2026年がいよいよスタート。日本テレビの番組「バズリズム02」で恒例企画〈今年コレがバズるぞ! 2026〉が放送され、今年活躍が期待されるアーティストは誰?と気になっている音楽ファンは多いはず。Mikikiは昨年に続いて、今年も注目の新人邦楽アーティストを選出。編集部の小田淳治と天野龍太郎がそれぞれの視点からプッシュしました。前編に続き、後編の16組を紹介します。 *Mikiki編集部


 

小田淳治 編
yosugala

2022年に結成された、黒坂未来、汐見まとい、未白ちあ、君島凪からなる4人組アイドル。PassCodeらが所属する事務所we-B studiosと、uijinを手がけていた事務所sakebiによる共同プロジェクトWEXSから誕生したグループで、昨今では少なくなったロック/ラウド系の楽曲を歌唱するアイドルとしても希少な存在だ。AliAのメンバー(主にEREN、TKTの2人)と、PassCodeのサウンドプロデューサーである平地孝次の2チームがそれぞれ楽曲を制作している点もグループの強みと言えよう。昨年12月にトイズファクトリーからメジャーデビューしたばかりで、今年3月にはメジャー1st EP『No Border』のリリースも控えている。LINE CUBE SHIBUYAや日比谷公園大音楽堂でのライブを経て成長を続ける4人の歌唱力と表現力は、アイドルシーンにとどまらず、より大きなフィールドでも輝きを放つに違いない。

 

春風レコード

クニモンド瀧口(RYUSENKEI)が監修するシティミュージックコンピ『CITY MUSIC TOKYO topology』にもピックアップされた5ピースバンド。池田春(ボーカル)の記名性のある歌声をバンドの持ち味としながら、それを最大限活かすための工夫が各楽曲に施されている。前述したコンピに収録された“relief”をはじめ、夏のムードを盛り込んだレアグルーヴ調の“WAVE”、聴き手によって解釈が変わるほろ苦いラブソング“夜に潜って”、サックスやパーカッションも加わった上質なラウンジミュージックとも言えそうな“caramelラテ”と、2025年に発表された楽曲はいずれも秀逸。目まぐるしいスピードで日々更新されていくJ-POPシーンに疲弊した人にこそ、春風レコードの音楽は深く染みわたるはず。

 

Mama Rag

関西を中心に活動する〈ママラグ〉ことMama Ragは、寺田涼太(ボーカル)とsabo(ギター)からなる2人組。個人的に気になった曲を無作為にまとめたプレイリストを毎月作っていて、2025年5月のリストに彼らの“追い風”が入っていた。同楽曲も収められた1stアルバム『なんの日』がこれまたよくて、60〜70年代のフォークやムード歌謡、サルソウル、ゴスペル、カントリーなどを肥料にちゃんとMama Ragとしてのオリジナリティを獲得した作品になっているのが素晴らしい。最新シングルの表題曲“はじめから”ではゆったりとしたソウルを、カップリングの“サボタージュ”ではアップリフティングなカントリーを披露していて、2026年はさらに多くのリスナーの耳に届く存在になると思う。

 

lili maua

宮崎出身のシンガーソングライター(読みはリリー・マウア)。シティ感をふんだんに含んだハスキーボイスで歌われる良質なネオソウルやR&Bからは、とても20代前半とは思えない貫禄を感じる。2025年10月にドロップされた1st EPは、タイトル曲“Into My Name”や“I’m into you”など90年代の空気を纏ったスロウなナンバーを収録。官能的なムードが漂うラストの“わがままな僕を許して”で聴くことができる通常よりも低い歌声など、発声におけるスキルや表現にもこだわっていると思われる。もっとエレクトロな音色やハネたビートを用いたR&Bアーティストは多数いるが、lili mauaのようにBPM 50〜60あたりをメインに歌唱するシンガーはそこまで多くないのでは? レコードに針を落として聴きたいアーティストだ。

 

nasaki

KAMITSUBAKI STUDIO所属のトラックメイカー/コンポーザーPurukichiの作品が好きということもあり、その流れで出会ったシンガー/歌い手。Purukichiのトラックとの相性のよさは最新のハウスチューン“Hakoniwa”を聴いてもらえば明らかで、デジタルなトラックとnasakiのウィスパーな歌声のコンビネーションに何度も高揚させられた。線の細い声質だが、フェイクやブレスなど自らの旨味をどう効かせればよいのかを理解した上で曲と向き合っているようにも感じたし(その点はPurukichiのディレクションやミックスの巧さも影響しているとは思う)、彼女のYouTubeで聴ける米津玄師&宇多田ヒカルの“JANE DOE”のカバーも1コーラスだけだが聴きごたえがあった。もっと色々なトラックメイカーとも手合わせしてみてもらいたい。

