素晴らしい愛の夏をもう一度、UKロックの名盤がアナログで蘇る!!!
TOWER VINYLとソニーが手を組み、洋楽名盤をアナログ盤で蘇らせるシリーズ〈TOWER VINYL presents レコードで聴きたい名盤〉。その第1弾として今年の4月にリリースされたキャロル・キング関連の2作品に続き、早くも第2弾が7月29日に店頭へと並びます。今回のラインナップは90年前後のUKロックを代表する3つの金字塔――ストーン・ローゼスのファースト・アルバム『The Stone Roses』(89年)、チャプターハウスのファースト・アルバム『Whirlpool』(91年)、そしてプライマル・スクリームのサード・アルバム『Screamadelica』(91年)。いずれも日本では初のアナログ盤化です。ギター・ロックとダンス・ミュージックが愛を交わした〈セカンド・サマー・オブ・ラヴ〉の時代における象徴という音楽史的な位置付けに加え、それぞれ印象的なアートワークでも知られる作品だけに、ジャケットを眺める時間までもが愛おしい、まさにレコードで持っておきたい盤ではないでしょうか。針を落とせば、昂揚と陶酔に満ちたあの時代の空気が、鮮やかな音像と共に立ち上がるのです。 *bounce編集部
マッドチェスターの代名詞、ストーン・ローゼズの本デビュー作が古びない理由は、はっきりとしている。音の隙間から溢れ出す多幸感と全能感。それはセカンド・サマー・オブ・ラヴと呼ばれた、あの数年間のダンスフロアの空気そのものであると同時に、いつの時代も人々を魅了してやまない感覚だからだ。
レニのドラムを聴けばいい。JB’sに加入したキース・ムーンと言いたくなる手数の多いファンキーなビートが、マニの印象的なベースと絡み、おおむねBPM 100〜120台後半で進む。当時のクラブでDJが回していたダンス音楽のテンポと重なる速さだ。つまり彼らは、エクスタシーとアシッド・ハウスがサッチャー政権時代の灰色の英国を塗り替えていく光景を、ロック・バンドの編成で鳴らしてみせた。プロデューサーのジョン・レッキーによる濁りのない音作りも、抜け出そうとする時代の気分を掬い上げているだろう。そこに60年代的な楽天性を纏ったジョン・スクワイアのギターが重なると、かつての愛の夏と第二の愛の夏は接続される。そしてイアン・ブラウンは至福のグルーヴに身を委ね、囁くように、時代精神を射抜いた言葉を歌う。〈過去はあなたのものだけど、未来は僕のもの〉と。
本作を聴き返すと、あの幸福な時代の空気が蘇る。ここにあるのは、何か前向きな変化が起こるのではないかと胸が躍る感覚――ただそれだけだ。そしてそれがどれほど貴重だったかを、いまの私たちは知っている。暗澹とした現代にこのレコードに針を落とせば、人々が変化の可能性を本気で信じていた季節の記憶が満ちてくる。そんな季節が本当にあったと思い出せること、それ自体がひとつの力となり希望となる。 *小林祥晴
リアム・ギャラガー&ジョン・スクワイアの2024年作『Liam Gallagher & John Squire』(Warner UK)
87年に英レディングで結成された5人組バンド、チャプターハウス。91年にリリースされた彼らのファースト・アルバム『Whirlpool』は、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの『Loveless』やライドの『Nowhere』と並ぶ、90年代初頭に隆盛を極めたシューゲイザー・オリジナル世代を代表する名盤だ。リリースはスペースメン3やスピリチュアライズドを擁したデディケイティッドから。チャプターハウスの結成と同じ年に生まれた私は、10代の終わりに夢中で今昔の洋楽ロックを聴き漁っていたのだが、その時期に出会ったのが本作だった。その第一印象は〈踊れるシューゲイザーってあるんだ!〉という驚き。例えば2曲目の“Pearl”の神々しさすら感じさせるイントロのギターに導かれ、聴こえてくるのはぶっとくダンサブルなビート。初めて聴いたときはストーン・ローゼスの初作が脳裏に浮かんだ。スロウダイヴのレイチェル・ゴスウェルもバッキング・ヴォーカルで参加したこの曲は、〈シューゲイザー × マッドチェスター〉というべき恍惚の天上世界を作り上げている。他の楽曲たちも粒揃いで、獰猛な疾走感と美しいハーモニーが融合した“Breather”、“Pearl”と並んでダンサブルな“Falling Down”、ヴェルヴェット・アンダーグランドのファースト・アルバムに入っていそうなくらい耽美かつ凶暴な“If You Want Me”などが続き、エレクトロ・テイストの“Something More”で、大団円というよりは未来への予感を匂わせてアルバムは締め括られる。〈Whirlpool〉は〈渦巻き〉という意味だが、まさに渦巻きのように、ロックの現在・過去・未来を飲み込んでいるアルバムだ。ちなみにジャケットは一見なんだかよくわからないが、猫である。 *天野史彬
サイモン・ロウの2023年作『Everybody’s Thinking』(Big Potato)
名盤と呼ばれる作品には2つの種類がある。ひとつはいつの世にも愛される普遍的なサウンド、もうひとつは時代の空気が生み出した革命的なサウンド。プライマル・スクリームの『Screamadelica』は間違いなく後者である。89年にリリースされたセカンド・アルバム『Primal Scream』の楽曲“I’m Losing More Than I’ll Ever Have” をDJのアンドリュー・ウェザーオールがリミックスした “Loaded” がシングルとして発表され、クラブ・ヒットとなったのが90年のこと。翌91年にリリースされた『Screamadelica』は排他的なUKインディー・シーンから抜け出し、アシッド・ハウスの熱狂に取り憑かれるようにダンスフロアに接近したバンドの転機となった重要な作品である。80年代を否定し、脱構築することから始まった90年代の、新鮮で解放的な空気の入れ替わりを象徴する存在として、アイコニックなジャケットと共に強烈な印象を残した。
“Loaded” の他にも収録曲の半分以上をウェザーオールがプロデュースし、さらに“Higher Than The Sun” ではジ・オーブやジャー・ウォブルが参加。UKレイヴの解釈としてのダブを取り入れ、リード・ヴォーカルをゲストに委ねたり、メッセージ性の強いサンプリングを多用したり、この時代のロック・バンドの音としては異例のサウンドで、アルバムごとに自由に変化を遂げ続けるプライマル・スクリームというバンドの方向性をも決定づけた。クラブ・ミュージックとロックの融合という、いまでは当たり前のことが当たり前でなかった時代のヴァイブレーションそのものを鮮やかに記録した作品であり、過去に囚われずいまを自由に生きる欲望と美しさに満ち溢れた奇跡のアルバムである。 *大久保祐子
プライマル・スクリームの2024年作『Come Ahead』(BMG)


