全国のタワーレコードのスタッフが、己の〈耳〉と〈直感〉だけを基準に世間で話題になる前のアーティストの作品をピックアップし、全店的なプッシュへと繋げる企画〈タワレコメン〉。これまで、相対性理論神聖かまってちゃんクリープハイプceroKANA-BOON、洋楽ではストライプスチャーチズといった現行シーンの最前線で活躍するアクトをいち早く発掘しており、現在は月1回のペースでオススメ・アイテムを紹介しています。Mikikiでは、そんなタワレコメンの選定会議に潜入し、作品の魅力を視聴コンテンツと共にお伝えする特集を連載中! 今回は5月度の洋楽編です!!

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今回はタワーレコード新宿店にて行われることになったタワレコメン会議。場所は変われど、普段通り音楽通のスタッフたちが〈これぞ!〉というオススメ作品を持ち寄り、タワレコメンの狭き門を通過するための熱いプレゼンを繰り広げました。何百タイトルという新譜のなかから候補作に挙がったのは……!?

朝イチの会議室にそぐわない(?)アダルトなムードを醸し出したのは、デイヴィス・バインを中心とするミネアポリスのトリオ、バインの2014年作『Love In Blue』。輸入盤が入荷後すぐに店頭から姿を消し、この3月にようやく日本盤が登場した本作。時流に流されない芯の太さを持ったR&B~AOR流儀のソング・ライティングやアレンジ、ハスキーかつシルキーな黒人女性ヴォーカリストの歌声が、どうしたってシャーデー好きにオススメしたくなるようなホンモノ志向の逸品です。

 

続いてスウェーデンの人気パンク・バンド、MAKTHAVERSKANのメンバーが在籍するシューゲイザー系グループのウェストカストの初アルバム『Last Forever』が登場。2012年のファーストEPがシューゲイザー好き以外にも支持された彼らの魅力は、待望のフル作でも全開。ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートリンゴ・デススターのラインで攻めつつ、スウィートなメロディー&ハーモニーとパンキッシュな疾走感の組み合わせで、キラキラな青春度は数割増し! Pitchforkの〈Best New Track〉に選ばれた“Swirl”は必聴ですよ~。

 

猛者揃いのタワレコメン選考メンバーたちが一斉に反応したのは、メルボルン発のフューチャー・ソウル・カルテット、ハイエイタス・カイヨーテのニュー・アルバム『Choose Your Weapon』。ファレルプリンスからジャイルズ・ピーターソンまで虜にしてしまう正真正銘のミュージシャンズ・ミュージシャン集団である彼らのアルバムは、グラスパーの諸作やディアンジェロの最新作と並べても遜色のない音楽偏差値の高さをキープしながら、紅一点ヴォーカルであるナイ・パーム嬢のしなやかな歌声で幅広い層まで届きそうな快盤!

 

ここで、アーティストに関する情報があまりにも少なく、他の候補にも増して音のみで勝負することになったオランダの大所帯バンド、スヴェン・ハモンドの新作『IV』が紹介されることに。名前どおり(?)ハモンド・オルガン奏者のスヴェン・フィジー率いる彼らのサウンドは、楽器からイメージされるソウル・ジャズ系のソレではなく、ロバート・ランドルフからヴィンテージ・トラブルあたりにまで通じる埃っぽいブルース・ロックのフィーリングでいっぱい。色んな意味でトレンドとはまったく無縁の強烈な一枚!

 

続いて登場したのは、UKはチェルトナムの6人組インディー・ロック・バンド、ヤング・カトーの初フル・アルバム『Don't Wait Til Tomorrow』。新人らしからぬスタジアム・ロック的なスケールを持った2013年配信のパーティー・アンセムで、本作にも収録される“Drink, Dance, Play”が何と言ってもマスト。なぜか音よりも断然80sなメンバーの髪型も含め、いまチェックすべき存在です。エレクトロEDMも最初からあった世代が鳴らすダンス・ロックはこのうえなく躍らせ上手で……夏フェスの現場でもぜひ聴いてみたい!

 

会議も終盤に突入したところで、この日一番の変化球がけたたましいノイズと共に登場! ファック・ボタンズベンジャミン・パワーによるソロ・プロジェクト、ブランク・マスが絶好調のセイクレッド・ボーンズからリリースするセカンド・アルバム『Dumb Flesh』。〈進化の過程にある人間の体〉をテーマに3度も作り直した(!)という本作は、エクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックが持つ不穏なエナジーと、それでも踊れてしまうダンスの強度が共存した奇跡の一枚。「ポップな音だけがタワレコメンじゃない!」という推薦者のコメントにも気合いを感じました。

 

最後に飛び込みでのエントリーを成功させたのは、エンポリオ・アルマーニのイヴェントに招かれて来日を果たすなど、ファッション業界からの視線も熱い双子の姉妹デュオ、セイ・ルー・ルーのデビュー・アルバム『Lucid Dreaming』。とはいえ「ほんと美人!」(男性スタッフ談)なだけの色モノではもちろんなくて、キツネからのリリースやチェット・フェイカーとの共演を経て届いた本作は、ノルウェイジャン・ディスコの帝王であるリンドストローム仕事の“Games For Girls”をはじめ、エレクトロなダンス・マナーで奏でるドリーム・ポップが相当な上モノ。これはブレイクしそう!

 

ということで、飛び道具(?)もありつつ、全体的にはじっくり聴き込みたい本格派なサウンドの作品が多かった今回のタワレコメン会議。悩んだスタッフたちが多数決で選んだのは……!?