ベルリン・バロック・ゾリステンと樫本大進の生命力と高揚感、抒情的な表現が宿る“四季”
なんと心にまっすぐに響いてくる印象的な“四季”だろうか。2025年に制作されたベルリン・バロック・ゾリステン&樫本大進のヴィヴァルディ“四季”は、1725年に作曲されてから300年、1995年にベルリン・バロック・ゾリステンが結成されてから30年のメモリアルイヤーを記念する録音となっている。
ベルリン・バロック・ゾリステンは、第1コンサートマスターだったライナー・クスマウルと首席奏者たちによって創設され、17世紀、18世紀の作品に独自のアプローチを試みている。全員がゾリステン、すなわちソリストたちで、30年前に“四季”を録音した時にはクスマウルがソロを担い、立ち上げたばかりのアンサンブルを成功に導いた。そして今回は、そのクスマウルに師事し、2010年からベルリン・フィルのコンサートマスターを務めている樫本大進がソロを担当している。
“四季”は世界中の人々に広く知られた人気の高い作品で、とりわけイタリアと同じく四季のある日本では、ヴィヴァルディが曲に託した四季折々の風景、気候、行事、人々の感情などに共鳴できる面が多く、なじみ深い。
今回の演奏では、“春”は小鳥のさえずり、春雷の轟き、羊飼いのまどろみ、妖精の踊りなどが音から聴こえ、全編にさわやかな響きがただよう。“夏”はイタリア特有の蒸し暑い夏にみな疲れ果て、雷鳴や嵐がこれに加わるというはげしい様子が弦とチェンバロの響きで描き出される。“秋”は収穫の秋。祝いの美酒に酔いしれる人々の様子が大進のソロとアンサンブルから伝わり、狩のシーズンも登場する。“冬”はとても寒くて辛い季節だが、やがて訪れる春への予感が演奏からリアルに伝わり、心にぬくもりが宿る感じだ。
この“四季”は21世紀の私たちの心身に300年前のイタリアの風を吹き込んでくれる。生命力と高揚感がみなぎり、その奥に静謐な美と抒情が宿る。樫本大進の芳醇な音色が季節を問わず耳を傾けたい気持ちにさせてくれる。
