Strawberry Lust

中国を拠点に活動するシューゲイザーバンド、Strawberry Lustの初来日公演が2026年5月5日(火・祝)に東京・新代田FEVERでのイベント〈Haunted by Memories〉で開催される。ゴシックかつドリーミングなビジュアルイメージと轟音をミックスさせたスタイルは同地において高い評価を得ており、フロントパーソンでありバンドのビジュアル面を手がけるラオラ・ゲイン(以下、ラオラ)のカリスマ性と共に支持されている。

そんなStrawberry Lustと共演するのは大阪発のデュオ、青い薔薇だ。彼女たちもゴシックな美意識を起点に活動を行い、儚げな歌とヘヴィなサウンドを対比的に提示している。2022年に活動を始めたばかりのバンドは中国語圏のインディーロック好きの間で話題を呼び、既に複数回の中国ツアーを成功させている。

今回はStrawberry Lustと青い薔薇の対談を実施。日中のインディーバンドが抱える美意識を起点に、中国国内のバンド事情についても訊いた。またLuuv Labelを運営し、今回のイベントにDJとして出演するルー・ジァーリン(盧佳霊)がインタビューの通訳として同席。日中のインディーシーンを長年見つめ、両国でオーガナイザーとして多種多様なイベントを企画してきた彼にも、両者の間を繋ぐ重要人物としていくつか質問を投げかけてみた。


 

他と違う独特な音楽を求めて

――対談へと移る前に、その間を繋ぐ盧さんが運営しているLuuv Labelについてまずお聞きしたいです。日中のインディーシーンを橋渡しするハブ役としてどのような活動を続けているのでしょうか?

ルー・ジァーリン「去年、弊社は約120本のライブイベントを企画しました。会社としてインディー精神を持つことは強く意識していて、日本と上海を実際に行き来すると共にSpotifyのプレイリストを活用した新人発掘やbilibiliなどでのプロモーションを行っています。自分の強みを活かして色々な場所に橋を渡していますね」

――ありがとうございます。では盧さんの視点から2つのバンドを紹介してください。まずは青い薔薇について、どのようなバンドでしょうか?

ルー「青い薔薇は元同僚のワンくんが見つけてくれたんです。音楽性はJ-POPとシューゲイザーやドリームポップを融合させた少女感の残るサウンドで、ささやくように歌っているのが個人的には気持ちいいんじゃないかと」

久内(青い薔薇)「WUTANG Recordsのワンさんですね、メールを頂いてからトントン拍子で中国でのライブが決まって。それでツアーに出たらお客さんが温かく迎えてくれたんです。私たちのことを観に来てくれているお客さんが多いというか、本当に楽しみにしていたんだなって」

鈴木トモカ(青い薔薇)「経験したことがないぐらいの人数が観に来てくれたんです。とにかく嬉しかったですね」

――ではStrawberry Lustについても伺いたいです。

ルー「そもそも、僕とラオラは高校生の頃からの友達なんです。当時からゴシック的な世界観に彼女は惹かれていて、タマリン(Tamaryn)やナイト・テープスをよく聴いていました。この前アジアツアーを終えたばかりのウィスプとも同世代で、美意識に関しても共通しているのではないかと。Strawberry Lustはステージもインパクトがありますし、ラオラ自身の声も少女感があって際立っています」

フォンフォン(Strawberry Lust)「僕たちは〈できるだけ独特な音楽を作りたい〉という初心を今も貫いています。というのも、僕たちの周辺のシーンでは、サウンドや表現される内容が同質化していると思うんです。だからStrawberry Lustは他とは違う方向にしたい。僕が好きなきのこ帝国やマイ・ブラッディ・ヴァレンタインの影響を取り入れつつも、編曲の雰囲気では彼らとズラすようにしています。

Strawberry Lustでは、まず僕がアイデアを出します。基本的にはその時点で大枠は作り終えていることが多いです。例えばあるデモでは〈土曜の朝9時、公園の噴水のそばで君を待つ〉みたいなタイトルを付けるんですね、つまりデートの時の感情を表現しているんです。ある意味でお題に沿った作文を繰り返しているというか、そういう小さな感情を拾い上げてバンドの形に落とし込んでいきます」

――ラオラさんは作詞やビジュアルの面からどのようにバンドの世界観へとアプローチするのでしょうか?

