写真提供:ブルーノート東京 Photo by Takuo Sato

20年の時を超えて、現代のジャズ・マエストロが再集結した熱いライヴ・ドキュメント!

 ピーター・バーンスタイン(g)が、超弩級のニュー・アルバムを引っさげて来日した。1994年にクリス・クロスからリリースした『Signs of Life』は、ブラッド・メルドー(p)、クリスチャン・マクブライド(b)、グレッグ・ハッチンソン(ds)ら、当時のヤング・ライオンといわれた俊英たちが集結したアルバムだった。しかし、一度もギグが出来ないまま、長い時間が過ぎ去る。2015年の1月2日から4日のニュー・イヤーのウィークエンドに、4人はジャズ・アット・リンカーン・センター内のディジーズ・クラブ・コカコーラに再集結。「20年と18日かかった、アルバム・リリース・パーティだ」と、バーンスタインはジョークを飛ばす。アルバムは最終日の1月4日の2セットを、一曲を除いて全て収録した。バーンスタインは「コーラス数とかを決めずに、それぞれのクリエイティヴィティが趣くままにプレイした」と語る。ほぼ全曲が10分を超え150分にも及ぶ、一大ドキュメント・アルバムだ。

PETER BERNSTEIN Signs Live! Smoke Sessions(2017)

1989年秋にバーンスタインは、メルドーとニュースクール大で出会った。当時のニュースクール大には、クリス・ポッター(ts)、ジェシー・デイヴィス(as)、ラリー・ゴールディングス(org)ら錚々たる面々が、しのぎを削っていた。90年代初頭、メルドーとバーンスタインは、大ヴェテランのジミー・コブ(ds)のユニットCobb's Mobに登用され、その薫陶を受ける。マクブライドとは、ジェシー・デイヴィス(as)がジャズ・クラブ、" スモーク"の前身であるオーギーズで主宰していたセッションで、知り合う。そしてハッチンソンとは、伝説のビバッパー、クラレンス・シャープ(as)のジャズ・クラブ、 “ザンジバー”での、マンデイ・ナイトのギグで知遇を得た。それぞれが充実した90年代を駆け抜け、21世紀のジャズ・シーンを代表するアーティストへと進化する。旧作からは《Blues for Bulgaria》と《Jive Coffe》の2曲がセレクトされ、聴き比べるとそれぞれの円熟と、変わらぬフレッシュな感性が滲み出る。前作『Let Loose』からも、バーンスタインの最新オリジナル曲4曲がプレイされた。実際には『Let Loose』は、本作のライヴ録音より後に、スタジオで別のメンバーで録音されている。そして今年生誕100年を迎え、バーンスタインが愛してやまないセロニアス・モンク(p)の曲も2曲取り上げる。ダグ・ワイス(b)、ビリー・ドラモンド(ds)を擁した今回の来日公演では、全てモンク・チューンでセット・リストが固められた。メルドー、マクブライドらが、バーンスタインを好サポートしながら、さりげなく存在感を主張する。「次のリユニオンは、また20年後かな」と、バーンスタインは笑っていた。