一聴して、このサウンドが果たしてイケてるのかちょっとわからない。だが2014年において最高の1枚だと感じさせる“何か”がこの作品にはある。熱狂的なカルト人気を誇るビデオ・アーティストLuke Whyattとしての別名義の顔も併せ持つ鬼才トーン・ホーク最新作。コズミックなシンセシス・ギターのサウンドは元エメラルズマーク・マグワイヤを更にフェティッシュにニューエイジへと加速させたかのような自由奔放さで、邦題に『泣きながら腕立てしようぜ』なんていう今作の掴めなさを象徴するナイスなタイトルが付けられたことからも、その“何か”を感じさせる期待感が膨張し続ける“これから”の音楽。

 


気鋭の映像作家として知られるルーク・ワイアットが別名義で放った素晴らしい初作。一言で言えばギター主体のミニマル・アンビエントなのだが、ノスタルジックなのに叙情に流されないバランス感覚が絶妙だし、光の粒子を放射するような眩いギターの音色はまるでマニュエル・ゴッチングの嫡子のよう。映像のプロならではの色彩感溢れるサウンドが、極上のインナー・トリップを約束してくれる。