2020年11月、ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音によるハンク・モブレーの傑作『Soul Station』(60年)のリリース60周年を祝して、ジョー・ロヴァーノやロン・カーターらによるトリビュート・ライブが、ヴァン・ゲルダー・スタジオから全世界に配信された。その第2回の〈Live From Van Gelder Studio〉が2021年5月15日(土)と16日(日)に配信にて開催される(日本時間では16日のみ)。

2016年に、惜しまれながら世を去ったルディ・ヴァン・ゲルダー。1950年代から、ブルーノート、サヴォイ、プレステッジ、インパルス!、CTIのレコーディング・エンジニアを務めてきた彼は、マイルス・デイヴィス、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズらのジャズ史に燦然と輝く名盤の録音を手がけ、ジャズ・レコーディング・サウンドのレファレンスを構築した伝説のレコーディング・エンジニアだ。

ルディ・ヴァン・ゲルダー

初期には、両親がレコーディング・スタジオに転用できるように設計してくれた、ニュージャージー州ハッケンサックの自宅のリヴィング・ルームで録音していたが、1959年にニュージャージー州イングルウッド・クリフスに、自らも設計に関与し、奈良の東大寺正倉院をモチーフにした、ビッグ・バンドやオーケストラのレコーディングも可能な大規模な個人スタジオ〈RVGスタジオ〉を完成させた。

RVGスタジオ

同スタジオを舞台に、コルトレーンは、ジャズを変革する荊の道を歩み、CTIではクロスオーヴァー・ミュージックが花開く。四角錐の木製の高い天井と、石造りの壁に囲まれたこのスタジオは、まさにジャズの精霊たちが漂う、モダン・ジャズの神殿の名にふさわしい。基本的に全ての録音作業を一人で取り仕切り、同業者を一切受け入れず、機材の写真は撮影禁止のRVGスタジオは、長年謎のヴェールに包まれていた。

ルディ・ヴァン・ゲルダーの逝去後、スタジオは、ヴァン・ゲルダーの長年の側近だったドン・シックラーと、86年から唯一のアシスタントだったモーリン・シックラー夫妻に託された。現在も主にドン・シックラーがプロデューサーを務めるプロジェクトが、モーリン・シックラーによって録音されている。