ラオラ・ゲイン(Strawberry Lust)「アイデアが浮かんだらまずドキュメントを作って、ムードボードをまとめます。思いついたことを全て一つのパワーポイントに集結させるんです。

歌詞を書くのはその後ですね。私は陰鬱なものに惹かれるので、バンド名にある〈Lust〉という欲望のニュアンスを前面に出したいと思っています。よくあるアジアの爽やかで小綺麗なタイプのバンドとは差別化したいというか(笑)。かわいさや甘さの中に、もう少しゴシック的な要素や、古いホラー映画のような雰囲気を加えたいんです。

ビジュアル面では、普段あまり見られないドリーミーなものを提示したいと思っています。新作のMVはaespaの映像のように現実から少し遊離した世界観になるんじゃないかと。やっぱり表現したいのは〈夢〉ですね。夢の中で起きている出来事、という感じです」

 

青い薔薇

切なくて陰のある青い薔薇の歌詞

――両者の出会いについても教えてください。どのようにしてお互いを認知したのでしょうか?

ラオラ「私は青い薔薇の香港でのワンマンライブのフライヤーを制作したんです。その公演一式のビジュアルや宣伝素材を担当して、ライブでは実際に香港へ行ってグッズのデザインや会場の装飾なんかも手伝いました。その時にメンバーとは初めて会ったんです。その後も深圳でのライブにプライベートで遊びに行きましたね、5月の日本でのライブが初めての共演になる予定です」

フォンフォン「普段からYouTubeで青い薔薇のライブ動画がレコメンドされるんです。独特というか、陰鬱で不気味な雰囲気もあって、自分的にはかなりツボです」

ジュリン(Strawberry Lust)「そう、僕のYouTubeでもレコメンドされます」

――青い薔薇のお2人はどのタイミングでStrawberry Lustの存在を知ったのでしょうか?

久内「ラオラちゃんの作ってくれたフライヤーで認識しました。ライブした時に香港で一緒にご飯を食べたんですけど、その時はラオラちゃんのビジュアルとかは知らなくて。 なんか可愛い赤髪の子が目の前に座ってて〈この子は誰なの?〉ってずっと思いながら過ごしていて。それで帰り際に香港のオーガナイザーの方が〈あの子がラオラちゃんだよ〉みたいなことを聞いて〈え、そうやったんや!〉って(笑)。 初めからかわいいな〜って印象でした」

ラオラ「ありがとうございます(笑)」

久内「バンドのビジュアルを見ていても、Strawberry Lustはちゃんと自分たちの世界観を確立できているなって思います。見せるものがわかっているバンドというか」

鈴木「青い薔薇の雰囲気に合ったフライヤーも素敵というか、私たちの雰囲気に共感してくれたような気がしたんですよね」

ラオラ「以前から青い薔薇は好きだったんです。特に歌詞に注目していました。死後の世界とか、別れとか、そういう少し切なくて陰のある感覚が自分の好みにすごく合っていたんですよね。そういう系統のものばかり好きになるんです。

フライヤーではバンド名にちなんで、青い薔薇のモチーフを装飾に使えるんじゃないかと考えました。全体の配色は黒と青で、バンドのMVにもあるような古い映画の雰囲気を出したかったんです」

久内「フライヤーを作るために歌詞まで熟知して世界観を考えていただいたのは率直に嬉しいです」

 

中国のZ世代に刺さったダークなサウンド

――青い薔薇のようなバンドが中国で受け入れられているのはなぜだと思いますか?

ラオラ「最初に開催された深圳でのライブがとても良かったからだと思います。近場にある香港のシューゲイザーのファンがたくさん深圳まで観に来ていて、彼らが〈女性2人がこんなにインパクトのある音を出しているなんて信じられない〉とリアクションしていたんです。アレンジがとても良くて、ライブの中毒性も高かったですね。それで香港のファンが戻ったあとに現地でも大きな反響があって、そこでのライブに繋がりました。

もう一つの大きな理由として、今の若い世代はエモーショナルでダークな音楽を好む傾向があると思います。これはZ世代のメンタリティとも関係しているかもしれません。今の中国の若者世代はダウナーな人が多くて、内側にある声を強く叫びたいという欲求がある。彼らはそうした感情を反映する音楽に共鳴しやすく、自分の感情を発散できると感じているんだと思います」

フォンフォン「えぇ、まさにその傾向はありますね」

――ルーさんにもお聞きしたいのですが、中国国内でも地域によって好まれがちなサウンドの差異はあるのでしょうか?

