COLUMN

ゾンビーら出演の〈XL Recordings Presents Chapter VI〉に注目! 原点回帰見せる名門レーベルのダンス・サイドを紐解く

ゾンビー

 

UKの名門レーベルXLの所属アーティストが一堂に会するクラブ・イヴェント〈XL Recordings Presents Chapter VI〉が、11月27日(金)に東京・代官山UNIT/SALOONで開催される。同イヴェントはロンドン、マンチェスター、東京の3都市で行われ、XLからはゾンビースペシャル・リクエストヒューゴ・マシエンの3組がメイン・フロアに出演。さらに、ゾンビーとも交流のあるストリート・ウェア・ブランド〈C.E〉が、地下フロアであるSALOONのオーガナイズを担当する。

XLといえば、近年はアデルベックレディオヘッドヴァンパイア・ウィークエンドなどの大物から、シャミールイベイーなど次代を担うホープまで揃え、メインストリーム/インディー・シーンを問わず最先端で存在感を示すオールスター軍団の様相を呈しているが、そもそもの出発点はダンス・ミュージックであり、そのショウケース的な趣もある今回のイヴェントは、創立25年を過ぎたレーベル史の新たな節目としても注目したい。そこで今回は、テクノ/エレクトロニック・ミュージックに造詣の深い音楽ライター/編集者の河村祐介氏に、DJカルチャー視点からXLの歩みを振り返ってもらいつつ、気鋭のサウンドメイカーが集うイヴェントの見どころも紹介してもらった。
 



〈え、マジか!〉と思ったのは、スペシャル・リクエストがXLと契約したという話。初期XLの作品群を、そのまま現代にアップデートしてしまった感のあるブレイクビーツ・テクノ、それを豪速球で投げ飛ばすポール・ウルフォードのプロジェクトとの契約ですよ。さらには、『Where Were U In '92?』(2008年)で知られるゾンビーまで移籍という(といっても彼の場合は、XLと同じくベガーズ・バンケット系である4ADからのグループ内移籍といった感じだが)。ここ最近のXLといえば、そっちのダンス路線は傘下レーベルのヤング・タークス(Young Turks)にお任せ状態だった印象。〈XLはDJカルチャーと距離をとって、このままポップ・ミュージックの王道を突き進むんでしょうね~〉と思っていたので、〈このタイミングでなぜに?〉という疑問が浮かんだり、ああ、でもやっぱり、そのへんの心意気を忘れてないんだと安心したり。 

スペシャル・リクエストの2015年作EP『Modern Warfare 1』収録曲“Amnesia”

 

そして、ゾンビーにスペシャル・リクエスト、さらには新人のヒューゴ・マシエンが連れ立って、XLの〈ダンス・サイド〉を披露するショウケース・イヴェントが今回開催されるわけです。これすなわち、XLが〈この筋のアーティストを推すんだぞ!〉という本気度の表れではないかと。とはいえ、レーベルの歴史を踏まえると、このダンス路線こそがXLの保守本道だったと言いますか……。

88年を頂点に燃え上がったセカンド・サマー・オブ・ラヴから、次第にレイヴ~ハードコアの時代へと移っていった時期、89年にロンドンにてXLは誕生しました。現在でもレーベル・オーナー/プロデューサーとして活躍するリチャード・ラッセルによって設立。ラッセルと共にハードコア・テクノ・ユニット、キックス・ライク・ア・ミュートを組んでいた二ック・ホークスと、エンジニアのティム・パーマーの2人も共同設立者でした。そのキックス・ライク・ア・ミュートのヒット曲“The Bouncer”、ぜひ聴いてみて! もう、そのままスペシャル・リクエストって感じ。

キックス・ライク・ア・ミュートの92年のシングル“The Bouncer”。2008年にゾンビーが『Where Were U In '92?』収録曲“Hench”で同曲からサンプリングしている

 

もともとはベガーズ傘下にシティ・ビートというレーベル――オールドスクール・エレクトロ、ヒップホップ、ハウスといった当時のUKダンス・カルチャー、言ってみれば〈デフジャム・ショック〉からセカンド・サマー・オブ・ラヴといった言葉に象徴されるような、アメリカからUKへと流入したダンス・ミュージック、またはそれをスポンジのように吸収した当時のUKにおけるDJカルチャーをそのままの姿で踏襲したようなラインナップのレーベルがあったみたいなんです。XLはその傘下として、レイヴ・ミュージックにフォーカスしたレーベルとして設立されたようですな。

