少年〈山田のぼる〉22年ぶりに復活!

 この声!と思った。記憶をたどるともう20年以上前の実家の居間でテレビを見ている。あまりに長い時間を飛び越える聴覚の記憶。わらわらと景色が浮かぶ。見ているのはフジテレビ「ポンキッキーズ」。くるくる巻いた髪に黒ぶちメガネをかけた山田のぼるという少年がコーナーを進行するのだが、その少年こそが高泉淳子だった。そもそも山田のぼるというキャラクターももともと舞台で彼女が演じた少年で、その少年がそのままポンキッキーズに出演。せっかちで歯切れのいい、子ども番組のわりに現実的なトークは、耳触りのいいハスキーヴォイスに乗って聞こえる。その後、NHKの「週刊子どもニュース」で家族のお母さん役として出演するのだが、そこではとってもお母さんだったのだ。「ポンキッキーズ」ではとっても少年だったのに。この変幻自在ぶりが20年以上経った今でもパッと情景の浮かんでくる鮮明な記憶の元でもある。今回再発となったこの作品に出合う人のきっかけの多くは、こんな感じではないかと思う。記憶にある、ということ。

高泉淳子 『おいしい時間の作りかた』 Disc Classica(2015)

 役者、演出家など舞台をはじめ、映画やテレビ、歌手、と幅広く活動する高泉淳子が1992年にCDを出した。舞台「ア・ラ・カルト~役者と音楽家のいるレストラン」で生演奏にのせてジャズやシャンソンを歌い演じる彼女を観たことのある人なら驚くこともないかと思うが、何も知らずにふっと耳にしたとき、こんなにもしっくりくるものかと、歌の似合う声であるなと腑に落ちる。印象深く心に残る声。ジャズはもともと好きだったようだが、今作は自らがジャズのやや渋めのスタンダード曲を日本語で訳した歌詞で、山田のぼるとして歌う(一部老人にもなる)。少しビターな内容の歌を、頭の良さそうな少年のあの声で歌い上げる。少年のお父さんとして登場するのは、その後も活動を共にする俳優の白井晃。プロデュースは「ア・ラ・カルト」で音楽監督と演奏を務めた中西俊博。

 舞台を観ているような、話しかけられているような。曲がったことが嫌いな空気の読める少年が22年ぶりにまた目の前に現れるのだ。