名門〈4AD〉や〈XL〉、〈Werk Discs〉などからリリースした事もあり、一気に知名度をあげた覆面プロデューサーことゾンビーが次のホームに選んだのは、本人たってのラブコールもあり、UKベースシーンの重鎮コード9率いる〈Hyperdub〉からのリリース! 同門となったブリアルやダークスター、リゼット、バンシーと客演の豪華さはもちろんのこと、レーベルマナーに従うかのように〈Hyperdub〉流のUKストリートサウンドを基盤にしつつも、近年のベース・ミュージックを叱咤するかのごときレイヴ~グライムも消化した狂気を纏ったサウンドは、言わずもがなベース・ミュージックの最新形と言えよう。
ここ2作品が名門4ADからのリリースだったこともあり、世界的に認知を広げた覆面プロデューサーのゾンビー。これはコード9率いるハイパーダブに拠を移しての通算4作目で、本人たってのラヴコールが叶い、晴れて同門となったブリアルを召喚して狂気の宴を繰り広げた先行曲“Sweetz”もすでに話題となっている。同曲のスリルに満ちた展開が象徴するように、バンシーと共にキンキンに冷えたエスキ・ビートを乗りこなした“Fly 2”、はたまたダークスターとエキゾな音色を酌み交わす“Quandary”、ざらついたジャングル・ビートで大仰にノスタルジアを描く“S.D.Y.F.”などなど、アルバム全編に漂うのは退廃的でありつつも静謐で研ぎ澄まされたムード。大作となった前作でアイデアを出し尽くし(?)、自身の進化の連続性をいったんリセットしたのか、レイヴもジャングルもグライムも通過し、近年のベース・ミュージックのヒストリーをイチから新たに解釈し直したかのようなサウンドは情報過多な時代にあって、やけに新鮮に響くのだ。