90年代に入ると、レイヴ・シーンからXLがフックアップしたプロディジーがブレイク。“Charly”(91年)などのヒットで一気にスターダムを駆け上がり、レイヴ~ハードコア・テクノ~ジャングルのある種メジャーなレーベルとして君臨することになるわけです。

プロディジーの91年のシングル“Charly”

 

XLからのレイヴ・ヒッツを聴いていた当時の人々が、今日のレーベルにおける洗練された隆盛っぷりを想像できようか……いや、むしろ〈チージーなレイヴ・ミュージック〉の汚名と共に、90年代初頭はダンス・ミュージック・ファンからも〈ガキ向け〉として蔑まされてきたXLの立ち位置を、若いリスナーにどうして想像できようか……いや、別にしなくてもいいんだけど。このあたりの空気感、XL創立25周年に公開されたラッセルとキース・フリント(プロディジー)との対談動画でも語られておりますので、ぜひとも。 

 

97年にはXLとの〈メジャーへの道〉を二人三脚で走っていたプロディジーが、ついに『The Fat Of The Land』にて世界的なヒットを飛ばします。ダンスのカテゴリーではなく、ポップ・ミュージックのトップ・アクトとなるわけです。そして90年代中頃からアンダーグラウンド・ヒットを放っていたハウス・ユニット、ベースメント・ジャックスと契約、これまた90年代末からしっかりとメジャー・フィールドでもヒットを飛ばし、オーディオ・ブリーズベテランエクスプレス2らと共に〈フーリガン・ハウス〉と呼ばれるようなズンドコ・ハウスでフェス対応可能なアクトへと育っていくんですね。ダンス・カルチャー出身のレーベルが、ポップ・ミュージックの中心を侵食したというわけ。

ベースメント・ジャックスの99年作『Remedy』収録曲“Red Alert”

 

しかし、彼らはこの時期に次なる展開を着実に用意していたんですね、流石です。イケイケのダンス・アクトをリリースする傍ら、2000年を迎える頃にはバッドリー・ドローン・ボーイアヴァランチーズなどロック/ポップの逸材をリリースし、着実にこちらの方向性でも評価を高めていきます。そしてダメ押し的に、ホワイト・ストライプスもデビュー。このあたりでいわゆるロックの文脈においても高い評価を集めるようになり、現代のポップ・ミュージック全般を象徴する至高のレーベルたるXLへの道を歩みはじめるわけです。

あとはご存知の通り、デヴェンドラ・バンハートフレンドリー・ファイアーズホラーズ、ヴァンパイア・ウィークエンドにアデルといった才能が集結し、さらにはレディオヘッド/トム・ヨークまで合流と、まさにトップ中のトップ・レーベルになって現在に至ります。二束三文のサンプラーから作られたようなレイヴ産シングルのレーベルからここまで来たんです、すごいじゃないですか!

とはいえ、ロック/ポップ方面で成功を収めてからも、初期のスタンスであるダンス・カルチャーから次なるポップスターを生み出そうという動きを緩めないのが彼らの立派なところ。2003年作のディジー・ラスカル『Boy In Da Corner』で、いち早くグライムの潮流をストリートからポップ・カルチャーへと紹介したあたりなんて象徴的でしょう。また、ディジーの兄貴分たる〈グライムのオリジネイター〉ことワイリーや、M.I.A.などのダンス系アクトも次々とリリースしていきます。

ディジー・ラスカルの2003年作『Boy In Da Corner』収録曲“I Luv U”

 

前述の通り、その姿勢は2009年に設立された傘下レーベルのヤング・タークスへと継承され、サブトラクトXXジェイミーXXFKAツイッグスらを世に送り出すわけです。このあたりは、XLのその出自と共に〈アンダーグラウンドなダンス・ミュージックは、カッティングエッジなポップ・ミュージックを生み出す一つの源泉である〉という、レーベルの哲学を垣間見せる部分でしょう。ちなみに、その逆サイドというかインディー・ロックにおける最先端発掘レーベルとしてアビーノ・ミュージック(Abeano Music)という傘下レーベルもあります。あとは、ギル・スコット・ヘロン『I'm New Here』(2010年)やボビー・ウーマック『The Bravest Man In The Universe』(2012年)といった新録作品もまた、レア・グルーヴ的な価値観での発見&リプレゼントという意味ではDJカルチャー的な感覚もなくはない……というのは、ちょっとこじつけがましいか。

ギル・スコット・ヘロン&ジェイミーXXの2011年作『We're New Here』収録曲“I'll Take Care Of You”。XLとヤング・タークスの共同リリースで、リチャード・ラッセルも参加

 

