明日がくるのをお知らせします、今日も。

 6年目を迎えたEテレの『0655』と『2355』。放送が始まると「ああ、もう2355の時間」、同じく「わ、もう0655の時間!」と、1日の中のひとつの区切りとなる、まさに「日本人のリズムをつくる」番組として、ピタゴラスイッチの佐藤雅彦やクリエイティヴ・グループのユーフラテスなどが手掛ける上質な5分間番組。

 ユニークなアニメーションや実験コーナーもさることながら、なんとも程よい距離感で“おつかれさま”とか“いってらっしゃい”を感じる、特別というよりは当たり前のわかりやすい言葉たちを一定の温度を保った曲にのせた「うた」がはずせない。裏表のない単純な言葉と曲と声にリンクした映像が、脳みそを落ち着かせるし、少しだけ反応させる。耳障りの良さと意外な参加アーティストがおもしろい。

VARIOUS ARTISTS 0655/2355 ソングBest!明日がくるのをお知らせします Columbia(2016)

 今回のベスト盤はその「うた」たちを集めた第2弾。おはようソング人気ランキング1位の、デーモン閣下が歌う《toi toi toi!! ~幸せを願う特別編~》や、おやすみソング1位の〈factory of dream 夢を作る工場〉で流れる、ペギー・リーの《I don't want to play in your yard》のほか、人気の27曲を収録。細野晴臣レキシ竹中直人HARCO中川翔子大橋トリオなどなど面々は番組ならでは。タカアンドトシが歌う《それぞれの立場ソング》も抜群のゆるさ。そして特典DVDには『2355』でなにやらぽつぽつとつぶやく人間みたいなトビハゼのトビーがセレクトした《toi toi toi!!》を含む4曲が収録。

 “トイ・トイ・トイ”とは幸せや成功を祈るドイツのおまじないで、災いを避ける魔除けの呪文のような意味合いもあるそう。「今日がいい日でありますように」と唱え、歌うのは悪魔であるデーモン閣下。「だいじょうぶ、きっとうまくいく、がんばれ」と。悪魔も朝の光を浴びると前向きになってしまうのだろうか。なんて微笑ましい朝!

 どのうたも聴く側を置いていかない。むしろうしろから付いて来てくれるイメージ。ていねいに組み合わされた言葉が、素直に体に染みてくる。6時55分と23時55分、人間が素直になれる時間帯なのかもしれない。

 きょうも当たり前に1日が終わるし、始まる。そこにちょこんとあるいつものうたが、いつものように、明日がくるのをお知らせしてくれる。