ルー「多少はありますね。例えばシューゲイザー/ドリームポップ系のバンドは北部よりも南部の方が演奏している人もリスナーも多いのではないかと。上海をはじめ南京や成都の周辺、それと南の深圳や広州あたりですね。北部だともう少しオールドスクールというか、パンクとかメタルが強いですね。それと四川はヒップホップが強いですね、ちょっとワイルドで個性的なんです」

 

ルー・ジァーリン/盧盧盧

Strawberry Lustのキーワードはロマンチック、夢想的、多様性

――なるほど。お互いにシーンの中での差異化を考えている上で、サウンドとビジュアルを貫くキーワードのようなものは設けているのでしょうか?

フォンフォン「僕らのキーワードは〈ロマンチック〉です。ロマンチックといってもいろいろあって、甘いロマンや少し孤独なロマンなども含んでいます」

ラオラ「それと〈夢想的〉と〈多様性〉ですね。感情の多様性であり、生活の中にある多様性についても考えています」

ジュリン「ドラマーとしては様々な要素を組み合わせつつ、インダストリアルなサウンドを心がけています。打楽器として多様な響きを組み込むように意識していますね」

久内「いやぁ、感心してます(笑)。〈私にはそんなキーワードを出せるのかな?〉っていうのが率直な感想というか。ただスイートなロマンチックとか、孤独な中でのロマンティックとかは共感します」

 

音楽は国境を越えて伝わる

――最後に、今後の活動指針についても伺いたいです。容易に日中のバンドが実際に行き来して活動を行うことが厳しくなってしまった中で、どのようなビジョンを抱いているのでしょうか?

フォンフォン「正直に言うと、今のバンドの成長は自分の想像よりもずっと早くて、かなり信じられない気持ちなんです。元々バンドを結成したときは趣味というか、仕事以外の時間を埋めるためのものに過ぎなかったんです。でも、今のバンドの展開が順調なのを見ていると、自分が今持っているエネルギーを仲間と一緒に表現していきたいと考えるようになりました。日本での公演も本当にとても夢のような出来事ですし、全力で臨みたいです」

ラオラ「まさにそうです。ニッチなジャンルの中で活動していただけなのに多くの反響をもらうようになって驚いています。私たちは市場に受け入れられるかどうかを全く考えず、純粋に個人の美意識を持ち寄って音楽を作っているんです。今のように多くのリスナーに聴いてもらえると、彼らを失望させたくないということも考えるようになりました。なので、今後はよりプロフェッショナルな形を目指していきたいと思っています。そういう意味で日本での活動は本当に信じられません。タワーレコードにCDが置いてあるなんて夢のようというか」

久内「私は中国のファンの子に会いたいです。〈Miss you〉みたいなメッセージをくれるんですよ。音楽の価値観を分かち合える場こそがライブだと思うので、本当は行きたいですね。ただ、今できることは音源を作って出すことだと思うので何か作品をリリースする方向で考えています」

ラオラ「そういう意味で、5月のライブは本当に素晴らしい機会なんじゃないかと。もっと多くのバンドと国際的な交流をしたいですし、音楽は国境を越えて伝わるものだと思うので、より多くの繋がりを作っていきたいです」

久内「実質2マンライブみたいな感じになるって聞いてたんですよ(笑)※。お互いの世界観をライブで伝えて見せ合える日になるんじゃないかと」

※編集部注 ライブを行うのはStrawberry Lustと青い薔薇の2組。さらに毎日ユニークとghost girl in my bedもスペシャルゲストとして出演する

鈴木「うん、学びのある日にね」

 


LIVE INFORMATION
Haunted by Memories

2026年5月5日(火・祝)東京・新代田 FEVER
開場/開演:11:00/11:30
Live:Strawberry Lust(CN)/青い薔薇
Special Guest:毎日ユニーク/ghost girl in my bed
DJ:盧盧盧(Forsaken Autumn/Luuv Label)
予約/当日:3,000円/3,500円
22歳以下:1,500円
チケット:イープラス https://eplus.jp/sf/detail/4484580001-P0030001