 

天野龍太郎 編
らそんぶる

SHISHAMOは2026年に活動終了してしまうものの、その系譜を確実に受け継ぐのがこの4人組。作詞・作曲を担当するそら(ボーカル/ギター)が書く曲は、聴けば誰もが共感できる等身大で身近なメッセージを乗せた歌詞と伸びやかなメロディが胸を打つ。代表曲“ロックンロールに恋をしたんだ!”の内容どおり、音楽性は今どき珍しいシンプルなロックンロールで、時折パンキッシュになるところにもぐっとくる。バンドの魅力が凝縮されているのは“夢を見よう!”。30代、40代、50代と、〈大人〉と呼ばれる年齢になった聴き手が何かを目指そうとするときに背中を押してくれる曲だ。1月28日(水)リリ-スの2ndミニアルバム『心の隙間を埋めるのは』は、〈タワレコメン〉に選出された。まさに今注目すべきバンドで、〈コレバズ〉のアンケートでも推した。

 

Mel

2020年にリリ-スした“彗星と街”がバイラルヒットした、〈チルなビートと優しい声で言葉を紡ぐ次世代チル系シンガー〉。ボーカロイドの曲からロック、ローファイヒップホップ、R&Bまで、多様な音楽を並列に聴いてきたであろう現代的な折衷感覚が端々から感じられる音楽性で、ネット発の匿名的な活動を含めて、〈てけしゅん音楽情報〉が言うところの〈J-POP 3.0〉のアーティストと呼びたい。最大の魅力は、恋愛模様を独自の視点で繊細に切り取った歌詞、そしてそれを歌う親密で甘い歌声。「恋をするなら二度目が上等」「25時、赤坂で」といったドラマのタイアップソングも担当してきたので、これからますます大きな場で活躍しそう。曲を聴いて、〈今どきのZ世代らしい軽やかな音楽だなー〉なんて感じていたが、インタビューをしてみると本人はものすごく真面目で実直な人柄で、印象が変わったこともよかった。

 

ラッコかもしれない

昨年末に社内の繋がりで紹介され、作品を聴いてみたらぶっとばされた。長野・軽井沢在住、弱冠18歳のシンガーソングライター/ベッドルームアーティスト。2025年の〈バズんの!?サマソニ!?〉で約2,000組の応募の中から選ばれ、〈SUMMER SONIC〉の会場でMVが放映されたという。現状は、“しかくいはこ”“感情と自己理解の織り成す詩的考察。”の2曲しかリリ-スしていない。しかし、アニメソングやボカロ曲、さらにハイパーポップにも通じるコラージュ的なプロダクションのセンスが強烈で、一度聴いたら忘れられないアイコニックな歌声は実に個性的。これからどんな曲を発表していくのか、ものすごく楽しみな存在。

 

lilbesh ramko

ハイパーポップシーンで注目を集め、hirihiriとのユニット142clawzでの活動も知られる気鋭のアーティスト。2023年の“i (dont) know.”と同曲を収録したアルバム『終末collection』が話題になり、昨年は〈POP YOURS〉〈MEET YOUR ART FESTIVAL〉〈KOBE MELLOW CRUISE〉といったフェスに出演、水槽にフィーチャーされた“報酬系”をリリ-スし、KUROMI“OHIRUNE DAY DREAM”も制作するなど、大舞台で活躍した。ボカロもヒップホップも飲み込んだ器の大きさで、これからどんな活躍を見せてくれるのかが今もっとも楽しみな才能。

 

orlik

近年、エッジーな才能を輩出しまくっているレーベルAPOLLO SOUNDSからデビューしたorlik(読み:オルリック)は、2005年生まれ、弱冠20歳の新鋭アーティスト中島輝智によるソロプロジェクト。シングル“New contemporary”にはびっくりした。同世代の北川大智がドラムを演奏しつつ、中島がプロダクションなどそれ以外の音をすべて担当しており、オルタナティブロックからジャズ、ハイパーポップまでを取り込んだすごい曲なのだ。〈名刺代わり〉という以上に圧倒的な才能を見せつけた彼が今後どんな曲を作り、どんなパフォーマンスを見せるのか。次の一手に期待がかかるアーティスト。

 

Cosmic Mauve

QnelとのコラボレーションEP『SPACE CANDY』についてのインタビューで出会った東京・町田出身の5人組。〈サマーボーイズ〉をキャッチフレーズに、シティポップもブラジリアンも飲み込んだLight Mellowな彼らの音楽性は、高中正義と最近出会った新世代リスナーの感覚にもフィットしそうなチルさと軽やかさを携えている。日常に寄り添うサウンドでありながら、歌心とバンド的な一体感もあり、機能性と聴き応えを両立させた稀有なバランス感覚がいい。『SPACE CANDY』も昨年リリ-スの1stアルバム『Summer Brings You Good』も新曲“南米に行きたい”も必聴!

