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神秘的で壮大、そして圧倒的な力を秘めた音の風景がバンドの新境地を豪快に轟かせる。圧倒的な3年ぶりのニュー・アルバムで構築された〈人々のための宮殿〉とは?

 「これは間違いなくグレタ・ヴァン・フリートのアルバムであり、本質はロックンロール・アルバムだ。そしてその核心はすごく現代的なアルバムだ」(ジェイク・キスカ、ギター)。

 前作『Starcatcher』(2023年)に至るまで3作連続での全米TOP 10入りも見事に達成。〈サマソニ〉にも出演するなど日本でも人気を集めているグレタ・ヴァン・フリートが、待望のニュー・アルバム『Palace For The People』を完成させた。もちろん、往年の巨人たちが引き合いに出される正統派なハード・ロック・サウンドを奏で、クラシック・ロックの輝きを現代に蘇生してきたバンドだけに、彼らの考える〈現代的なアルバム〉というのは音作りの新しさといった短絡的な話ではない。今回のアルバム制作は、ミシガン州フランケンムースから世界へ飛び出したキスカ3兄弟と友人が、ツアーで世界中を巡る日々から離れてリフレッシュするところから始まっている。

GRETA VAN FLEET 『Palace For The People』 Lava/Republic/ユニバーサル(2026)

 その期間にも各々は別のプロジェクトに取り組んでいた。まずジェイクはアイダ・メイのクリス・ターピンとミラドールを結成してアルバム『Mirador』(2025年)も発表。また、ジェイクとサム・キスカ(ベース/キーボード)は、ブルース・スプリングスティーンの伝記映画「スプリングスティーン 孤独のハイウェイ」(2025年)への出演とサントラ参加も経験している。さらにサムはハンナ・ウィックランドやラングホーン・スリムのアルバムを全面プロデュースし、そのいずれにもダニー・ワグナー(ドラムス)が参加していた。そうした諸々を経て再結集した4人は、今年の春にテネシーの大自然に囲まれた人里離れたキャビンでレコーディングを敢行。重鎮マイク・エリゾンドを共同プロデューサーに迎えつつ外部と意識的に距離を置き、創作だけに集中する時間を設けた成果が今回の新作となったわけだ。

 「ツアーを離れ、4人で一緒に過ごす時間を持てたおかげで、互いを大切に思う気持ちは前よりもっと強くなった。バンドの結び付きはさらに深まったし、いまの僕らには伝えたいことも、皆と分かち合いたいことも、これまで以上にたくさんある」(ジョシュ・キスカ、ヴォーカル)。

 「4人が同じ部屋に入って〈何かを創ろう〉という共通の目的を持った瞬間、僕たちを止められるものはほとんどない」(ダニー)。

 力強いヴォーカルと重厚なリフ、鮮烈なギター・ソロを備えた本作は、神秘的で圧倒的な力を放つ彼らの真骨頂だ。なお、『Palace For The People』という壮大なタイトルは、2022年のツアーで訪れたロンドンのアレクサンドラ・パレスに由来している。その壮麗な宮殿が王族や貴族のためではなく、一般の市民が現実を離れて驚きや感動を味わうための〈The Palace Of The People〉として建設されたということを知った彼らは、現代における〈人々のための宮殿〉が何なのかを自問し、その辿り着いた答えがアルバムとなった。

 「〈この人は親友です。あなたたちの音楽やライヴで出会ったんです〉って声をかけてもらうことが本当に何度もある。それで気づいたんだ、僕たちにとっての〈宮殿〉は音楽そのものなんだって」(サム)。

 雄大な“Tear It Down”などの先行ヒットからラストを飾る重厚な大曲“Born Into This”まで、スケールのデカさと親密さを併せ持った独自の音世界を構築。そこで人間性、繋がり、困難を乗り越える力、超越性といったテーマを探求し、現代のリスナーに響く普遍性を備えた『Palace For The People』はこのバンドにとっての今後を示す重要な大傑作となった。このアルバムは同時に、世界中のリスナーが集うための場所でもある。本作を引っ提げたワールド・ツアーの開催も発表されたが、その過程での来日にも期待しておきたい。

関連盤を紹介。
左から、ミラドールの2025年作『Mirador』(Republic)、2025年のサントラ『Springsteen: Deliver Me From Nowhere』(Columbia)、ラングホーン・スリムの2026年作『The Dreamin’ Kind』(Dualtone)

左から、グレタ・ヴァン・フリートの2018年作『Anthem Of The Peaceful Army』、2021年作『The Battle At Garden’s Gate』、2023年作『Starcatcher』(すべてLava/Republic)