GRETA VAN FLEET
古典ロックに心酔する平均ハタチの新星が、平和へのアンセムを高らかに歌う!

 ジョシュ(ヴォーカル)とジェイク(ギター)という双子のキスカ兄弟が、弟のサム(ベース)と友人のダニエル・ワグナー(ドラムス)を誘って始めたグレタ・ヴァン・フリートのファースト・アルバム『Anthem Of The Peaceful Army』は、この先ずっと名盤として語り継がれていくであろう。ミシガン州の片田舎で生まれた彼らは、両親が収集していた古いロックやソウルのレコードを聴いて育ち、およそ6年前にバンドを結成。まるで60年代後半にタイムスリップしたかのような2枚のEP『Black Smoke Rising』『From The Fires』を昨年にリリースするや、全米中のロック専門ラジオ局から猛プッシュを受けて人気に火が点き、たった1年でライヴの動員数は何倍にも膨れ上がった。

GRETA VAN FLEET Anthem Of The Peaceful Army Republic/ユニバーサル(2018)

 そうした状況のなか登場した『Anthem Of The Peaceful Army』は、EP以上に息ぴったりのダイナミックな演奏を聴かせてくれる。かねてより引き合いに出されてきたレッド・ツェッペリンやザ・フーに加え、ジャニス・ジョプリン、ボブ・ディラン、ウィルソン・ピケットの名前もインスピレーション源に挙げているだけあって、ブルージーで、エキサイティングで、生々しくて、ソウルフルなロックンロールの宝庫。大自然や宇宙をイメージさせるサウンドの広がりも他にはない魅力である。

 「このアルバムにはたくさんの自然が入っていて、人類の進化の旅や歴史上の教訓、そして平和、愛、調和が込められているんだ」(ジェイク)。

 すべての曲が地球上のありとあらゆる人々を指す〈平和の一団〉のアンセムとして作られたらしく、特にラストの“Anthem”はグレタ・ヴァン・フリートの〈平和、愛、調和〉という哲学をもっともわかりやすく伝える逸品に。そのメッセージを実感するためにも、頭から通してじっくり本作を聴いてほしいと思う。

 「僕たちは全員が繋がってて、そこには人間の物語がある。だから人類の歴史から多くを学び、この世界のなかに平和を見い出そうっていうことを伝えたい。そして僕たちがこの世を去る時、世界がより良い場所になっていたらいいなと思っているよ」(ジョシュ)。

グレタ・ヴァン・フリートの2017年のEP。