 

穂ノ佳

以前、downtのツアーにゲストアクトとして出演しており、ライブを見て知ったシンガーソングライター。downtの富樫ユイと心を通じ合わせていたことをよく覚えている。2021年からSoundCloudで曲を発表していたそうで、2022年に開催されたビクターの〈COLOURFUL AUDITION〉でグランプリを獲得、2023年にメジャーデビューを果たした。そして2025年のクリスマスイブ、1stフルアルバム『花咲く丘の子供たち』をついにリリース。これが以前のシングルやEPよりずっと進化した素晴らしい作品だったので、2026年に改めてプッシュしたいと思った次第。感情の機微を描く、脆く繊細な歌(ブレスが印象的)や歌詞の世界、そしてそれを見事形にするオルタナティブ/マスロックサウンドの融合が最高。今後の活躍がものすごく気になる。

 

iVy

アンダーグラウンドで2024年から注目を集めはじめ、昨年8月に1stフルアルバム『混乱するアパタイト』をリリースしたfuki(ボーカル/ギター)とpupu(ボーカル/キーボード)のデュオ。「iVyちゃんという架空のキャラクターをコンセプトにしている宅録ユニット」と本人たちは言うが、バーチャルな感覚よりも2人の生々しい個性が作品に反映されているように感じる。繊細でドリーミーなシューゲイズ/ドリームポップ系の音楽性にJ-POP的なメロディやポエトリーリーディングが乗っているところは、実に2020年代的だと感じる。さらに、ファッションなどのビジュアル表現も〈今〉を感じさせ、エッジーでありながらもポップな佇まいは唯一無二。昨年はAVYSSのカバーコンピ『i.e』とゆっきゅんのリミックス盤『生まれ変わらない私を!?』に参加、上述の穂ノ佳と“ほしの刺青”を共作し、話題を振りまいた。

 

岡林風穂 with サポート

岩出拓十郎(本日休演、フー・ドゥ・ユー・ラブ、ラブワンダーランド)がプロデュースした1stアルバム『BLUE IS SO BRIGHT』(リリ-スはROSE内の新レーベル果実)で鮮烈なデビューを飾った、岐阜出身のシンガーソングライターのバンド編成。メンバーは映像作家としても知られるドラムスの小池茅(ラブワンダーランド)、ベースの有泉慧(本日休演、ラブワンダーランド)で、本日休演を昔から知っている者として注目せざるをえない。そんな個人的な興味はさておき、バンド版“海のにおい”は名曲だし、kiss the gamblerことかなふぁんとの友情が新しい音楽シーンを築いていることもおもしろい。いずれにせよ、カネコアヤノや柴田聡子のファンには確実に響くであろう新世代アーティスト(〈コレバズ〉のアンケートでも推薦しました)。

 

heimrecord

昨年、NATURAL FOUNDATION/Pヴァインから1stアルバム『Gururi』をリリースしたシンガーソングライター。愛知出身、〈ヘイムラコルト〉と読むアーティスト名は〈ふるさとの想い出〉を意味するドイツ語とスペイン語からなる造語。ノスタルジーをテーマに音楽、アート、演劇など多面的な活動をしているとのこと。最大の魅力は、やはり歌声。大貫妙子や寺尾紗穂、mei ehara、浮のような透明感がありながら、親密さを感じさせる温かみがあり、時折歌謡曲っぽい節回しも聴かせる。音楽的には、現代のUSインディフォークに連なる部分があり、ルーツミュージックの要素もあり、70年代のニューミュージックやフォーク、細野晴臣やキセルを思わせるところもある。フィッシュマンズ“ひこうき”のゆったりとしたカバーもハマっている。不思議なバランス感覚で、軽やかな新しいシンガーソングライター像を提示している才能だと思う。

 

日髙晴野

2002年生まれ、2022年から演奏活動を始めたというシンガーソングライター。1st EP『白柵舎』の情報をXで偶然見かけて聴いてみたところ、一気に引き込まれた。自宅と京都大学の吉田寮で録音されたという同作は、歌と7弦ガットギターの音が一発録りで捉えられた、シンプルな弾き語り作品。しかし、CLOWや井上園子を思わせる芯の強さを持っていながら、ゆうさりなどと共振する繊細さも宿した歌声はとても力強く、削ぎ落された演奏でも映えるソングライティングの力は確か。生でパフォーマンスをぜひ見てみたいところ。