衝撃的なデビューから数か月……早くも届けられる新作は、『INTEGRAL』と表裏を成す美しき創造世界。ライヴ感を増して迫るアグレッシヴなロック・サウンドに圧倒されろ!!
デビュー作にして驚異の完成度を誇った昨年9月のファースト・アルバム『INTEGRAL』で、新世代エレクトロ・ロック・シーンに高々と名乗りを挙げた若き4人組。ラウド、ポップ、ダンスの積集合を求める知的でアグレッシヴな姿勢、ジャケットや映像表現におけるアート性の高いアプローチが注目を浴び、11月にはスリップノットが主催する〈KNOTFEST JAPAN 2016〉のオープニング・アクトにも抜擢された。THE SIXTH LIE(ザ シクスライ)の名は、ジャンルを超えて音楽ファンの中に着実に浸透しつつあるようだ。
「他のバンドと同じところで勝負しないようにしましたね、〈KNOTFEST〉では(笑)。全然ラウドじゃない曲もやってみて、けっこうハマッたかなと思います」(Ray、ドラムス)。
「堂々と自分たちらしさを貫いたほうがロックだと思って。『INTEGRAL』にはラウド寄りな曲もあったから、そう分類されることも多いと思うんですけど、ゆくゆくは自分たちでシーンを作っていきたいので。そのための第一歩が、今回のセカンド・アルバムになるんだと思います」(Reiji、ギター/プログラミング)。
そのセカンド・アルバム『DIFFERENTIAL』は、前作から4か月という短いスパンでリリースされるにもかかわらず、バンドの成長は明白だ。狙いは〈ライヴ感〉と〈ロック感〉の強化。シンセのリフやリズムをより明快なものにシフトし、音の快感がぐっと高まっているのもはっきり聴いて取れる。
「お客さんが手を挙げたりジャンプしたり、一緒にライヴを作っていく意識をうまく曲の中に入れられたと思います。ヴォーカリストとしては、メロディーの高低差が激しいものが多いので、低い部分のメロディーでいかに表現力を出せるか。ささやきヴォイスとか、自分なりに声の出し方をアレンジして、工夫しました」(Arata、ヴォーカル)。
「1曲目の“Another Dimension”とか、ベースがよく動く曲が今回は多いんですよ。レコーディングしてる時から楽しく弾けたし、ライヴでやってても楽しいです」(Hiroto、ベース)。
MVが先行公開された“Endless Night”は、EDMとシンフォニックなギター・サウンドのスリリングな融合で、SF映画のサントラを思わせる壮大なスロウ・チューン“Next Trier”、Arataの透明なハイトーンと絶対的なメロディーの良さを前面に打ち出した“A Planet In Your Eyes”など、カラフルな楽曲のヴァリエーションは文句なし。そのうえでサウンドメイクを手掛けるReijiは、〈空間〉というテーマを今回強く意識したという。
「洋楽と日本の音楽を聴き比べた時、個人的にいちばん違いを感じるのは〈空間〉なんですよね。マスタリングのリファレンス・ディスク(音質の基準になる参考音源)に使った、ワンリパブリックの音の良さに衝撃を受けちゃって。いままでのTHE SIXTH LIEは音色を重ねて空間を広げていく感じだったんですけど、洋楽は少ない音にエフェクトを足して音を増幅させる感じなので、音数がシンプルで。“Next Trier”はそこにトライした曲で、自分の趣味をいちばん出した感じです。次はもっと音の良さを追求して、空間日本一をめざします(笑)」(Reiji)。
Reijiがサウンド面でのリーダーなら、作詞とヴィジュアルを含めてバンドのコンセプトを操るのはRayの役割。現役の東京大学大学院生として航空宇宙工学を学び、美術にも造詣が深いRayの頭脳から湧き出る言葉は、コズミックな広がりとシュールなイメージの中に、力強いメッセージ性を潜ませた、魅力に溢れるものだ。
「表面的な〈いい感じ〉の歌詞にはしたくなくて、根本にちゃんと考えてるものがあるということを大事にしたいなと思ってます。最初の“Another Dimension”で言っているのは、〈もっと違う視点から世界を捉えてみようよ〉ということで、“Endless Night”では〈絶対的なものはない〉ということをテーマにしてます。たとえば悩みを持っていても、宇宙に思いを馳せるとそれがすごくちっぽけに感じるとか、すべてのものは相対的なものじゃないか?と。“A Planet In Your Eyes”は、〈Planet〉は惑星で〈惑う星〉と書くので、人の迷いみたいなものと比較して、背中を押せるような曲になってると思います」(Ray)。
『INTEGRAL』と『DIFFERENTIAL』のジャケットが相似形になっていたり、タイトルの意味が〈積分〉〈微分〉であったり、CDのスリーヴ・ケースを取るとメッセージが浮かび上がったり。聴くだけでなく、読み、感じ、語る喜びを覚えさせてくれる、そんなアートを作れる稀有なバンド。このままどこまで成長していくのか、THE SIXTH LIEの飛躍の一年が、いま始まった。