LP時代からクラシック音盤のジャケットを名画が彩る例は多く、そこには両ジャンルの親和性が示されてきた。本書では、60点の絵画に描かれた楽器や演奏場面を、著者が豊富な知識と平易な語り口で読み解いてゆく。単なる作品紹介にとどまらず、歴史的背景や文化的文脈を丁寧に掘り下げ、絵の奥に潜む意味を鮮やかに浮かび上がらせてゆく。たとえば「ピアノを弾くフランツ・リスト」の真の主人公はベートーヴェンだった、という指摘など、目から鱗の発見が次々と現れる。オールカラーの品位ある印刷は名画の色彩を美しく再現し、知的好奇心を刺激する解説と相まって、ページを繰る楽しさに満ちた一冊となった。