遊び心があったほうがいいと。
「そうですね。でも未だに迷っているところはあって――最初は音楽作りって、プラモデルを作るみたいに、〈自分の好きなものを好きな色や形で作れたら嬉しいな〉みたいな感じだったんですけど、だんだんお店みたいになっていって、来てくれる人に喜ばれたいとか、人気のあるメニューをもっと作りたいとか、そういうふうになっていったんですね。
40代、50代はそうやって過ごしてきたんですけど、もう60歳も見えてきて、ちょっと先祖返りというか、聞き分けがいいことばかりしていたら、魂がなくなるような気もしてきて、もっと好き勝手なことをやってみたいという、ロック的なハートが蘇ってきて」
――おおー。そうなんですね。まさに、また新しいターニングポイントが来ているんじゃないですか。
「そうかもしれないです。あと2年で60代ですけど、思っているより若かったというか、20代、30代と基本は変わっていないし、落ち着いている感じもないし、先輩たちを見ても全然元気ですしね。浜田省吾さん、小田和正さんとか、すごいですよね。何がそうさせるのか(笑)」
――馬場さんはまだ若手です。
「本当ですよ(笑)。まだまだです」