 


PROFILE: Strawberry Lust

2022年に中国・広州で結成された5人組シューゲイズ~ドリームポップバンドStrawberry Lustは、ゴシックファッションのアイコンとして中国で名を馳せたボーカルのLaora Gein、メインコンポーザーのギターFungfungを中心に、甘く滑らかでありながら不安を搔き立てる悲しみを帯びたボーカルに浮遊感があり陶酔感に満ちたサウンドを加えるバンド。Laoraの音楽的バックボーンであるシューゲイズはもちろん、ブラックメタル、K-POP、ハイパーポップなど様々な音楽スタイルの美学から影響を受けている。2025年には初の海外公演をタイで実施し、今回は初の日本公演開催を迎える。

PROFILE: 青い薔薇

大阪を拠点に活動するインディーロックバンド。現在はキュウナイアヤカ(ボーカル/ギター)、鈴木智賀(ベース)にサポートを含めた4人編成で活動している。轟音と静寂、その狭間に生まれる感情の揺らぎを音像として描き幾重にも重なる歪んだギターと儚く浮かび上がる歌声。その対比が聴く者の感覚に静かに触れていく。国内のみならずアジア圏でも支持を広げ、特に中国では高い認知と人気を獲得。言葉を越えて伝わる音の密度と空気感が、多くのリスナーの心を揺さぶる。楽曲は圧倒的な音圧を持ちながらも感情を押し付けない。聴き手がそれぞれの記憶や感情を重ねられる〈余白〉を大切にしている。ライブでは、身体を包み込む轟音と一瞬の静寂が交差し、深い没入感を生み出している。

PROFILE: 毎日ユニーク

〈やりたければ、やればいいじゃん! とにかくやってみればいいじゃん!〉そんな勢いと軽さで、真面目にがっつりふざけるコンテンツを連発。わざわざユニークにならなくても、毎日はもう充分ユニーク。だからこそ笑っちゃおう、楽しんじゃおうをコンセプトに活動再開! Coccoは、3DCGクリエイターになるために机の上で3年修行、いまや、毎日ユニークのYouTubeオープニングCGやMVなど担当するハイスペスキルの映像屋さん! Hamutakoは美大出身のスーパーおしゃれラグ職人。絨毯アートのプロになるため山で修行、現在は絨毯アートで独自の世界を築き、毎日ユニークのロゴやグラフィック、グッズのデザインも手掛けている。活動開始当時からの固定ファンも多く、ポップアップイベントを開催すれば、毎日ユニークに笑顔と元気をもらいにそれぞれユニークなファッションのファンが会場に訪れる。

PROFILE: ghost girl in my bed

(左から)Yui(ベース)、Kenshin(ギター/ボーカル)、Jo(ギター/ボーカル)、Satsuki(ドラムス)

2026年結成、東京を拠点に活動。 インターネット上でをギター/ボーカルのKenshinとJoが出会ってバンドを始め、Kenshinの学校内の友人だったベースのYui、ドラムスのSatsukiが加わった。海外のシューゲイズ、エモ、ニューメタルなどを手がかりにそれぞれの感覚を持ち寄りながら楽曲を制作している。1stシングル“femme”はリリースから1週間で国内外のメディアに取り上げられ、ラヴズライズクラッシングの元ギタリストでありシューゲイズシーンのレジェンド、スコット・コルテスからも言葉が贈られるなど反響を得た。現行USシーンのシューゲイズサウンドをベースにウィスプからの影響も大きい。従来の日本のシューゲイズとは距離を取りつつ轟音とヘビーさを軸にしたサウンドを鳴らしている。

PROFILE: 盧盧盧

Luuv Label CEO。上海のドリームポップバンドForsaken Autumnの作曲作詞、ギター&シンセサイザーを担当。これまでに洋楽・邦楽問わず多様なジャンルに触れ、独自の音楽センスを培ってきた。ハウス、ミニマル、日系エレクトロニックミュージックなどを愛し、様々な音楽要素を融合させ、フロアでシェアすることを目指すチルアウトDJ。