デビュー40周年を目前にして登場した5年ぶりのオリジナル・アルバム。その間には富士山麓でのオールナイト・ライヴ挑戦があり、TV番組でのパフォーマンスが話題になったのも記憶に新しいが、荒野に風が吹きすさぶような、西部劇を思わせるヒロイックな意匠のオープニング曲“Black Train”は、発するメッセージに背骨を通す映像的で力強いナンバーだ。沸騰した言葉をぶちまけるロックンロール“嘆きのコーヒーサイフォン”、アヴィーチーに触発されたと思しきスケールとシンガロング感が清々しい“Loser”などエンジン全開の姿もいいが、胸を打つのは素朴な“かあちゃんの歌”やシンプルなフォーク“ガーベラ2017”、静謐なピアノを伴ったスロウ“愛こそすべて”、そしてフォルクローレ風の終曲“Can you hear me?”……と、聴き進めるにつれて剥き出しになっていく表現の静かな強さ。枯れもせず若作りもせず、年齢よりは年輪を感じさせながら独自の進化を遂げる長渕剛は、いまもなお長渕剛であることをここで改めて証明している。