1983年の公開から43年。新たな時代でも共感できる「RYUJI 竜二」の魅力とは。

 〈人生で一番観た回数の多い映画〉に「竜二」を挙げ、43年の時を経たリメイク版「RYUJI 竜二」の敵対役オファーを即答で受けた千原ジュニア。いざ届いた台本を読むと「あまり関わらないほうが良かったかな。ファンとして真っさらで観たかった」という。金子正次が主演の「竜二」ファンならば大いに納得する談話だろう。試写会でいち早く鑑賞し、特急で作品評を寄せる恩恵を受けた自分も正直〈揺れた〉。オリジナル版(=リバイバル上映中)への愛着が深いゆえ、比較検証の偏りは避け難く、もし翻案がイマイチの場合は書けるか!? 花城竜二(金子正次)/まり子(永島暎子)の夫婦役を、柳楽優弥/川栄李奈が演じる点はむしろ期待大なのだが……多少訝る気持ちを〈踏襲しながらも別物〉と捉えるのも良し、「漢字の『竜二』と、アルファベットの『RYUJI』だと想って観てくれたら楽しめるかと思います」(ジュニア談)という推薦弁を杖に、渋谷の坂を試写会場まで歩んだ。

 4月に浦安でTDLがオープンし、7月にファミコンが発売され、朝ドラ「おしん」の人気で列島が沸いた1983年(昭和58年)の1月6日、映画「竜二」がクランクイン。新たに生まれ変わった「RYUJI 竜二」のチラシによれば、物語の舞台は同じ新宿・歌舞伎町だが、時代設定は翌59年から平成2年にかけてとある。が、翻案が〈その後の竜二〉を選んだわけではなく、全体は総じて金子の原作に忠実だ。水田伸生監督は綴っている。〈名作映画のリメイクは、オリジナルに対する「敬意」の表明であり、新たな解釈で新しい命を吹き込む「再創造」であって、決して「模倣」ではありません〉。「竜二」は一夜限りの女と過ごした暗闇の室内、主役の首筋に浮かぶ寝汗シーンから始まる。一方、「RYUJI 竜二」は陽光に照る西新宿の俯瞰(高層群)から幕を開ける。(実際の東京都庁舎は平成2年12月の竣工だから何かの暗示だろうか……)「竜二」撮影開始から1年後の新宿から新たな物語を走らせ、巻頭シーンの〈闇〉に〈光〉を対置させたのも、金子正次/柳楽優弥の相違を象徴させたいとの意図かもしれない。組事務所でのエンコ(指)詰めシーンも衝動的な激痛役の設定を変え、伊東ゆかりの〈小指の想い出〉がバックで流れるが失笑は買わず、導入部から新旧比較という〈鎧〉を巧く脱せてくれる。「舞妓Haaaan!!!」や「謝罪の王様」の監督だった事に改めて気づいた。

©2026「RYUJI」製作委員会

 試写後のトークで水田監督は、最終案に着地するまで4脚本を書き下ろしてはボツの繰り返し、「一時は韓国人の脚本家に頼んだこともありました」と苦笑した。その間、凡そ7年の歳月が流れた。その理由を「『竜二』の包装紙ばかり見ては勘違いしていた」「味噌ラーメンを作るつもりが塩ラーメンになっていた」とも告白したが、長年陽の目を見ない〈ヤクザ=俳優業〉という金子正次の自伝的要素を再発見してゴールを見たそうだ。帰宅後、10数年ぶりに金子の全遺作シナリオを編んだ単行本「竜二・ちょうちん」を掘り出して捲った。劇作家の故・内田栄一が巻末文章「ダチ、金子正次のこと――解説らしく」で、金子が脚本名を〈鈴木明夫〉とした裏事情を、一作品に自分の名前が幾つも出るのを「みっともないでしょう、内田さん」と嫌った為だと書いている。「オレ、役者ですからね」の矜持なのだ。が、自主制作「竜二」のチラシ文を依頼された際、内田は本人の同意を得てペンネーム秘話を綴った。なぜならば、〈「竜二」が実は、金子のワンマン映画であることを訴えたかったし、ワンマン映画としての迫力が奇妙な魅力で映画のテーマとないまざりながら見事に存在していたからだ〉と、伝説的映画の唯一無二性を説いている。「RYUJI 竜二」の換骨奪胎ぶりが〈名台詞〉や〈有名シーン〉の置き換え、〈時代設定の違い〉や〈遊び心の炸裂〉で冴え渡ったのも、伝説の呪縛(包装紙)から離れ、内田が解いた〈奇妙な魅力〉を随所に鏤めたからではなかろうか。

 水田監督自身はトークでこうも語った。「柳楽くんとは〈2026年の客席〉では嫌悪感を覚えさせたくないね、とか。カッコいい男とはどんなものだろうか、とか。随分とディスカッションしました」、対話を重ねた結果、「柳楽優弥が演じる竜二は、いわばコミュニケーションハブな存在。コロナ禍を体験した世代にも訴えるような、ね」。惹句で引かれる〈おまえら、ずっと一緒だ〉が活きる要因だろう。原作の愛娘役(=金子の実娘が演じた)は今回、男児に置き換えられた。ゆえにキャッチボール用の父子グローブが大事な意味をもつ。寺山修司の至言、〈友情というのは、いわば「魂のキャッチボール」である。それは現代人が失いかけている「対話」を回復するための精神のスポーツである〉を連想したりした。

 人情か。愛か。竜二は最後に誰を守るのか――。この宣伝コピーに監督は補足談話した。「(二者択一というよりも)あくまでも今、現在の優先順位をRYUJIは選んだわけですよ」。予告でも流れるので書くが、金子が〈この唄に出会えなければこの映画は作れませんでした〉と謝意を寄せたショーケンの名曲“ララバイ”。水田版は“メロディー”が最適な代役を担う。その余韻から一転、〈現代を生きる〉観衆の共感を奮い立たせるのがラストを飾る主題歌“It’s not a bad life”(BE:FIRST)。RYUJIの真打に似つかわしい響きだ。「IBMの社員でも泣ける映画だね」とは、「竜二」鑑賞後、秋吉久美子が金子を喜ばせた寸評だ。金子は「でなきゃ女子大生のような若い女の子は泣かないよ」と微笑んだ。本作も全キャスティングが文句なしの連続ヒット、女性受け必至のVer. 2026である!

 


MOVIE INFORMATION
映画「RYUJI 竜二」
監督:水田伸生
原作:金子正次「竜二」
出演:柳楽優弥/川栄李奈/萩原利久/JUNON(BE:FIRST)
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(2026年/日本/91分)
©2026「RYUJI」製作委員会
2026年10月30日(金)より全国公開!
HP:https://www.culture-pub.jp/ryuji_movie/