コラム

レイ・デイヴィス『Americana』 もっとも英国的なロッカーが見た米国―アメリカーナに接近した10年ぶりソロ新作の旨味

レイ・デイヴィス『Americana』 もっとも英国的なロッカーが見た米国―アメリカーナに接近した10年ぶりソロ新作の旨味

THE GREAT HIGHWAY
キンクス再結成の噂に背中を向け、レイ・デイヴィスが向かった先はアメリカの大地。パートナーはオルタナ・カントリー・シーンを牽引するジェイホークスだ。大西洋の向こう側に広がる景色は、英国紳士の目にどう映ったのだろう……

RAY DAVIES Americana Legacy/ソニー(2017)

 

英国人ロッカーの目に映った米国の姿

 〈もっとも英国的なバンド〉と言われることも多いキンクスのレイ・デイヴィスによるソロ・アルバムが『Americana』?……と、まずタイトルに注目してしまうが、本作は2013年に出版した同名の自叙伝とそのプロモーションで米国を回った時の経験から着想を得たものだとか。つまり、〈もっとも英国的なロッカーの目に映った米国〉ということになるだろう。それを完成させるため、バックを務めたジェイホークスのオルタナ・カントリーな下地が一役買っていて、英国的な感覚と米国的な感覚が相互に影響し、良いバランスが生まれている。かつてビリー・ブラッグとウィルコが組んだ例もありつつ、こういった世代や国を超えたコラボレーションによってルーツ・ミュージックに気配りしながら新しいものを創造していくという流れがもっと進んでいけばいいな、と。そのような気持ちで聴き進めていくと、確かにキンクスの68年作『The Kinks Are The Village Green Preservation Society』で描いた古き良き英国の風景や、71年作『Muswell Hillbillies』での普通の生活へ思いを馳せた時のような視点で、現代の米国をシニカルに捉えたような部分もあるのではないかと思えるし、〈Americana〉という言葉が主役の存在にフィットしてくるから不思議だ。 *吾郎メモ

 

本場アメリカの音を思いっきり採り入れて……

 60年代、いわゆる〈ブリティッシュ・インヴェイジョン〉と呼ばれたほとんどのバンドはアメリカを発祥とする音楽の影響下にあったわけですが、なかでもキンクスというグループ、ひいてはソングライターのレイ・デイヴィスは、その憧れ以上に英国人としての品格みたいなものが前に出るタイプと申しましょうか、そこはポール・マッカートニーと双璧で……。ってところでの『Americana』は、4年前に上梓した同名の回想録、そのキャンペーンで訪米した際に各地を巡ってイメージを膨らませたという10年ぶりのソロ・アルバム。カレン・グロットバーグ(ジェイホークス)とのヘヴンリーなデュエット“Message From The Road”、ヴォードヴィル趣味を漂わせたキンクスのヒット曲群を思い出させる“A Place In Your Heart”、ジョン・セバスチャンの顔が浮かんできそうな“A Long Drive Home To Tarzana”、男泣きを誘う“Poetry”など良曲が満載です。録音はキンクスのホーム・スタジオであるロンドンのコンクにて、バッキングは全編ジェイホークスが担当。レイが本場のアメリカーナの音をここまで採り入れたことってそうなかったと思いますし、その思いっきりの良さが彼の歌の滋味深さを改めて浮き出させていて、土臭さのないアメリカンとでも言いたくなるような、グビグビいける一杯になったんじゃないカーナ。 *久保田泰平

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