(C)Frankie Celenza

巨匠の初体験づくしが生んだ最高のライヴ盤

 「あのコンサート自体が特別だった」とミシェル・カミロ自身が振り返る最新作の『ライヴ・イン・ロンドン』。『ワッツ・アップ?』に続いて制作されたピアノ・ソロだが、ソロのライヴ盤をリリースするのはこれが初めて、という。

MICHEL CAMILO ライヴ・イン・ロンドン Sony Music Japan International(2017)

 「録音しておけばよかった! と思う夜がたまにあるんだが、あれは正にそういう演奏だったね。実は、あのレコーディングは僕が計画したものではなくて、プロモーターから是非と言われてやったことだったんだが、終わってみて彼と彼の奥さんに感謝したよ(笑)。彼が強く勧めてくれたおかげなんだから。あの夜はとにかく特別なことが重なった。会場の音響が素晴らしかったので、完全にアコースティックで演奏することが可能だったというのも録音の助けになったと思う……録音のクオリティという意味で」

 英国では初めてのソロピアノ・コンサート、さらに初のホールと初体験づくしとなったコンサートが、彼のモチヴェーションをあげた。

 「いわゆる運命の夜だったんじゃないかな。すべての条件が揃っていた。そして僕もそれを感じながら演奏していた。ピアノ自体も本当に素晴らしくて、僕が出したい色合いをすべて実現できたし、そうなると弾きながらどんどん音楽の世界に深く入り込んでいくことができるんだ。掘り下げたい僕の気持に応えてくれるピアノだった。そういう意味でも非常に遣り甲斐を感じた。自分の感情を自由に表現できる気がした」

 会場には知り合いも多く来場していたようだ。中にはビル・ローレンス(スナーキー・パピー)もいて、彼らの存在が過度のアドレナリンの分泌を抑え、適度に緊張を解し、結果絶妙の選曲、カミロならではのセットリストが出来上がった。

 「最近は、曲をたくさんリストアップしてステージに上がり、その場の雰囲気で選曲して演奏しているんだ。その瞬間のフィーリングに沿って、その場と、オーディエンスとの繋がりを大切にするために、極めて自由な状態にしておきたいと思っている。あの夜も、正にそういうやり方だったんだ。最初は会場が静かだったから手探りで始めたけれど、よし、ここでラテンの曲をひとつやろう、でも次はうんと伝統的なジャズピアノでいこう……と。会場に関わらず、やはり次々と対照的な曲を並べていくことで美しい一夜を形成する、というのは常に心掛けているところだね」

 今回のアルバムの聴きどろこの一つである《アイ・ガット・リズム》~《キャラヴァン》~《シング・シング・シング》のメドレーも実は演奏中に思いついたという。いかにもジャズ! 参りました。

 


LIVE INFORMATION

MICHEL CAMILO featuring ELIEL LAZO
○11/3(金)4(土)5(日)
[1st]16:00開場/17:00開演 [2nd]19:00開場 /20:00開演
○11/6(月)
[1st]17:30開場/18:30開演 [2nd] 20:20開場 /21:00開演
出演:ミシェル・カミロ(p)エリエル・ラソ(per)

www.bluenote.co.jp/jp/artists/michel-camilo/