1981年秋に放送が開始した名作ドラマシリーズ「北の国から」。北海道の富良野を舞台にした家族の物語は40年以上が経っても色あせることはなく、今夏からは関東ローカルながらもフジテレビで再放送がスタートして新たなファンを開拓している。

そんな「北の国から」は、主題歌をはじめ挿入歌の数々が物語にさまざまな表情を与えており、劇中で流れる音楽も大きな魅力だ。そこで今回は、連続ドラマシリーズのなかで登場した印象的なナンバーを振り返っていきたい。

まずはなんといっても、さだまさしによる主題歌“北の国から ~遥かなる大地より~”だろう。自然豊かな富良野の土地が映し出されるドラマのオープニングで流れる同曲は、基本的に歌詞はなくスキャットがメインの(ほぼ)インストゥルメンタル曲。「北の国から」を象徴する一曲であると同時に、ドラマを観たことがないという人にも北海道の大地を想起させてしまう力を持った、さだのキャリアを代表するナンバーだ。“北の国から ~遥かなる大地より~”は、サウンドトラックの決定版『「北の国から」 完全盤』や、さだのベストアルバム『天晴~オールタイム・ベスト~』などで聴ける。

渡辺俊幸, さだまさし 『「北の国から」完全盤』 フリーフライト/フォアレコード(2004)

さだまさし 『天晴~オールタイム・ベスト~』 ユーキャン(2013)

さらに、さだは劇中で流れるインスト曲の多くを担当。なかでも、“純のテーマ”“螢のテーマ”はメロディーを耳にした途端に幾多のシーンがフラッシュバックすること間違いなしの名曲だ。個人的には、第8話にて悪戦苦闘していた小屋への水引き工事が大成功し、抱き合って喜ぶ五郎、純、螢のバックで流れる“純のテーマ”の優しい旋律が強く印象に残っている。これらも、『「北の国から」完全盤』で改めて堪能したい。

一方、「北の国から」は劇中で同時代の流行歌が数多く登場。第1話の序盤、五郎が従兄に離婚した原因を話している傍らでは、純や螢たちが眺めるテレビの歌番組から松田聖子“青い珊瑚礁”田原俊彦“ハッとして!Good”榊原郁恵“ROBOT”が流れてくる。田中邦衛と大滝秀治のシリアスな演技合戦に、軽快なヒット曲を添えてくる絶妙な〈塩梅〉がたまらない。当時を象徴する名曲を、それぞれのベスト盤で振り返ってみるのもいいだろう。

松田聖子 『永遠のアイドル、永遠の青春、松田聖子。 ~45th Anniversary 究極オールタイムベスト~』 ユニバーサル(2025)

田原俊彦 『プラチナムベスト 田原俊彦 ベスト』 ポニーキャニオン(2017)

榊原郁恵 『ゴールデン☆ベスト 榊原郁恵』 コロムビア(2010)

また、前述した第8話は年末ということで、ドラマのなかでは(フジテレビ制作にもかかわらず)「NHK紅白歌合戦」の話題が登場、なかでも八代亜紀“雨の慕情”が大きなポイントとなっている。黒板家はテレビがないため、“雨の慕情”の有名な振付を知らない純と螢。笠松の(へなまずるい)とっつあんの好意によって、子どもたちは笠松家で「紅白」を観る流れになるものの、いざ2人が家へ入ろうとすると……。テレビから流れる“雨の慕情”と純と螢の切ない表情が、なんとも言えないコントラストを生み出している。同曲は、『ゴールデン★ベスト 極 八代亜紀』などで聴くことができる。

八代亜紀 『ゴールデン★ベスト 極 八代亜紀』 テイチク(2021)

その後も、当時のヒット曲がBGMだけでなく、キャラクターの心情を表す演出の手段として巧みに登場。第13話、久々に東京に戻った純が当時の友人宅へ遊びに行くものの、半年間の富良野での生活によって会話のなかに入ることができなくなり、部屋の端っこでYMO“RYDEEN”を聴きながら疎外感を感じる姿が、妙におかしく切ない。“RYDEEN”は、当時の大ヒット作『SOLID STATE SURVIVOR』の収録曲だ。なお、この回では母の不倫相手である吉野さん(演じるのは、伊丹十三!)とともに訪れる遊園地や母からプレゼントされるガンダムのプラモデルで東京と富良野の違いを見せつけてくる。

YMO 『SOLID STATE SURVIVOR』 アルファ(1979)