〈ラジオで仏語の曲を全体の約3割流すべし〉という法律がある母国語偏重国において、USでのフェニックスのブレイクを経て英語で歌うことに対する意味合いと目標値が見えて久しいフランスのロック・シーン。同じ土俵で戦うにあたり、同地のバンドが押し出すべき英米にはない独特の魅力をいくつかのバンドと共に紹介したい。
例えば、寝癖がついたままでもしっかりと貴族感を漂わせながら、ソフィア・コッポラの横になよっと佇むトーマス・マーズ(フェニックス)の、ナードなのにシックというあり方。ジャマイカとも親交の深いシャトー・マルモンが奏でる、ジョルジオ・モロダーやジャン・ミッシェル・ジャールをも彷彿とさせるヒプノティックなサウンドからは、そんな空気感が滲み出ている。
そして〈アンニュイさ〉――日本語の〈粋〉という観念を他言語に訳しきれないのと同じ類いのフランス的な概念。ジュヴナイルズの『Juveniles』には、フレンチ・エレクトロきっての男前、ユクセクの手によるニューウェイヴ風味なサウンドとスミス時代のモリッシーっぽい節回しに、フランス人にしか出せない退廃的なアンニュイさが散りばめられていた。
そして、何をおいても恋愛至上主義なフランス人らしいロマンティックさを信条とするのが、ロックに乗せづらい仏語であえて勝負をかけたパンダンティフ。80年代フレンチ・ポップのキッチュ・クイーン、リオがちょっとだけ賢くなってチルウェイヴの浮遊感を纏ったかのような音作りは、日本でもきっとウケるはずだ。
▼関連作品
左から、シャトー・マルモンの2013年作『The Maze』(Chambre 404)、ジュヴナイルズの2013年作『Juveniles』(Paradis/AZ)、パンダンティフの2013年作『Mafia Douce』(Discograph)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ
▼日本でのブレイクが期待されるフレンチ・ロック・バンドの作品
左から、フォーヴの2014年作『Vieux Freres Partie 1』(Warner France)、ラ・ファムの2013年作『Psycho Tropical Berlin』(Disque Pointu)、トリステス・コンテンポレインの2013年作『Stay Golden』(Record Makers)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINE/iTunesにジャンプ