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ポールの新作に感じる決意や想い

――面白いもので、ポールの新作の詞世界にもそういう面を感じるんですよ。ごく個人的なことを歌っているようで、実は奥にもうひとつ何かがあって。

柴山「実はビートルズの音楽もそうですよね。ほぼ全部そう」

藤本「ジョンの曲にその傾向が強いですよね」

――ポールの新作『The Boys Of Dungeon Lane』を聴いた感想を聞かせてもらえますか?

アリ「毎回聴くたびに違うことを感じます。1回聴いて〈あ、音楽がすごくいい〉。2回目に聴いたら〈歌詞が聞こえてきた、これはすごい〉。で、3回目に聴くと、また違うものを発見する……という感じで」

藤本「聴くたびにどんどん良くなっていくっていうのは本当にそうで、僕にとっては『Chaos And Creation In The Backyard』と並ぶくらい好きなアルバムになってます。ポールは、プロデューサー1人だけと組んでアルバムを作った方がいいと思います。ポールのメロディメイカーとしての多彩な才能や音楽性の幅広さがコンパクトに詰まったアルバムは、『Tug Of War』以来じゃないかと。今世紀のベストの1枚です、個人的には」

柴山「音楽ってアレンジメントでもそうだし、歌詞でもそうだし、作曲でもそうなんですけど、何でもプラスとマイナスの塩梅で決まると思うんです。ポールがあそこまで削ぎ落として――たとえば、ウイングスの頃はドラムのスネアの音をもっと上げたいとか、細かいテクニカル的なことまで気にしていたのが、たぶん今はスネアの音がそんなに聞こえなくても気にしてない感じがして。もっと大事なことがあるっていう決意みたいなもの、年齢的に時間が限られているということも含めた想いが入っている気がします。ポールみたいにお金持ちで、すべてを手に入れた人に、あんなに潔いアルバムを作られちゃったら、ぐうの音も出ないというか、もう僕ら何にも作れないなっていう。それを本当に痛切に感じますね」

 

 

ビートルズの物真似ではないイズムの継承

柴山「僕らがやってる音楽って、本当にいいメロディとか、曲に合ったアレンジで、たくさんの人に聴いてもらいたいと思って作っていて。その基本はビートルズで、でもそれは1960年代のイギリスから始まったもので、当時の人はそれを普通に聴いていたわけじゃないですか。でもここは日本だし、時代も80年代、90年代、2000年代と、どんどん変わっていくわけで。僕はきっと60年代のイギリス人と同じような感覚を持っていて、そのせいで日本では仲間外れになっていった部分もあったと思うんだけど、そこがある意味純粋培養されて、ずっと音楽を作ってきたんです。かと言って伝統的なビートルズ・サウンドの物真似ではなくて、ビートルズが出したかったもの、彼らが感じていた何かというのを、僕は引き継いでると思っていて」

藤本「単になぞるんではなくて、昇華する形でね」

柴山「なぞったほうが簡単だし、わかりやすくジャンル分けできたほうがいいんでしょうけど。でもビートルズって時代ごとにサウンドが違ったし、ポップな曲も、アバンギャルドな曲も、いろいろあるじゃないですか」

藤本「いろいろありすぎますね。絞ってない」

柴山「〈ビートルズって絞ってないよね、なんでいろんな曲をやっちゃダメなの?〉っていう疑問がずっとあって。そういう意味では、ビートルズイズムを継承してると、僕は自負してます」

藤本「素晴らしいですね」

――アリさん的に、ビートルズ的な要素が出た曲ってあるんでしょうか?

アリ「僕にとってビートルズは言語のようなもので、それはイギリスの全ての人にとってそうだと思います。ビートルズのようなアルバムを作りたいという考えはないし、考えないけれど、自分の作る音楽には、当然ビートルズ的なものが備わっていて、それはもう言語だから。意識していないところで、自分の中に既に入り込んでいるものなんだと思います」

――柴山さんはどうでしょう?

柴山「あるとしたら“On The Stage”がそうですかね」

藤本「あれはいいメロディですね」

柴山「ありがとうございます。あのAメロのところは、たぶんビートルズからインスパイアされているし、サビは70年代初頭のローリング・ストーンズかなって感じがします。ミックスされてるかもしれない」