イラク戦争で天才的な狙撃手として“英雄”に祭り上げられた実在の人物クリス・カイルの手記の映画化。その内容から、戦争賛美か否かと論争まで巻き起こした本作は、その始まりがあたかも西部劇の変奏であることからも、“イーストウッドの映画”であることは間違いない。才能がもたらす“英雄”という側面と、才能が招き寄せた戦場が主人公の精神を壊していくという側面の二重性を、イーストウッドは二重性としてそのまま差し出してみせる。その二重性に何を見るか。イーストウッドはそんな私たちに無音のエンドロールを用意するだろう。