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ブランニュー・ヴィンテージ・ロックふたたび——温故知新どころじゃないインパクトを刻んだ鮮烈なアルバム・デビューから2年、新しきロックの光と道はやはりここにある!

 〈ブランニュー・ヴィンテージ・ロック〉の魅力に世界中のリスナーが飛び付いた。グレタ・ヴァン・フリートなる一風変わったバンド名は、2017年4月のデビューEP『Black Smoke Rising』と共にすぐさまシーンに伝播。特にリード・トラック“Highway Tune”のインパクトは凄まじく、レッド・ツェッペリンと比較されるほどの、ブルースを軸にした荒々しいロック・サウンドは多くの人に衝撃を与えた。しかもその音を鳴らすメンバーが20歳前後の若者であることが、衝撃の度合いをさらに深める形となる。

 2012年、アメリカはミシガン州にある人口5千人の小さな街・フランケンムースで結成されたグレタ・ヴァン・フリート。ジョシュ(ヴォーカル)とジェイク(ギター)の双子と、その弟にあたるサム(ベース/キーボード)のキスカ3兄弟を中心に、2013年に2代目ドラマーのダニー・ワグナー(ドラムス)が加入して現4人編成が整っている。先述のEPを発表した17年にストラッツの全米公演サポートでツアー・デビューを果たすと、同年11月に8曲入りのセカンドEP『From The Fires』をリリース。内容的には初EPの全4曲にプラスして、新曲2曲とサム・クック“A Change Is Gonna Come”、フェアポート・コンベンション“Meet On The  Ledge”というカヴァー2曲を収録。ちなみにライヴではハウリン・ウルフの“Evil”を披露したりと、いちいち選曲が渋いのだ。

 2018年には満を持してファースト・アルバム『Anthem Of The Peaceful Army』を世に放ち、全米チャートで3位を獲得。過去のEPではストレートな曲調が目立っていたものの、オープニング曲“Age Of Man”から6分超えの長尺曲で迫り、バンドの著しい成長を見せつけた。また、シタールを導入した“Watching Over”などエキゾティックな色合いを孕む曲調もあり、そうした視野を備えた音楽性も先人たちの影響を色濃く滲ませるものだった。

 2019年1月には初の単独来日公演を実現させ、度肝を抜くパフォーマンスで観衆を魅了。その演奏は音源をいい意味で裏切り、インプロヴィゼーションで楽曲を発展させながら、70年代のロック・バンドの如く原曲を大胆に塗り替えていくもの。日本のファンにも彼らが真のライヴ・バンドであることを見事に証明してくれた。

GRETA VAN FLEET 『The Battle At Garden's Gate』 Lava/Republic/ユニバーサル(2021)

 そんな彼らが注目のセカンド・アルバム『The Battle At Garden's Gate』をここに完成した。結論から言えば、前作を優に超えるクォリティーの高さに興奮は収まらない。メンバー4人はこのようにコメントしている。

 「間違いなく、俺たちはいろいろな意味で成長した」(ジョシュ)。

 「異なる文化や人や伝統を目にすればするほど、自分たちとさまざまな異文化との類似点も見えてきた」(ジェイク)。

 「自分たちの存在理由をより広義に理解できるようになった」(サム)。

 「ツアーが増えて、新しくいろんな人と出会い、いろんな文化を体験して、俺たちにとっての〈普通〉の定義が変わったんだ」(ダニー)。

 つまり今回の新作では、人間として一回りも二回りも成長したバンドの姿を確認できるのだ。先ほども言及した〈ライヴ・バンド〉としての凄みを、よりダイレクトかつナチュラルに楽曲に反映させることで、前作を凌ぐ圧倒的なスケール感を獲得。やはりライヴやツアーで世界各地を駆け巡り、そこで培ったスキルや経験値、人生体験が楽曲を豊かなものにしているのは明白だ。情景描写に長け、聴き手のイマジネーションをよりいっそう刺激する曲調がずらりと並んでいる。

 MVも公開された先行カットの“Age Of Machine”もアルバムの流れで聴くと、作品全体の支柱を担うような存在感をアピール。“Broken Bells”や“Tears Of Rain”あたりの静謐な曲調においてはジョシュの成熟した歌唱力にハッとさせられ、感動のため息が漏れてしまうほど惹きつけられる。また、新たなリズム・アプローチを試みた“Stardust Chords”もライヴで抜群に映えそう。そんな魅力的な楽曲が続くなか、極めつけは本編を締め括る8分超えのラスト曲“The Weight Of Dreams”(日本盤ではその後にボートラ2曲を追加)だろう。中盤過ぎの怒涛のインスト・パートなんて背筋がゾクゾクするかっこ良さで、グレタ・ヴァン・フリートの真骨頂を見る思いだ。この『The Battle At Garden's Gate』は、ロックが自由だった時代の、気高い精神を継承した傑作である。

グレタ・ヴァン・フリートの作品。
左から、2018年作『Anthem Of The Peaceful Army』、2017年のEP『From The Fires』『Black Smoke Rising』(すべてLava/Republic)