©2024アングリースクワッド製作委員会

マジメな税務署員 × 天才詐欺師が仕掛ける税金徴収ミッション――観客を操るプロたちの鮮やかな手口で、ラストまで痛快なクライムエンターテイメントが誕生!

 「カメラを止めるな!」で一躍脚光を浴びた上田慎一郎監督。最新作「アングリー・スクワッド 公務員と7人の詐欺師」は、税務署員と詐欺師集団が脱税王に挑むクライム・サスペンスだ。税務署に勤める熊沢二郎(内野聖陽)は、これまでことなかれ主義で波風を立てないように働いてきた。一方、部下の望月さくら(川栄李奈)は使命感に燃える熱血署員。10億円の脱税疑惑がある大企業の社長、橘大和(小澤征悦)の尻尾をつかもうと、熊沢を引っ張って橘が出席するパーティ会場に乗り込んだものの、橘の計略で「暴力を振るった」と言いがかりをつけられてしまう。そして、橘に対して屈辱的な謝罪するハメに。そんな時、熊沢は中古車販売の詐欺にあって大金を騙し取られてしまった。犯人は天才詐欺師の氷室マコト(岡田将生)。氷室を自分の手で捕まえようとする熊沢に対して、氷室は思いがけない提案をしてきた。

 「詐欺の被害届けを取り下げてくれたら、橘が脱税した10億円を徴収してあげますよ」

 犯罪に加担するわけにはいかない、と氷室の誘いを断る熊沢。しかし、橘が以前、彼の脱税疑惑を追求しようとした税務署員を罠にはめて税務署を辞めさせたことを知る。その税務署員は熊沢の友人で、失意のあまり自殺していた。熊沢はその時の悔しさを思い出して橘への復讐を決意。氷室とタッグを組むことに。そして、偽造屋、闇金業者、元女優、当たり屋など、氷室が集めた面々たちと詐欺チームを結成。熊沢は氷室がたてた計画に従って橘に接触する。ベテランの犯罪者集団に混じって、氷室は無事、目的を果たすことができるのか。

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 本作の原作は韓国のテレビドラマ「元カレは天才詐欺師38師機動隊」。「カメラを止めるな!」の試写を観て、上田の才能に目をとめたプロデューサーから持ち込まれた企画だった。企画がスタートしてのは2018年。全16話の話を2時間にまとめるためにプロット作りには2年の月日をかけたという。その結果、本作では詐欺集団と橘の一騎打ちにフォーカスした。

 この物語がユニークなのは、公務員と詐欺集団が手を握るところ。そのまさかの組み合わせの面白さを、熊沢と氷室というまったく違ったキャラクターを組みわせることで際立たせている。そこで光っているのが、内野聖陽と岡田将生の存在感だ。善人も悪人も巧みに演じ分ける内野は、昨年公開された「春画先生」でもクセのあるキャラクターを見事に演じていたが、本作では撮影前から何度も上田監督と打ち合わせを重ねた。その際、内野の脚本にはたくさんの付箋が貼られて上田監督と細かく役について意見を交わしたという。その結果、原作でマ・ドンソクが演じた税務署員とは違ったキャラクターを作り上げて、小心者だけど秘めた情熱を持つ熊沢の可笑しさや悲しさを細やかな演技で表現した。

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 一方、常に相手の一歩先、二歩先を読んで行動する氷室を、岡田はクールに演じている。決して自分の感情を表に出さず、微笑を浮かべている氷室の謎めいた存在感は、岡田本人のイメージと重なるところも。そんな氷室が熊沢の家族と一緒に食事をした時にふと見せた寂しげな表情が、彼の隠された過去を匂わせる。性格も立場も違う2人だが、氷室が熊沢に自分の過去について話すシーンをはじめ、本作にはバディムービー的な要素もある。もちろん、群像劇が得意な上田監督だけあってチームものとしても楽しい。秘密クラブでビリヤードの賭け試合を通じて橘を計画に引き込むエピソードから始まり、詐欺師集団が様々な役を演じて橘を引っ掛けていく様子は、役者集団がカルト教団と戦う上田監督の長編第2作「スペシャルアクターズ」と通じるところもある。

 クライマックスのトリックは原作にはないオリジナル。そして、最後の最後にも驚きが待ち受けているところは、尻尾の先まであんこが詰まっているたい焼き状態。もともと上田監督は「スティング」や「オーシャンズ11」といったケイパー(強奪)映画が好きだったようで、この2作からの影響は作品に反映されている。詐欺の動機に復讐が絡んでいるところは「スティング」だし、仲間たちとの共同作業は「オーシャンズ11」だ。そういった要素を取り入れながら、上田監督らしい爽快なエンターテイメントに仕上げている。

 本作の主題歌は、蔦谷好位置のソロプロジェクト、KERENMIが峯田和伸(銀杏BOYZ)をヴォーカルにフィーチャーした“名前を忘れたままのあの日の鼓動”。エモーショナルで疾走感溢れるロックンロールでスカッと終わる。劇中で熊沢は橘に「庶民が幸せに生きるコツは怒りを持たないこと」と言われて、頭からワインをかけられながら必死で笑顔を浮かべる。この世の中、理不尽なことに耐えてい怒りを抱えている人は多いはず。その一方で、悪いやつらは高笑い。そんなモヤモヤした日々に、この映画が風穴を開けてくれるだろう。

 


MOVIE INFORMATION
映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」

監督:上田慎一郎
脚本:上田慎一郎/岩下悠子
原作:「Squad38(38사기동대)」邦題「元カレは天才詐欺師 ~38師機動隊~」
音楽:鈴木伸宏 伊藤翔磨
主題歌:KERENMI 峯田和伸
出演:内野聖陽/岡田将生/栄李奈/森川葵/後藤剛範/上川周作/鈴木聖奈/真矢ミキ/皆川猿時/神野三鈴/吹越満/小澤征悦
配給:NAKACHIKA PICTURES JR西日本コミュニケーションズ
(日本|2024年|120分)
©2024アングリースクワッド製作委員会
https://angrysquad.jp
2024年11月22日(金)新宿ピカデリーほか全国公開