そんなこんなで、ポップ・ミュージックの中心に君臨するレーベルとなったわけですが、近年は前述の通りXL本体としては若干ダンス色は薄めでした。しかし今年に入ってから、どうやら方針が変わった模様なんです。スティーヴ・アルビニに〈ダンス・ミュージックなんて嫌いだけど、別にサンプリングするのは構わないぜ〉という男前な返事をいただき、それをそのまま広告にしてしまったインダストリアル・テクノ小僧、パウェルをリリースしたり、冒頭で書いたようにゾンビーが移籍、さらにはスペシャル・リクエストと契約。従来ならどう考えてもヤング・タークス枠だったヒューゴ・マシエンもXL軍団に仲間入りと、なんともいままでと違った雰囲気。XLと名を冠して、今回のようなショウケースをやるというのも含めて、これまでロック方面に若干シフトしていたXLの原点回帰的な方向性、その本気度が垣間見えます。

パウェルの2015年のシングル“Insomniac”。スティーヴ・アルビニが率いたビッグ・ブラッグのライヴ音源をサンプリングしたほか、使用許諾の返事としてアルビニから届いたダンス・ミュージックへの批判メールをMVに採り入れている

 

さて、最後に今回のイヴェント出演者の簡単なご紹介を。まずはゾンビー。まさにポスト・ダブステップのトリックスターというか、ミステリアスな存在感も魅力でありまして。前述の『Where Were U In '92?』などでレイヴ・リヴァイヴァルとポスト・ダブステップを結び付けるなど、いわゆるDJミュージック的な観点に、単なるひねくれ者なのかもしれませんが、批評的なアングルを絶妙に持ち込むアーティストです。そうしたアングルからか、常にシーンへと疑問を投げかけるような作品を作り出し、話題を振り撒き続けています。XLから2枚同時で今年リリースされたEP『Let's Jam』もポスト・ダブステップとテクノ、トラップなどのリズム・デリヴァーと、彼のオリジナリティーでもあるメランコリックなサウンドが溶け込んでいます。今回が初来日であり、ミステリアスな彼の存在自体が見どころでしょう。なにをするのかわかりませんぞ。

ゾンビーの2015年作EP『Let's Jam 1』収録曲“Acid Surf”

 

ゾンビーの2008年作『Where Were U In '92?』収録曲“Fuck Mixing, Let's Dance”

 

スペシャル・リクエストは、本名のポール・ウールフォードやボビー・ペルーといった名義でディープ・ハウステック・ハウス文脈でもともと活躍してきたアーティストだけに、そのキャリアは他の出演2組とは段違いであります。そんな彼が、XLのお家芸とも言えるジャングル~ハードコア・サウンドを今様にどう奏でるのかが今回の肝でしょう。というか、最近のXLからリリースされる12インチは、90年代初頭のスリーヴのレプリカでありまして。サウンドだけ聴いたら〈当時リリースされてたやつで、これ、いまでもいけますわ〉と錯覚させるぐらいの感覚すらあるというか。そのぐらい初期XLを思わせる音楽性なのであります。

スペシャル・リクエストの2015年作EP『Modern Warfare 1』収録曲“Reset It”
スペシャル・リクエストの2014年作『Soul Music』収録曲“Broken Dreams”

 

そして最後は、ダークホースのヒューゴ・マシエン。最近はEDM方面も含めて、ハウスがまたキーワードになりはじめている――なんて言われてますが、その手のシーンは前からずっとあるんですよ。ジェイミーXXとかがインディー・ロック方面でチヤホヤされて、みんなそう言いたいだけでしょ、まったく。このヒューゴ・マシエンみたいな人がさらっと出てくるのが、そういうシーンが長く続いている証拠。これまでは折り目正しいディープ・テック・ハウスをアンダーグラウンドで発表してきた、思いっきりDJオリエンテッドなアーティストとXLがなぜ契約したのか。そのあたりを当日、彼のプレイで確かめてみたいですな。

ヒューゴ・メシアンの2015年作EP『Kontrol』収録曲“Kontrol”

 


 

 

XL Recordings Presents Chapter VI
日時/会場:2015年11月27日(金) 東京・代官山Unit/Saloon
開場/開演:24:00
出演:〈UNIT〉 Zomby / Special Request / Hugo Massien / 1-DRINK
〈SALOON - Organized by C.E〉 DJ I'm Sorry / Powder / Toby Feltwell / Koko Miyagi / Bacon
チケット(税込/1D別):前売り/3,500円、当日/4,000円
イープラス
ローソンチケット(Lコード:77847)
http://ynos.tv/hostessclub/schedule/20151127.html

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