Photo by Takehiro Yamano

時を越えて繋がるもの――知的好奇心溢れる姉妹デュオ

 「最近フィレンツェではLPレコードのお店が流行ってるんですよ」と、イタリアから来た姉妹デュオのピアニストは語った。「音楽が配信で聴かれる時代ですけど〈感触〉も大事ですよね。CDを開けた時の匂いやライナーノートに至るまで全てが〈作品〉ですから」

 〈デュオ・ガッザーナ〉は、ナターシャ(ヴァイオリン)とラファエラ(ピアノ)のガッザーナ姉妹によるデュオ。ECM New Seriesで2011年にデビュー盤を発表、今年2枚目のアルバムをリリースした。名プロデューサー、マンフレート・アイヒャーと共に作り込んだアルバムでは、デビュー盤のヒンデミットや武満徹、ヤナーチェクにシルヴェストロフ……と20世紀〈響きと歌〉への探究を問い直すような選曲。

DUO GAZZANA 『Schnittke, Poulenc, Silvestrov, Walton, Dallapiccola』 ECM New Series(2014)

 「アイヒャーさんは私たちからインスピレーションを引き出そうと舞台上で踊ってみせたりしますが(笑)そのこだわりと集中力って凄いんです」(ナターシャ)

 徹底したこだわりに応える〈デュオ・ガッザーナ〉の演奏は、個性の色を深く聴き合う呼吸と、音空間への繊細な意識、それを響きへ拡げる力が美しい。

 今秋は2度目の来日。東京では新譜から演奏を披露する機会もあったが、この2枚目のアルバムは、シュニトケ“古い様式による組曲”やシルヴェストロフ“J.S.B.へのオマージュ”――J.S.B.とはもちろんバッハだ――など〈現代と古典との往還〉を意識した選曲。

 「シルヴェストロフさんの曲は、ピアノのペダリングもどのくらい踏むかまで非常に緻密な指示がされていて……弱音の本当に繊細な作曲家」(ラファエラ)

 「彼は私たちのために新作を書いてくださって。もちろん次のアルバムで録音しますよ」(ナターシャ)

 「シューベルトのソナティナと併せて」(ラファエラ)

 「シューベルトは複雑な音が溢れ続けるタイプの作曲家ではないですが、その音楽言語は現代のシルヴェストロフとも根底で通じるんですよね」(ナターシャ)

 「彼のヴァイオリン作品は演奏が難しくて、素裸にされる感じすらするんですけど(笑)だからこそ挑戦する価値があると思います」(ナターシャ)

 古典と現代の響き合うところに豊かな発見を……姉妹の瑞々しい探究を支えるのは、世界の文化への貪欲な好奇心。ふたりとも大変な読書家でもある。

 「私は日本文学が大好きで『源氏物語』を読み通したり、現代文学も伊訳されていないものは英訳で読んでます。妹はロシア文学が大好き」(ラファエラ)

 「ロシア語は本当に難しくて(笑)辞書を離さずドストエフスキーを読んでます」(ナターシャ)

 花咲く文学談義……古今東西への深い視線も二人の活動を拡げる。次なるアルバムも聴き応え深かろう。